水景に癒される。長野・山梨・静岡ドライブ(1)

池の向こうに八ヶ岳連峰を望む 長野、山梨、静岡の三県を流れ駿河湾へとそそぐ一級河川、富士川と大井川。富士川の上流部分である釜無川近くには諏訪湖があり、もうひとつの上流部・笛吹川の源流は、名瀑が次々と現れる西沢渓谷となっている。流域に南アルプスと富士山という豊かな水源をもつ富士川の周辺には、清流が作り出す繊細で幽玄な水辺の景色がいくつもある。一方、静岡・長野・山梨3県の境にある間ノ岳を源とする大井川は、流域に電力をもたらすダムがいくつもあり、雄大な自然と人工物が織りなす独特の景観を作りだしている。今回のドライブは、この中部地方のふたつの川にまつわる水景を探す旅にでかけてみた。
初日は西沢渓谷のトレッキングに4〜5時間かかるため、長野県茅野市にあるニッポンレンタカー茅野駅西口営業所の営業開始とともに車を借りドライブをスタートした。

ドライブルート

茅野市−(国道20号線) −諏訪市−(国道20・152号線など) −茅野市−(国道152・20号線) −諏訪南IC−(中央自動車道) −双葉JCT−(中央自動車道) −勝沼IC−(国道20・140号線など) −山梨市−(国道140号線) −甲府市−(県道5・12号線など) −南アルプス市−(県道108・36号線など) −富士宮市−(国道139号線、県道414号線) −富士宮市−(国道139号線) −新富士IC−(新東名高速道路) −島田金谷IC−(県道63号線、国道362号線など) −榛原郡川根本町犬間−(県道388・77号線) −榛原郡川根本町千頭−(県道77号線、国道362号線) −静岡市

全行程 約496km、今回 約204km

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諏訪湖

茅野駅西口のターミナルの目の前にある営業所

茅野駅西口のターミナルの目の前にある営業所

「諏訪湖」は、長野県諏訪市をはじめ岡谷市、諏訪郡下諏訪町にまたがる周囲約16km、総面積約13平方kmの長野県随一の湖。南岸には全国1万の御分社をもつ諏訪大社の総本社「諏訪大社上社本宮」と「諏訪大社上社前宮」があり、北岸には「諏訪大社下社秋宮」と「諏訪大社下社春宮」がある。それぞれ南に位置する社を「上社」、北にある社を「下社」と呼ぶのが習わしだ。天竜川から流れ込む清涼な水は、古くから生糸産業など工業製品の製造を支え、諏訪湖の周囲には世界に名だたる精密機器メーカーが集まっている。

  • 高台の立石公園からは諏訪湖全体を見渡すことができる

    高台の立石公園からは諏訪湖全体を見渡すことができる

諏訪湖間欠泉センター。間欠泉は5mほどの高さまで噴出する

諏訪湖間欠泉センター。間欠泉は5mほどの高さまで噴出する

最近では2016年に大ヒットしたアニメ映画『君の名は。』に登場する街が、ここ諏訪湖畔をモデルにしたともいわれ、“聖地巡礼”をする多くのアニメファンが押し寄せている。映画のなかで主人公たちが訪れる、遥々とした湖畔の街を見晴らす高台は、諏訪湖の東側にある「立石公園」からの眺めを参考にしたといわれている。
湖周辺には1日5回(9時30分、11時、12時30分、14時、15時30分)間欠泉を噴き上げる「諏訪湖間欠泉センター」や湖上を案内してくれる「遊覧船」、日本で唯一時計の組立体験ができる「諏訪湖時の科学館 儀象堂」など、1日ではとても周り切れないほど観光スポットが充実している。

