北極圏・火山国アイスランド(2)

対岸からのアークレイリの街 首都レイキャヴィーク(Reykjavík)から西へ約400km、アイスランド北部に位置する第二の都市アークレイリは、人口たったの1万7,000人という小さな街だ。それでもこの国では大都市であり、街のランドマークであるアークレイリ教会を中心にカラフルな民家が建ち並ぶ。 広場や小道にはレストランやカフェが軒を連ね、こぢんまりとしたお洒落な街でもある。また地元のアーティストたちによる手作りの民芸品店から公共の博物館、美術館、植物園もある。 その郊外には溶岩でできた多彩な自然の造形、大きな湖、水量の多い川や滝、さらには高確率でクジラに出遭えるホエールウォッチングなど見どころ満載の観光起点でもある。

レイキャヴィークからは飛行機が1日3〜6便、所要時間45分、バスが1日2便(夏は増発される)所要時間約6時間30分と交通の便はよいとはいえない。そのため、ここでは旅の足の主役はレンタカーだ。
車種は大きく車高の高い四輪駆動が多い。舗装された国道1号線を外れると凹凸の激しいダート道路も多く、二輪駆動車は場所によって保険も効かない。またレンタカーなどが進入禁止の道もあるので、レンタル時の注意事項に注目したい。

ドライブルート

レイキャヴィーク(Reykjavík)−アクラネース(Akranes)―ブロンドュオス(Blönduós)−ソイザウルクロウクル(Sauðárkrókur)−アークレイリ(Akureyri)−ゴーザフォス(Goðafoss)−ミーヴァトン湖(Mývatn)−アークレイリ経由レイキャヴィーク

全行程 約1000km

<赤いドライブルート付近のマーカーをクリックするとその項目にジャンプします>

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リングロード

レイキャヴィークから北部へのトンネル

レイキャヴィークから北部へのトンネル

島国アイスランドを一周する国道1号線をリングロードと呼ぶ。交通量は少なく、首都レイキャヴィークと第二の都市アークレイリを往来するレンタカーが目立つ。片道二車線の舗装道路だが一部を除いてガードレールはない。制限速度は時速90km(未舗装の区間では時速80km)と速いスピードなので注意が必要だ。

レイキャヴィークを出て約20km、1号線はアイスランドで唯一の海底トンネル(有料:約1,000円)で結ばれていた。この海底トンネルは深く入り組んだフィヨルドの対岸まで全長5,762m。大きな口を開けたトンネル内はかなり急勾配で、下ったり上ったりして行く。
トンネルを抜けると1号線へは右折だが、左の半島へと最初の寄り道をした。
そこはレイキャヴィークの北、海をはさんだアクラネース(Akranes)という港町だ。19世紀に漁村として起こり、20世紀の半ばに多くの人々が移住し、現在は約5,000人が住んでいる。
見どころは半島先端に立つ大小2基の灯台で、高さは聞き忘れてしまったが恐らく20mほど。大きい灯台は観光スポットとして一般開放され、誰でも無料で上ることができ、螺旋階段ではなく急な梯子を上っていく。上部からは目前の海、背後の岩山の連なりや遠くに広がる荒野と360度の眺めが楽しめ、真下でしぶきを上げて激しくぶつかり合う極北の海の荒々しい波や激しい潮の流れ、北極に近い厳しい冬の一端を覗くことができる。

  • 新旧灯台と鱈干し棚

    新旧灯台と鱈干し棚

  • 新しい灯台から見る荒海

    新しい灯台から見る荒海

リングロードへと戻り、一時北上、海岸から離れた道を約200km、時々海に出会いながら走り続けた。民家はもちろん人の気配すら感じない。溶岩で出来た山の連なり、黒や茶色の火山灰の大地、溶岩流が固まったままの奇岩が転がる斜面、まるで映画やテレビの中で目にする他の惑星の荒涼たる世界のようである。ここアイスランドは地球の中でも特殊な地形で、樹木もなく色彩に乏しい大地なのだ。そのためSF映画やドラマのロケ地になることも多い。同じ火山国でも日本とは全く異なるばかりか、世界でも珍しい自然風景なのだ。

