冬の駿河湾岸。静岡から沼津、三島へ(1)

床面から天井に向かって延びているような鍾乳石は「石筍」、天井から釣り下がっているものは「つらら石」と呼ぶ 駿河湾の沿岸地域は、かつては江戸と京都を結ぶ東海道の要衝として、現在は国道1号線や東名・新東名高速道路など日本の交通の大動脈が走るエリアとして、今も昔も多くの人とモノが行きかっている。各所で富士山の絶景を望めることでも知られており、日本最古の和歌集『万葉集』や、葛飾北斎の『富嶽三十六景』、歌川広重の『東海道五十三次』にはその美しい山容が詠まれ、描かれてきた。駿河湾で獲れる魚介類も魅力で、1月から5月ごろにかけては久能石垣いちごが収穫シーズンを迎える。富士の絶景と旬の味を求め、静岡から沼津、三島へとドライブすることにした。
前半は、東名高速道路・静岡ICを起点に、まずは国道150号線、通称「いちご海岸通り」へと向かった。甘いいちごを堪能したあとは、旧東海道を走り、かつて宿場がおかれた丸子地区へ。泊まりは静岡駅近くにホテルをとり、夜は名物の「静岡おでん」を味わうべく、「青葉おでん街」へと繰り出した。

ドライブルート

東名高速道路・静岡IC−登呂−(県道384号線、国道150号線)−久能街道−(国道150号線、県道84・208号線など)−丸子−(国道1号線など)−静岡市中心部−(日本平パークウェイなど)−日本平−(日本平パークウェイ、県道199号線など)−三保−(県道199号線、国道150・149・1号線など)−さった峠−(国道1号線など)−田子の浦−(県道380号線など)−沼津港−(県道380号線、国道1号線など)−三島市中心部−(伊豆縦貫自動車道など)−東名高速道路・沼津IC

全行程 約135km、今回 約32km

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登呂遺跡

弥生時代後期の登呂ムラの様子を地形も含めて復元している

弥生時代後期の登呂ムラの様子を地形も含めて復元している

東名高速道路を静岡ICで下りて、駿河湾沿いの国道150号線方面へと向かう途中、「登呂遺跡」に立ち寄ることにした。
登呂遺跡は、今から約1,900年前の弥生時代後期の集落遺跡で、昭和18年(1943)に発見。戦後の昭和22年から25年(1947〜1950)にかけて行われた本格的な調査によって、弥生時代の人々の暮らしと米づくりの様子が日本で初めて明らかとなり、昭和27年(1952)に特別史跡に指定された。
敷地北側の一画には4棟の住居、2棟の高床倉庫、1棟の祭殿が復元され、往時のムラの様子を再現。水路をはさんだ南側には、弥生時代の水田が復元されて広がっていた。初夏には赤米の苗の田植え、秋には稲刈りと脱穀体験などのイベントを行っているという。
隣接する「登呂博物館」では、遺跡からの出土品や登呂ムラを再現したミニチュアなどを展示している。
/遺跡は見学自由。博物館は入館料 300円

  • 高床倉庫。支柱にはネズミ返しが付く

    高床倉庫。支柱にはネズミ返しが付く

  • 祭殿。両側に斜めに立つ棟持柱が特徴

    祭殿。両側に斜めに立つ棟持柱が特徴

  • 弥生時代の水田も復元。初夏には、古代米のひとつである赤米の苗の田植えが行われる

    弥生時代の水田も復元。
    初夏には、古代米のひとつである赤米の苗の田植えが行われる

  • 遺跡内に建つ「登呂博物館」

    遺跡内に建つ「登呂博物館」

いちご海岸通り(久能石垣いちご)

右手に駿河湾を眺めながら国道150号線を清水方面へと走っていくと、やがて通りの左側に「いちご狩り」「いちご園」と書かれた看板やのぼりが目立つようになってくる。その一帯が、通称「いちご海岸通り」で、全国的にも有名な久能石垣いちごの産地である。