  • 間欠泉は最初の吹き出しが一番勢いが良い

    間欠泉は最初の吹き出しが一番勢いが良い

  • 間欠泉センターの横には無料の足湯がある

    間欠泉センターの横には無料の足湯がある

諏訪大社 下社秋宮

せっかく諏訪湖を訪れたのだから、諏訪大社の4社を詣でたいところだが、先を急ぐので今回はパワースポットとして人気の「諏訪大社下社秋宮」をお参りした。
諏訪湖北岸にあり、旧中山道・甲州街道の分岐点の要衝に鎮座する下社秋宮には本殿はなく、一位(イチイ)の木を御神体として拝している。重厚な青銅製の鳥居の先には、巨大な注連縄が目を引く神楽殿が鎮座する。左右には日本一の大きさの狛犬が眼光鋭く参拝者を迎え、その奥には彫刻が見事な幣拝殿が威風堂々の姿をみせる。
諏訪大社下社秋宮が人気を集める理由はいろいろあるが、そのひとつが鳥居をくぐり右手にある「温泉手水」の存在だろう。石造りの龍神の口から滔々と流れる「御神湯」は少し熱めの天然温泉で、「長寿湯」とも呼ばれ、ご利益にあやかろうと参拝者がじっくりと清めにいそしんでいた。
(諏訪大社下社秋宮は、『甲州街道ドライブ(4)甲州道中・中山道合流の地へ』でも立ち寄っているので、そちらもぜひ参考に)

  • 青銅製の鳥居が参拝者を迎え入れる

    青銅製の鳥居が参拝者を迎え入れる

  • 天保6年(1835)に立川流宮大工・二代目立川和四郎富昌によって建てられた神楽殿

    天保6年(1835)に立川流宮大工・二代目立川和四郎富昌によって建てられた神楽殿

  • 鳥居のすぐ奥にある樹齢600年以上の寝入りの杉

    鳥居のすぐ奥にある樹齢600年以上の寝入りの杉

  • 神楽殿の注連縄は7.5mもの長さがある

    神楽殿の注連縄は7.5mもの長さがある

  • 神楽殿とともに国の重要文化財に指定された幣拝殿

    神楽殿とともに国の重要文化財に指定された幣拝殿

  • 高さ1.7mの狛犬は彫刻家・清水多嘉示の作

    高さ1.7mの狛犬は彫刻家・清水多嘉示の作

  • 幣拝殿の見事な彫刻

    幣拝殿の見事な彫刻

御射鹿池

すぐ近くに30台ほど停められる駐車場がある

すぐ近くに30台ほど停められる駐車場がある

車は諏訪湖を離れ、八ヶ岳連峰を目指すように東へ。茅野市街地から車で30分ほどで奥蓼科温泉郷近くの「御射鹿池(みしゃかいけ)」に到着する。八ヶ岳中信高原国定公園に指定されるエリアにあるこのため池は、東山魁夷画伯の作品『緑響く』のモチーフとされ、平成22年(2010)に農林水産省の「ため池百景」に選定されている。
数多くのテレビCMのロケ地にも使われる景勝地でありながら、アクセスがあまり良くないことから人もまばらで、鏡のような水面にシンメトリックに映える湖畔の風景と静かに対峙することができる。
御射鹿池は昭和8年(1933)に農業用水のため池として造成され、水源の渋川から流れ込む冷たく強酸性の水を希釈するために設けられ、冷害常習地であった当地の収穫改善に大きく貢献した。今でも池の水はpH4の強い酸性を示し、魚などの生き物が棲めない代わりに、酸性環境を好む「チャツボミ苔」が湖底に繁茂している。水辺の木々を良く映す独特の景観は、このチャツボミ苔のおかげだそうだ。