  • 旧港に捨てられた船

    旧港に捨てられた船

  • 広々とした大地が続く

    広々とした大地が続く

そんな中にも植生された牧草地が点在し、羊、馬、牛が放牧されていた。草木も生えないこの溶岩の大地に、緑の牧草を育て、雪と氷の酷寒の冬に家畜を育てることは大変なこと。その人々の努力と逞しさを思いながら、ブロンドュオス(Blönduós)という中間地点へ。ここにはアザラシ博物館があったが、いまはないという。再びどこまでも続く長い道を走り続けた。

  • 牧場には草小屋が残る

    牧場には草小屋が残る

  • 後姿が可愛らしい羊

    後姿が可愛らしい羊

  • ひっそりとしたブロンドュオスの町

    ひっそりとしたブロンドュオスの町

  • 鱈漁の母船。先端の形がユニーク

    鱈漁の母船。先端の形がユニーク

アイスランドの馬

溶岩の上にたたずむアイスランドホース

溶岩の上にたたずむアイスランドホース

「アイスランドホース」と呼ばれ、国内で約8万頭、世界で約25万頭が飼育されている。もとはヴァイキングたちがアイスランドへ移住をはじめた9世紀〜10世紀にかけて、ヨーロッパから連れてこられたという。比較的小柄でおとなしい馬だ。普通の馬の歩き方は「常歩」「速歩」「駆歩」の3つに分類されるが、アイスランドホースにはその他に「トルト」という特有の歩き方がある。見た目には「速歩」と似ているが、4本足のうちどれか1本が常に地面に着いているため、乗馬中人への衝撃が少ない。前足の膝を曲げて、水平に挙げる仕草が独特。
近年乗馬は人気のアクティビティの一つで、小柄でまるっこく愛らしいこの馬には、乗馬がはじめての人でも比較的楽に乗ることができる。
広大な溶岩の大地を行く乗馬ツアーは、点在する多くの牧場で行われている。旅行案内所、もしくはスマホでも気軽に予約することができる。

  • 放牧されている馬

    放牧されている馬

  • 人なつっこく、おとなしい

    人なつっこく、おとなしい

  • 前足の上げ方が独特

    前足の上げ方が独特

  • こんなヘアスタイルのタレントいませんか?

    こんなヘアスタイルのタレントいませんか?

しかし、可愛い馬でもこの国の貴重な輸出品だ。こうした大切な馬を病気などから守るため、輸入はもとより一度輸出した動物を再輸入することは法律で禁じられている。約8万頭も放牧されている馬の多くは食料用として主にヨーロッパに輸出されていると地元の人は少し後ろめたそうな顔で言った。そこでこちらも「私達も食べますよ」というと「おいしいよね」と笑いあった。この国は隣国ノルウェーなどと並んで捕鯨国でもある。

  • 海に続く湿地帯の牧場

    海に続く湿地帯の牧場

アークレイリまで約80km地点で再び1号線を離れて北へ向かい75号線に入る。約24km進み、北部では2番目という人口約3,000人の町ソイザウルクロウクル(Sauðárkrókur)へ向かった。
この地域は海側から見ると深いフィヨルドの奥にある町だが、その一帯は山々から流れ来る荒々しい氷河川が幾筋もあり、アイスランドでは珍しい緑濃いなだらかな渓谷地帯だ。
古くから馬術と乗馬の中心的な存在で、リバーラフティングが盛んでもある。また歴史的にも重要な役割を果たした地域で、その歴史的な建物を残した地区が、町外れにあると聞いた。グロイムバイル(Glaumbær)である。木が生えないため、湿地に生える草などが積み重なって固まったものを使用した芝土と石造りの教会、牧師宅、農家などを兼ねた建物が残されている。草や苔で覆われた屋根の家は、最古の部分は1834年に建造されたもので、隣接する教会は1926年に再建されたもの。修復保存されている芝土造りの家は民族博物館として、古い農家の生活を知る道具などと共に展示公開されている。訪れた10月末は残念ながら冬期閉館中だった。

