残雪の北アルプスとアートを楽しむ。安曇野・大町ドライブ(2)

大町市の平野部を南北に走る国道148号線沿いには「木崎湖」「中綱湖」「青木湖」という仁科三湖が連なっている。3つの湖のほとりは桜の名所として知られ、例年4月下旬から5月上旬に見ごろを迎えるが、地元の人によれば「今年は10日間ほど早い」とのこと。実際、取材は4月20日ごろであったが、木崎湖と中綱湖はちょうど見ごろ、もっとも北に位置する青木湖でもすでに咲きはじめ、三湖それぞれで青く澄みわたった湖面と咲き誇る桜が織りなす美しい景色を堪能することができた。
青木湖からは往路を引き返し、県道306号線へ。安曇野アートラインを南下しながら、「安曇野ちひろ美術館」「絵本美術館 森のおうち」「安曇野ジャンセン美術館」「碌山美術館」など、時間が許すかぎり、美術館巡りを楽しんだ。

ドライブルート

長野自動車道・松本IC−(国道143号線など)−松本市中心部−(国道19号線など)−安曇野市−(県道51号線など)−池田町−(県道51号線など)−大町市中心部−鷹狩山−(国道147号線、県道45号線など)−大町温泉郷−木崎湖−(国道148号線など)−中綱湖−青木湖−(国道148号線、県道306号線など)−松川村−(県道306・25・308号線)−安曇野市−(国道147号線、県道310号線)−長野自動車道・安曇野IC

全行程約120km、今回行程60km

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大町温泉郷

北アルプスの山麓を巡る今回の旅では、大町市中心部から北西へおよそ6キロ、鹿島川沿いに広がる「大町温泉郷」に宿をとった。
大町温泉郷は比較的新しい温泉地で、最初の旅館が開業したのが昭和39年(1964)のこと。昭和46年(1971)の立山黒部アルペンルート開通の前後に多くのホテル、旅館がオープンして、現在に至る温泉街をかたちづくっていった。温泉は、約8キロ南西側にある北アルプス高瀬渓谷の葛温泉から引湯しており、泉質は弱アルカリ性の単純温泉で、泉温は約66度。
温泉街というと一般には狭い道路が複雑に入り組み、そこにホテルや旅館、飲食店やみやげもの屋などが密集しているイメージだが、大町温泉郷は計画的に造成された温泉地であり、約40ヘクタールの広大なエリアに道路が縦横に整然と走り、そこに現在11のホテル・旅館が営業している。訪れたときはちょうど「大町温泉郷さくら祭り」の期間中で、通り沿いに咲き誇る桜見物も楽しむことができた。

  • 大町温泉郷の入口

  • 通り沿いには、満開の桜が咲き誇っていた

  • 「薬師の湯」は、温泉郷唯一の日帰り温泉施設

  • 夜には提灯が灯り、夜桜見物も楽しめた

木崎湖

「木崎湖」は、仁科三湖のうち、もっとも南に位置する。湖の周囲は約6.5キロで、湖畔にはキャンプ場やレンタルサイクル・ボート店が点在し、遊歩道も整備されている。夏の最盛期には、湖でウインドサーフィンや小型ヨット、カヌー、ボート、フィッシングなどさまざまなウォータースポーツを楽しむ人で賑わうそうだ。南側には、大町温泉郷と同じ葛温泉から引湯している「木崎湖温泉」や日帰り施設「ゆーぷる木崎湖」もあるので、湖で遊んだあとには温泉を楽しむこともできる。
湖畔の散策には、湖南の有料駐車場か、湖西の木崎湖キャンプ場の駐車場を利用するといい。キャンプ場の近くには「仁科神社」があり、境内に入ると満開の桜が出迎えてくれた。案内看板によれば、かつてこの地には、鎌倉時代から戦国時代にかけて一帯を支配した仁科氏の居城・森城があったという。

  • 木崎湖キャンプ場の桟橋から木崎湖を眺める

  • 湖水は澄んでおり、浅い場所では湖の底が透きとおって見えた

  • 湖畔に咲く桜

  • 木崎湖キャンプ場のバンガロー村

  • かつて森城があった仁科神社。境内の桜は満開だった

  • 湖を眺めながら、湖畔をドライブする

西丸震哉記念館

西丸震哉記念館のエントランス

木崎湖の湖畔沿いの道路が国道148号線と合流する手前、ロッジのような外観の建物が建っていた。それが「西丸震哉記念館」だった。
西丸震哉は、食生態学者、探検家、登山家、画家、SF作家など多彩な顔を持つ人物で、1950年頃から尾瀬周辺の藪をこいで人跡未踏の湿原を探索発見するなど、日本の探検登山の草分け的存在。その活動は国内に止まらず、パプア・ニューギニアなど世界各地の秘境で探検・調査を行い、独自の文明論を唱え続けた。そんな西丸の活動の足跡と貴重な収集品に触れることができる場所として、2008年4月にオープンしたのがこの記念館である。
展示スペースは地下1階〜2階の3フロアに分かれており、蝶の標本、パプア・ニューギニアの弓矢、トカゲの剥製、マサイ族の人形、食人族の頭蓋骨、蛇使いの笛など珍しい品々を目にすることができた。1階にはカフェスペースもあり、インドカレーやコーヒーなどを提供している。
/入館料500円