  • 池の周囲を白樺やカラマツの木立が取り囲む

    池の周囲を白樺やカラマツの木立が取り囲む

  • 池の向こうに八ヶ岳連峰を望む

    池の向こうに八ヶ岳連峰を望む

  • 波ひとつ立たない鏡のような水面。池は一般道の歩道の柵の外から見学できる

    波ひとつ立たない鏡のような水面。
    池は一般道の歩道の柵の外から見学できる

  • 池からさらに行くと奥蓼科温泉郷へと入って行く

    池からさらに行くと奥蓼科温泉郷へと入って行く

西沢渓谷

西沢渓谷のハイライト、七ツ釜五段の滝

西沢渓谷のハイライト、七ツ釜五段の滝

今回のドライブの前半、諏訪湖や御射鹿池の見学を早々に切り上げたのも、「西沢渓谷」を訪れるためだ。甲武信ヶ岳、国師ヶ岳など奥秩父山塊に囲まれる渓谷は、秩父多摩甲斐国立公園内に位置し、国内でも有数の渓谷美を誇り、登山者やハイカーたちに愛されている。起点の「西沢渓谷入口」から渓谷をぐるっと回って戻ってくる行程は約10km。所要時間3時間30分〜4時間という情報は得ていたため、何とかお昼前には渓谷入口に到着していたいと考えていた。
ドライブ用のラフな服装から、長ズボン・長袖シャツ・トレッキングシューズに着替え、トランクに忍ばせていたリュックサックの中に風よけと防寒を兼ねたレインウェア、替えのシャツ、タオル、弁当、非常食のチョコレート、500mlのお茶と1Lペットボトルの飲料水も用意した。「少々大げさかな?」と思ったものの、すれ違うハイカーたちの服装を見て、これでも最低限の装備だと思った。
のどかな林道をしばらく歩いて、いくつかゲートを越えると、次第に足元は渓流沿いの岩場道となっていく。足を滑らせないよう慎重に歩いて行くと、ほどなく最初の見どころ「三重の滝」に到着。滝を受ける釜が下に行くにしたがって次第に大きくなる三段の滝には、渓流をまたぐ川床のような滝見台が用意されている。ここだけでも十分満足できる景観だが、今回は渓谷の最奥部にある「七ツ釜五段の滝」を目指すので、見学もそこそこ先を急ぐことにした。

  • 入口から20分ほどのトイレ。ここで登山届を出す

    入口から20分ほどのトイレ。ここで登山届を出す

  • 巨大な堰の目の前を渡る二俣吊り橋は入口から30分ほど

    巨大な堰の目の前を渡る二俣吊り橋は入口から30分ほど

  • 高さ約30mの二俣吊り橋。けっこう揺れるのでスリリングだ

    高さ約30mの二俣吊り橋。けっこう揺れるのでスリリングだ

  • 三重の滝の前には滝見台が設けられている

    三重の滝の前には滝見台が設けられている

  • 最初に現れる大きな滝「三重の滝」

    最初に現れる大きな滝「三重の滝」

  • 疲れたら清流のそばでひと休みしよう

    疲れたら清流のそばでひと休みしよう

足場の悪い沢伝いを鎖の手すりを頼りに登って行けば、「人面洞」「竜神の滝」「恋糸の滝」「母胎淵」など、見ごたえのあるポイントが次々と現れ、飽きることがない。こうした観望スポットもさることながら、途中の何気ない清流の景色もフォトジェニックで、つい見とれてしまう。
アップダウンの激しい山道を歩いていると、ひと際大きな滝の轟音が遠くから聞こえてくる。峻険な岩場を登り、高台に出ると西沢渓谷のハイライト「七ツ釜五段の滝」が目前に現れた。落差50mの巨大な滝の前には、渓谷をまたぐ橋が架けてあり、高いところが苦手な人には、ちょっと厳しい高さだ。橋を渡りきり、しばらく歩くと七ツ釜五段の滝の上流部を間近に見ることができる。連続する釜へ落ちる水の流れは下に行くほど加速し、エメラルドグリーンの滝壺を白く泡立たせる。
七ツ釜五段の滝と別れ、尾根を歩いていくと、ほどなく「西沢渓谷終点まであと100m」と書かれた看板が現れる。延々と続く急な階段を登った先に、古いトロッコの軌道跡が現れる。トレッキングのスタート地点「西沢渓谷入口」は、緩やかな下り坂の旧トロッコ軌道を1時間半ほど歩くと到着する。