  • 1号線を北上、やがて山は雪と氷河に

    1号線を北上、やがて山は雪と氷河に

  • 氷河に包まれた噴火口の跡

    氷河に包まれた噴火口の跡

  • 路肩に石の人形。車はポーランド製4駆6速MT

    路肩に石の人形。車はポーランド製4駆6速MT

  • レイキャヴィークとアークレイリの中間、シールセンターミュージアムは休業中

    レイキャヴィークとアークレイリの中間、
    シールセンターミュージアムは休業中

  • ソイザウルクロウクルの町

    ソイザウルクロウクルの町

  • 古い教会は建て直されたという

    古い教会は建て直されたという

泥土と草で固められているのがわかる

泥土と草で固められているのがわかる

  • グロイムバイルの芝土の古農

    グロイムバイルの芝土の古農

  • 移築、保存されている芝土と石造りの家

    移築、保存されている芝土と石造りの家

  • 牧場小屋へと追われる羊

    牧場小屋へと追われる羊

アークレイリ(Akureyri)

北部の都市。この国第二の都市だが人口は1万7,000人と少ない。高台に1940年に建てられたアークレイリ教会を中心に広がる小さな町だ。小さいながらも、博物館、美術館、植物園などを備え、民家のカラフルな家並は絵本の中の「おうち」のように可愛い佇まいである。またリングロード沿いではあまり目にしなかった大型ホテルやレストランもあり、長いドライブの疲れを癒やせる町でもある。
海岸線沿いに走るメイン道路の信号機の赤色はハートの型で、見る人の心をなごませる。対岸の丘陵地帯から、深く澄んだ入り江を経て、町と背後の雪をかぶった山々を一望することができる。ただ町外れには大型スーパーが出来ていて、人々の足は旧市街から新しいスーパーの方へと向かっているようだった。

  • アークレイリに近い溶岩の針峰

    アークレイリに近い溶岩の針峰

  • アークレイリ教会

    アークレイリ教会

  • 店頭に置かれた人形

    店頭に置かれた人形

  • 赤信号はハート型です

    赤信号はハート型です

  • アークレイリ背後の山々と入り江

    アークレイリ背後の山々と入り江

  • 対岸からのアークレイリの街

    対岸からのアークレイリの街

アークレイリ起点の観光地

ホエールウォッチング、伝説を秘めた大滝、火山活動の盛んな地域、噴き上がる地熱の蒸気と広大な温泉、奇岩と広大な湖、美しい渓谷など自然の力強さを、その造形を見て体験できるエリアだ。一部リングロードと重なるが、これらの観光地を一回りするコースを「ダイアモンドリング」という。この約200kmを2日でまわるバスツアーもあるが、今回は天候にめぐまれなかったため日帰りで大滝、温泉、湖の一部だけのドライブとなった。

  • 港にはホエールウォッチングの事務所がたくさんある

    港にはホエールウォッチングの事務所がたくさんある

ゴーザフォス(Goðafoss)

アークレイリより東へ約40km、ほぼ1号線沿いの右手に水しぶきが上がる。落差12mとそれほど高くはないが、幅は30m以上で水量が多くかなりの迫力がある。
ゴーザフォスとは『神々の滝』という意味を持つ。
ノルウェー人が移住しはじめた9世紀ごろ、ヴァイキングの神オーディン(アイスランド語ではオージン)を主神とする北欧神を信仰していたが、アイスランド議会がキリスト教に改宗することを決めた。自身もキリスト教徒となった議会の判事が自宅への帰り道、今は異教となった神オーディン像をキリスト教への改宗の証しとしてこの滝へと投げ捨てた。そんな由来を持つことから神々の滝と呼ばれている。ゴウゴウと流れ落ちる迫力ある滝の左岸の縁には、危険防止の柵はない。滝のすぐ側で写真を撮る人も多いが、見るだけでも滑る足元が気になった。