  • 1階の展示スペース。カフェも併設

  • 2階の展示スペース。西丸震哉が世界各地で収集した珍しい品々が並ぶ

  • 日本やマレーシア、ペルーなどで採取した蝶の標本箱

  • パプア・ニューギニアのお面や櫛、アラスカの氷河の石、三葉虫の化石など

中綱湖

「中綱湖」は仁科三湖の中でもっとも小さく、周囲2.2キロと木崎湖、青木湖と比べると1/3程度しかない。そんな小さな湖にもかかわらず、湖畔の道路には数台の観光バスが停車し、駐車場にもたくさんの乗用車が停まっていた。彼ら観光客の目当ては、湖畔に咲くオオヤマザクラ。訪れたときには八分咲きぐらいで、濃いピンク色の花びらが湖面に映る景色を撮影しようと、対岸では大勢の人がカメラを構えていた。
湖にはヌマカイメンなど貴重な生物が生息しているほか、ヘラブナ、マブナ、ウグイなどの魚影が濃く、冬の結氷期にはワカサギの穴釣りも楽しめるという。

  • 中綱湖の全景

  • 湖の対岸では、桜が湖面に映る景色を撮影しようと、
    多くの人がカメラを構えていた

  • 湖畔に咲くオオヤマザクラを眺める

青木湖

仁科三湖の中でもっとも大きく、長野県内でも有数の透明度を誇る「青木湖」。面積は1.7平方キロで、県内では諏訪湖、野尻湖についで3番目の広さ。最大水深は58メートルあり、長野県の湖でもっとも深い。
青木湖の春のいちばんの見どころといえば、JR大糸線「ヤナバスキー場」駅のそば、南東側の湖畔に立つ「一本桜」だろう。青く澄みわたった湖面と残雪をいただく北アルプスの稜線を背にした一本桜は、凛とした佇まいで、小さいながらも独特の存在感を放っていた。桜は七分咲きぐらいだろうか。花が満開となり、手前の田んぼに水が入る時期には、多くのカメラマンが撮影に訪れるという。
青木湖はそのかたちがハート型をしていることでも有名で、周囲にはキャンプ場やスキー場など四季折々の自然を満喫できる施設が点在している。湖でカヤックやカヌーを楽しむこともできる。

  • 青木湖の一本桜。背後には青く澄みわたる湖面と、残雪をいただく北アルプスの山並み

  • 桜は七分先ぐらいだった。開花は、例年より10日ほど早かったそう

  • 湖の周囲をぐるりとドライブする

安曇野ちひろ美術館

青木湖の湖畔をぐるりとドライブしたあとは国道148号線を南下。木崎湖入口交差点で右折して、安曇野アートラインの北アルプス山麓側の道をさらに南へとひた走った。向かったのは、松川村の田園地帯に広大な敷地を有する「安曇野ちひろ美術館」だ。

  • 安曇野アートラインの看板

  • 水が張られた田んぼには残雪の山並みが映る。春のこの地域ならではの景色

いわさきちひろは、水彩画の柔らかなタッチで子どもの絵を描きつづけた画家・絵本作家で、黒柳徹子の『窓ぎわのトットちゃん』の挿絵などが有名。松川村はちひろの両親が第二次世界大戦後に開拓農民として暮らした村であり、ちひろ自身も30代のはじめに経済的事情でやむなく両親に預けた息子に会うために頻繁に通ったという。そんな縁から、1997年この地に安曇野ちひろ美術館が開館した。
館内には、代表作や絵本の原画、ゆかりの品々、素描やスケッチなどを展示し、ちひろの作品と人生に触れられる構成に。また、世界各国の代表的な絵本画家の作品も数多く展示していた。国内外の絵本3,000冊を自由に読める図書室スペースもあった。 美術館のまわりは四季折々の花が咲く「安曇野ちひろ公園」として整備されて、ピクニックを楽しむ家族連れの姿も。2016年に拡充された北側エリアには、農業や郷土食づくりが体験できるスペースや、『窓ぎわのトットちゃん』の世界を再現した「トットちゃん広場」などがあり、多くの人たちが思い思いの時間をのんびりと過ごしていた。
今年2018年はいわさきちひろ生誕100年にあたる年で、それを記念してさまざまな分野で活躍する7組の作家とコラボレーションした特別展「いわさきちひろ生誕100年『Life展』」が年間を通じて開催されている。
/入館料800円