  • 国道150号線沿いにいちご農園の売店が並んでいた。右手は駿河湾

    国道150号線沿いにいちご農園の売店が並んでいた。右手は駿河湾

  • ピンクのジャケットと帽子、おもちゃのいちごを手にした「いちご娘」が観光客を出迎える。この季節のいちご海岸通りの風物詩

    ピンクのジャケットと帽子、おもちゃのいちごを手にした
    「いちご娘」が観光客を出迎える。この季節のいちご海岸通りの風物詩

この地域でいちごの生産がはじまったのは、およそ120年前の明治時代のこと。久能山東照宮の宮司からアメリカ産のいちご苗を譲り受けた地元の方が栽培をはじめ、試行錯誤の末に石垣に苗を植えて育てるという画期的な方法を編み出し、「石垣いちご」が誕生。以後、近隣の農家でも生産されるようになり、この地域の特産品となった。昭和41年(1966)には久能山東照宮の参拝者にもいちごを食べてもらおうと農園を解放したのが、観光いちご狩りの発祥だといわれている。
国道150号線沿いおよび久能山東照宮へと至る道には35軒以上のいちご農園が並んでおり、いちご狩りのほか、店頭でのいちごやいちごを使った飲み物、スイーツの販売を行っていた。いちごの品種は「章姫」がメインで、粒が大きく、糖度が高いことが特徴だという。

  • いちごの主な品種は「章姫」。大粒で、甘いのが特徴

    いちごの主な品種は「章姫」。大粒で、甘いのが特徴

  • 搾りたての、いちご生ジュース。ほかにソフトクリームやパフェなどもあった

    搾りたての、いちご生ジュース。
    ほかにソフトクリームやパフェなどもあった

  • 通り沿いには、いちごやそのほかの野菜を栽培するビニールハウスが建ち並んでいた

    通り沿いには、いちごやそのほかの野菜を栽培する
    ビニールハウスが建ち並んでいた

  • 久能山東照宮への参拝道。山下から東照宮へは20分ほど

    久能山東照宮への参拝道。山下から東照宮へは20分ほど

丁子屋

久能山東照宮の参拝は翌日に日本平経由で行くこととして、いったん来た道を引き返し、旧東海道を走って、安倍川の西の丸子(まりこ)地区を目指した。
江戸時代、丸子地区には東海道でもっとも小さな宿場のひとつであった「丸(鞠)子宿」がおかれていた。この宿場の名物が「とろろ汁」で、往時にはとろろ汁を旅人に供する茶屋が軒を連ねていたといわれ、歌川広重の『東海道五十三次』にもその様子が描かれている。
今も旧東海道沿いに店を構える「丁子屋」は慶長元年(1596)の創業で、400年以上続く静岡でもっとも古いとろろ汁の名店。そのとろろ汁は、静岡県産の自然薯を使用し、かつおだしと自家製味噌で仕立てているそう。茶碗に盛った麦飯にとろろをたっぷりかけて、流し込むようにして食べていたら、おひつのご飯はあっという間になくなってしまった。
なお、丁子屋といえば江戸のころを偲ばせる茅葺の建物が有名だが、訪れたときは約40年ぶりの葺き替えの真っ最中で、その建物を見ることはできなかった。葺き替え作業は2018年4月までで、完成後はさまざまなイベントを実施する予定だという。

  • 丁子屋名物のとろろ飯。とろろ汁と麦飯、みそ汁のシンプルな定食で1440円

    丁子屋名物のとろろ飯。とろろ汁と麦飯、みそ汁のシンプルな定食で1440円

  • 建物の前には、松尾芭蕉の句碑が。「梅わかな 丸子の宿の とろろ汁」

    建物の前には、松尾芭蕉の句碑が。
    「梅わかな 丸子の宿の とろろ汁」

  • 店の前の通りは旧東海道。そのすぐ脇を丸子川が流れる

    店の前の通りは旧東海道。そのすぐ脇を丸子川が流れる

  • 丁子屋から旧東海道を少し歩いたところに、丸子宿の本陣跡を示す石碑が立っていた

    丁子屋から旧東海道を少し歩いたところに、
    丸子宿の本陣跡を示す石碑が立っていた

駿府匠宿(すんぷたくみしゅく)