  • 二番目の滝「竜神の滝」の脇を登って行く

    二番目の滝「竜神の滝」の脇を登って行く

  • 入口から約2時間半、目的地の「七ツ釜五段の滝」に到着

    入口から約2時間半、目的地の「七ツ釜五段の滝」に到着

  • 帰り道の旧森林軌道に出るには急な階段を登る

    帰り道の旧森林軌道に出るには急な階段を登る

  • 旧森林軌道を歩いて20分ほどで到着する大展望台

    旧森林軌道を歩いて20分ほどで到着する大展望台

  • 昭和43年(1968)まで木材搬出のために使われていたトロッコ軌道

    昭和43年(1968)まで木材搬出のために
    使われていたトロッコ軌道

  • 西沢渓谷入口に到着。左手の坂の下に市営無料駐車場がある

    西沢渓谷入口に到着。左手の坂の下に市営無料駐車場がある

ほったらかし温泉

西沢渓谷の散策でひと汗かいたので、露天風呂からの眺望がすばらしいことで有名な「ほったらかし温泉」へと向かった。国道140号線、通称「雁坂みち」を甲府市に向かって約20kmほど南下し、山梨市の市街地でふたたび山に向かって車を進める。「笛吹川フルーツ公園」の横を通過し、ワインディングロードをしばらく行くと目的地に到着する。取材に出かけた日が土曜日だったため、広大な駐車場はほぼ満車状態。「これだけの来場者だと露天風呂はイモ洗いのごとしではないか!?」と少しためらったが、一刻も早く登山の汗を流したかったので混雑覚悟で入浴することにした。
ほったらかし温泉には「あっちの湯」と「こっちの湯」の2つの浴場があり、それぞれ入浴料800円が必要だ。東側のあっちの湯は岩を配した野趣あふれる広い露天風呂が2つあり、西側のこっちの湯は落ち着いた雰囲気の石組みの露天風呂となっている。
あっちの湯の浴場を覗いてみると、駐車場で見た車の数からは意外に感じるほど空いていた。脚をのばせるスペースも十分あり、湯船は浅く肩までつかっても甲府盆地の瞬く夜景を眺めることができる。岩に頭をもたせ身体をのばして空を仰ぐと、満天の星空が頭上を覆っていた。

  • あっちの湯の建物の向こうに甲府盆地の夜景が見える

    あっちの湯の建物の向こうに甲府盆地の夜景が見える

  • あっちの湯の露天風呂。眼下に夜景が広がる。ほかに内湯の大浴場もある

    あっちの湯の露天風呂。眼下に夜景が広がる。
    ほかに内湯の大浴場もある

2つの温泉の入口がある広場には、そばやうどんを販売する軽食スタンドがあり、縁日の夜店のような楽しげな雰囲気だ。ログキャビン風の清潔な休憩所もあり、来場者は思い思いに過ごしている。軽食スタンドのビールに食指が動くが、ホテルまであと数kmドライブしなければならない。グッとこらえて山を下った。

  • スタンドの軽食は広場のテーブルで食べられる

    スタンドの軽食は広場のテーブルで食べられる

  • スタンドで売っている温玉揚げ130円

    スタンドで売っている温玉揚げ130円

  • 広場は縁日のような楽しさがある

    広場は縁日のような楽しさがある

  • ログキャビン風の清潔な休憩所も用意している

    ログキャビン風の清潔な休憩所も用意している

ニッポンレンタカーの車種・料金

詳しくは車種・料金一覧表をご覧ください。

長野県内のニッポンレンタカー営業所

ニッポンレンタカー ホームページの営業所検索で、長野県の営業所リストをご覧いただけます。

長野県公式観光サイト「さわやか信州旅net」
長野県観光協会による。「信州観光ガイド」や観光モデルコース、県内各地のライブカメラ映像などを提供。
諏訪市観光ガイド
霧ヶ峰高原など諏訪市の観光スポットを紹介しているほか、ハイキングマップも用意されている。
信濃國一之宮 諏訪大社
上社本宮・前宮、下社春宮・秋宮の4つの境内地をもつ神社の案内。御柱大祭などの行事・神事も紹介。

記事・写真:宮崎博 取材:2017年9月

  • ※ドライブコースの情報はそれぞれの記事の取材時点のものです。