  • 美術館周辺の「安曇野ちひろ公園」。
    色鮮やかな花が咲き、北アルプスが遠望できる

  • 美術館のエントランス

  • 館内の様子。
    特別展「いわさきちひろ生誕100年『Life展』」が開催中だった

  • Life展より「絵本を見るための遊具」

  • Life展より「絵の具の足あと」

  • 陽の光が射し込むカフェスペース

  • 天気のいい日にはテラス席が気持ちいい

  • 安曇野ちひろ公園内の「トットちゃん広場」

  • トットちゃんが通ったトモエ学園の「電車の図書室」を再現

  • トモエ学園では古い電車の車両を教室として使っていた。
    1940年頃の教室の様子を再現

絵本美術館 森のおうち

赤松の森の中にある「絵本美術館 森のおうち」

穂高川に架かる橋を渡って安曇野市へと入り、安曇野アートライン(県道306号線・同25号線)を南下していくと、宿泊施設や食事処、カフェなどが点在する安曇野穂高温泉郷へと入っていく。途中、県道25号線を外れて左折。400メートルほど行くと、梢の高い赤松の森の中にひっそりと佇むように建つ「絵本美術館 森のおうち」へと着く。
美術館の建物は瀟洒な一軒家のような雰囲気で、館内は1、2階が吹き抜けになった広々とした空間に。4つの展示室では、国内外の絵本原画の企画展を年4〜5回実施しているそうで、訪れたときは「宮沢賢治のどうぶつ絵本原画展」を開催していた。1階には、宮沢賢治の童話『ポラーノの広場』から名付けた「Cafeポラーノ」があり、手焼きのケーキや軽食、コーヒーなどを提供しているので、ドライブの休憩にのんびりするのもいいだろう。
美術館のすぐ隣には「ジョバンニのコテージ」という宿泊施設も併設。各部屋はダイニングキッチンとベッドルームからなり、美しい森に囲まれてプライベートな時間を過ごすことができる。
/入館料800円

  • 美術館の外観は、瀟洒な一軒家のような雰囲気

  • 館内の様子。木のぬくもりを感じさせる空間

安曇野ジャンセン美術館

安曇野アートラインは県道25号線から県道308号線へと移り、進路は東へ。「安曇野ジャンセン美術館」は県道308号線に入ってすぐのところにあった。
この美術館は、フランスとアルメニアという2国の国家勲章を受けた画家ジャン・ジャンセンの世界初の専門美術館で、彼の油彩・水彩・デッサン・版画など多彩な作品を、年度ごとの常設展や年数回の企画展を通じて公開している。ジャンセンの作品はパリ美術館などヨーロッパやアメリカの主要美術館でも展示されているが、本館のコレクションは世界屈指であり、彼の作品がこれほど多く集められた美術館はほかに例がないという。
/入館料850円

  • 通りに面した美術館入口。「ジャンセンの森」という庭園が広がる

  • 庭園の奥に建つ美術館の建物

碌山美術館

教会風建築の「碌山館」。美術館のシンボル

旅の最後に、JR大糸線そばの碌山ろくざん美術館」に駆け込むようにして立ち寄った。 碌山とは、日本近代彫刻の扉を開いた荻原守衛の号で、同館は彼の作品と資料を保存・公開するために昭和33年(1958)30万人の寄付と支援によって開館した。
敷地内に入ってまず目に飛び込んでくるのは、教会のような外観のレンガ造りの建物。美術館のシンボルともいえる「碌山館」で、館内には《女》《北條虎吉像》など荻原守衛の彫刻作品や資料を展示。敷地内にはほかに3つの展示棟があり、彫刻の石膏原型、油絵、デッサンなどを公開していた。
明治時代に生きた荻原守衛は、オーギュスト・ロダンの《考える人》に出会って彫刻を志し、ロダン本人から直接教えも受けている。また、イタリア、ギリシア、エジプトの諸芸術をつぶさに見て、自身の作品づくりに生かしてきた。日本に近代彫刻の息吹をもたらし、新しい時代を切り拓いたパイオニアだったのだ。
入館料/700円

  • 敷地内を散策する。新緑が美しい

  • 荻原守衛の作品《労働者》

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記事・写真:谷山宏典 取材:2018年4月

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