  • ゴーザフォスの滝

    ゴーザフォスの滝

  • 柵もなく、自撮りカメラマンにはひやりとさせられる

    柵もなく、自撮りカメラマンにはひやりとさせられる

ミーヴァトン湖(Mývatn)

面積約37㎢と、この国4番目に大きい湖で、その名の意味はアイスランド語で「蚊の湖」。大量のユスリカが発生する様子から付いた名だという。ユスリカの大発生により、これを餌とする野鳥が集まり、野鳥の楽園としても名高い。北半分はリングロードと重なりながら湖を一周することができる。新しくホテルもでき、周辺は火山噴火でできた溶岩台地や、地熱発電所などの他、野鳥博物館がある。

  • ミーヴァトン湖

    ミーヴァトン湖

  • ミーヴァトン湖を巡る道路。溶岩を縫って走る

    ミーヴァトン湖を巡る道路。溶岩を縫って走る

  • 湖岸は溶岩の重なり

    湖岸は溶岩の重なり

ミーヴァトン・ネイチャーバス(Mývatn NatureBaths)

ミーヴァトン・ネイチャーバス(遠方)と地熱採集場

ミーヴァトン・ネイチャーバス(遠方)と地熱採集場

湖から東へ約4kmのところにある2004年にオープンした温泉。活発な地熱活動、氷河からの豊富な水と火山という3つの条件が揃った島には至るところに温泉がある。島に点在する多くの小さな温泉は天然のところが多いが、ここは首都に近い温泉「ブルーラグーン」と並んで観光地として開発したもの。自噴ではなく地熱発電を利用した大露天風呂で、ブルーがかった乳白色の湯である。荒涼とした景色の中でゆったりと楽しむ温泉として人気があるが、お湯の温度は36〜40℃と日本人の温泉感覚からしては、外気は冷たく、湯はぬる過ぎる。ガイドブックなどには「温泉に浸かりながらオーロラ見物」とあるが、オーロラが出現する季節は外気温が低すぎて日本人には無理かもしれない。手ぬぐいを頭に、ゆったりと湯に浸かる日本の温泉とは大違い。水着着用、泳いではいけないなどのルールはあるが、売店で売られているビールやジュース類の飲み物はよしである。

  • 湯がぬるく、秋になると日本人には寒すぎる

    湯がぬるく、秋になると日本人には寒すぎる

  • 入浴料。1クローネは約1円

    入浴料。1クローネは約1円

  • 夕暮れ直後のオーロラ

    夕暮れ直後のオーロラ

  • 北斗七星が輝き、オーロラの下、アイスランドホースがたたずむ

    北斗七星が輝き、オーロラの下、アイスランドホースがたたずむ

  • 不思議な色彩も混じる

    不思議な色彩も混じる

  • 雲はオーロラを閉ざすが、オーロラは星の光を通す

    雲はオーロラを閉ざすが、オーロラは星の光を通す

  • 大空に舞う光

    大空に舞う光

アイスランドの旅行術

飛行機搭乗の手続きから宿の予約、観光地案内などはすべてインターネットで。また旅先の宿の場所はスマホなどのGPSを頼りに探す。宿に着いたらネットでカード支払いを済ませたあと、提示されたピンコードで部屋の鍵を開ける。場所によっては、周囲はおろか宿も無人のところも少なくない。またすべての支払いはさまざまなカードで決済する。ジュース1本、ガム1つ、驚いたことに有料トイレまでカード支払いの世界だ。したがって現地通貨との両替はいらないばかりか、今回は現地通貨を見る機会もなかった。

アイスランドだけではなく、これからの旅行形態は大きく変わる。スマートフォンを使えない人は、それぞれの団体ツアーを利用する方法しかないかもしれない。

アイスランド政府観光局
アイスランドの観光情報などが紹介されている。

取材:2017年11月

  • ※ドライブコースの情報はそれぞれの記事の取材時点のものです。