駿府匠宿(すんぷたくみしゅく)の中庭と体験工房の建物

駿府匠宿(すんぷたくみしゅく)の中庭と体験工房の建物

国道1号線を駿府匠宿(すんぷたくみしゅく)入口交差点で右折してしばらく走ると、山あいにいくつもの建物が建ち並ぶ「駿府匠宿(すんぷたくみしゅく)」へと到着する。
ここは、今川、徳川時代から受け継がれてきた駿河(静岡市)の伝統産業を体験できる施設。体験工房は「塗物・和染」「木工・竹千筋細工」「陶芸」の3つのカテゴリーにわけられ、ハンカチやのれんの和染、竹の虫籠の製作、陶芸の絵付けなど、さまざまな創作体験ができる。ギャラリースペースでは、駿河雛具、駿河雛人形、駿河指物、駿河漆器、駿河蒔絵など静岡の伝統工芸品を展示。この地域で古くから育まれてきた豊かな工芸文化について学ぶことができた。食事処や甘味処、ショップもあるので、ドライブの休憩やおみやげの物色をするのに立ち寄るのもいいだろう。
/入館無料、体験工房は有料

  • ギャラリースペースの展示。駿河の伝統工芸品を紹介している

    ギャラリースペースの展示。駿河の伝統工芸品を紹介している

  • 駿河塗下駄

    駿河塗下駄

  • 駿河竹千筋細工

    駿河竹千筋細工

  • 別館の「おもしろ体験館」

    別館の「おもしろ体験館」

  • おもしろ体験館2階は「東海道歴史体験ホール」。東海道の宿場風景などを紹介している

    おもしろ体験館2階は「東海道歴史体験ホール」。東海道の宿場風景などを紹介している

  • 駿河羽子板。板に描かれた絵は、歌川広重の『東海道五十三次』

    駿河羽子板。板に描かれた絵は、歌川広重の『東海道五十三次』

  • おもしろ体験館1階のホールでは、「駿河雛具雛人形と日本三大吊るし雛展」を開催(4月8日まで)

    おもしろ体験館1階のホールでは、「駿河雛具雛人形と日本三大吊るし雛展」を開催(4月8日まで)

吐月峰柴屋寺

境内への入口。竹垣が風情を醸す

境内への入口。竹垣が風情を醸す

駿府匠宿(すんぷたくみしゅく)からさらに奥へと車を走らせると、国の名勝・史跡に指定されている庭園で有名な「吐月峰柴屋寺」に着く。同寺は、今川家6代義忠と7代氏親に仕えた連歌師・宗長が永正元年(1504)に草庵を結んで余生を送った場所で、宗長はここに京都銀閣寺を模した庭園を築き、四季の風物を眺めて暮らしていたという。庭園は、本堂正面の遥か南にある丸子富士や西方にそびえる天柱山などの美しい景観を取り入れた借景園であり、池のほとりには北斗七星をかたどった七曜石などを配している。
また、寺宝として後水尾天皇御真筆の短冊、室町8代将軍・足利義政から賜った芦屋釜(文福茶釜)などが保存されている。寺宝というからには、本堂の奥まったところや堅牢なショーケースに入れられて展示されているのかと思いきや、どこにでもあるような普通の戸棚に無造作に並べられていたのが意外だった。

  • 本堂から庭園を眺める

    本堂から庭園を眺める

  • 真ん中が、室町将軍・足利義政から賜った芦屋釜(文福茶釜)

    真ん中が、室町将軍・足利義政から賜った芦屋釜(文福茶釜)

駿府城公園(駿府城跡)

駿府城公園内に建つ、徳川家康像

駿府城公園内に建つ、徳川家康像

国道1号線を走り、静岡市の市街地へ。県庁や税務署、小中学校など行政・教育関連の建物が建ち並ぶ、その真ん中に、かつての中心地だったことを今に伝えるように「駿府城公園(駿府城跡)」は広がっている。
室町時代、駿河国は今川氏によって代々統治されたが、桶狭間の戦いで今川義元が織田信長に討たれると急速に衰退し、駿河は武田、そして徳川の支配下におかれる。天正13年(1585)、徳川家康が駿府城の築城を開始し、翌年に入城。その後、家康の関東移封に伴い、一時は豊臣系の武将が城主になるが、関ヶ原の戦い、江戸幕府の開府を経て、息子の秀忠に将軍職を譲った家康は慶長12年(1607)に大御所として再び駿府城に入り、天下普請によって大規模な拡張修築工事を行った。当時の城郭は三重の堀に囲まれた広大なもので、そのうち二ノ丸堀(中堀)の内側が現在駿府城公園として整備されている。
園内には、家康の像や家康手植えのミカンがあるほか、東御門や坤櫓(ひつじさるやぐら)が復元・公開されていた。また、天守台の発掘調査が平成28年から平成32年まで(2016〜2020)の予定で行われており、その様子を間近で見学することもできる。
/入園無料。東御門・巽櫓 200円、坤櫓 100円、紅葉山庭園 150円

  • 家康が、紀州より献上された鉢植えのミカンをここに移植したと伝わる

    家康が、紀州より献上された鉢植えのミカンをここに移植したと伝わる

  • 天守台の発掘調査現場。手前に見えるのが天守台の石垣

    天守台の発掘調査現場。手前に見えるのが天守台の石垣

  • 復元された東御門。太い梁が印象的

    復元された東御門。太い梁が印象的

  • 二ノ丸堀(中堀)と東御門

    二ノ丸堀(中堀)と東御門

青葉おでん街

青葉おでん街の入口

青葉おでん街の入口

静岡駅前のホテルに荷物をおいたあと、夕食に名物「静岡おでん」を食べようと「青葉おでん街」へと向かった。路地の入口には、煌々と灯る「青葉おでん街」と書かれた看板と赤ちょうちん。足を踏み入れた横丁の両側には間口一間ほどの店が軒を連ね、ガラス戸から中をのぞき見るとどこも10人ほどが座るといっぱいになるぐらいのこぢんまりとした店ばかり。昭和の中頃にタイムスリップしたかのようなレトロな時間がそこには流れていた。
おでん街のルーツは戦後にさかのぼる。当時、青葉公園通りには約200台ものおでん屋台が所狭しと並び、日が暮れればおでんをつまみにお酒を楽しむ静岡市民であふれていた。昭和42年(1967)の市街地再開発の流れの中で屋台は撤去されることになったが、一部のおでん屋台は屋台置き場だったところに店を構えるようになり、それが青葉おでん街や青葉横丁となって現在に至っている。
静岡おでんの特徴は、何といってもその真っ黒いスープ。黒はんぺんや牛スジを濃口醤油ベースの汁で煮込むことにくわえて、長年の継ぎ足しによって熟成し、黒色になっていくそうだ。また、必ず黒はんぺんが入っていること、串に刺してあること、青のりやだし粉をかけて食べること、などが静岡おでんの必須条件とのこと。
地元感満点のため一見では入りにくそうな印象もあるが、実際には観光客の来店もかなり多いそうで、立ち寄った「みすゞ」では韓国から来たという若い女性客が一人飲みをしていた。

  • 横丁の両側に20軒ほどの店が軒を連ねる。昭和の中頃をほうふつとさせるレトロな雰囲気

    横丁の両側に20軒ほどの店が軒を連ねる。昭和の中頃をほうふつとさせるレトロな雰囲気

  • 「みすゞ」の店内。店主は模型好きだそうで、店内のあちこちにプラモデルや模型が並ぶ

    「みすゞ」の店内。店主は模型好きだそうで、
    店内のあちこちにプラモデルや模型が並ぶ

  • 静岡おでんといえば、黒はんぺん(手前)。白焼きやしのだ巻も絶品だった

    静岡おでんといえば、黒はんぺん(手前)。
    白焼きやしのだ巻も絶品だった

  • 具材には串が刺してあり、自分で鍋からとって食べる。スープは真っ黒

    具材には串が刺してあり、自分で鍋からとって食べる。スープは真っ黒

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記事・写真:谷山宏典 取材:2018年2月

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