北極圏・火山国アイスランド(1)

ストロックル間欠泉。吹き出した瞬間。人はすぐ側まで行ける アイスランドはヨーロッパと北米大陸の間にあり、北極圏に位置する島国だ。島全体が『火と氷の島』といわれ、2012年欧州の航空路を閉鎖するほどの大噴火があり、今なお活動中の火山が200余もある。一方では国土の12%も占める氷河とフィヨルドに代表される大自然に恵まれた国でもある。さらに人口は約33万人と少なく、内陸部はほとんど人の住まない手つかずの大自然が今も残っている。
9世紀にはヴァイキングが定住したと言われているが、それ以降の歴史もまた、民族の移動が少なかったこともあり、独自の伝統・文化を今日まで守り続けてきた。とくに言語においては、古いヴァイキングの言葉が今なお残されている。いまは多くの人が英語を理解することができるが、小さな町や村では彼らの言語での世界だ。
地理的には北大西洋のほぼ中央に位置し、北極圏にありながらメキシコ暖流の恩恵で、思ったよりも暖かい。地熱発電、温泉、氷河、間欠泉、溶岩の大地の他、夏は白夜、冬はオーロラと自然あふれるこの国は、いま急激な観光ブームに湧いていた。
アイスランド島を一周する国道1号線は「リングロード」と呼ばれ、約1,300km、車でぐるりと回るだけならば一週間くらいだ。今回はその南東の一部と北側約400kmの距離にある第二の都市アークレイリ(Akureyri)との間を往復、寄り道を繰り返しながら約1,500kmを約2週間かけてのドライブ旅行だった。その道中には、樹木のほとんど生育しない黒い溶岩台地の中にも関わらず集落が点在していた。そして、氷河を頂く山々の麓には植生された牧草に馬や羊が群れていたり、小さな入り江には漁船があったりと、人々のさまざまな営みを感じることができた。そんなアイスランドの魅力を今回は2回にわたり紹介する。

ドライブルート

首都レイキャヴィーク (Reykjavik)−グトルフォス(Gullfoss)−ゲイシール(Geysir)−シンクヴェトリル国立公園(Þingvellir National Park)−ヘトリスヘイジ地熱発電所(Hellisheiði Power Station)−レイキャヴィーク(Reykjavik)−ブルーラグーン(Blue Lagoon)

全行程 約500km

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レイキャヴィーク(Reykjavik)

チョルトニン湖

チョルトニン湖

首都としては世界最北端にある、人口約12万人の小さな町だ。2017年、港としてレイキャヴィーク港開港100年を迎えた。9世紀にはノルウェーから来たヴァイキングが定住地としたが、町としての歴史は意外に浅い。港のある海岸通りから北へ少し入ったところにはチョルトニン湖(Tjörnin)があり、湖を中心とした公園のまわりには国会議事堂や市庁舎が建つ。市庁舎の中にはアイスランド島の地理模型があり、島の全容がわかりやすく展示されている。また観光案内所もあり、日本語担当者もいる。この町の中心部から東へ緩やかな高台の上には三角形のパイプオルガンをイメージしたような高さ約75mのハットルグリムス教会(Hallgrimskirkja)が聳えている。この教会は、1945年から約40年の歳月をかけて作られたものである。エレベーターで上れる教会の展望台からは町全体を見渡すことができる。

  • チョルトニン湖は町の真ん中にある

    チョルトニン湖は町の真ん中にある

  • 観光案内所内のアイスランド全土のジオラマ

    観光案内所内のアイスランド全土のジオラマ

教会の前に立つ銅像は1000年ごろにヨーロッパからアメリカ大陸にはじめて渡ったとされるレイブル・エイリクソンの像で、エイリクソンが真のアメリカ大陸発見者であることを認めたアメリカ合衆国が、世界初の民主議会といわれるアルシング発祥1,000年を記念して1930年に寄贈したものである。
また、教会を中心に古い木造でカラフルな建物が並んでおり、この一帯は、19〜20世紀初期のもので、この町の発祥地でもある。現在はカフェ、ブティック、レストランをはじめ、特産の羊毛で作られた暖かそうな敷物から帽子、セーターなどの観光客相手の店として改築修理されている。その一画の住宅の壁や塀には開港100年を記念して20世紀初頭のそれぞれの家や家族、家並など当時の生活を知ることができる写真が飾られていた。
チョルトニン湖周辺の古い町を外れると、高速道路のような専用道路が東西南北縦横に走る広々とした開発地域だ。そこは広い郊外へとオフィスや民家が広がっている。人口は少ないが、町の面積は大きい。

  • ハットルグリムス教会

    ハットルグリムス教会

  • エリクソン像。コロンブスより遙か前に北米大陸へ渡った

    エリクソン像。
    コロンブスより遙か前に北米大陸へ渡った

  • 教会自慢のパイプオルガン

    教会自慢のパイプオルガン

  • ハットルグリムス教会への坂道

    ハットルグリムス教会への坂道

  • 坂道には土産物屋が多い

    坂道には土産物屋が多い

  • ノルウェー風の土産店

    ノルウェー風の土産店

  • レイキャヴィークの旧市街

    レイキャヴィークの旧市街

  • 旧市街には洒落た住宅が多い

    旧市街には洒落た住宅が多い

  • レストラン

    レストラン

  • 家の歴史を写真で展示

    家の歴史を写真で展示

  • レイキャヴィークの歩行者用信号。口を結んで赤。にっこり笑って青。

    レイキャヴィークの歩行者用信号。口を結んで赤。にっこり笑って青。

国際空港から街の中心部まで約45km、バス以外の公共交通機関はない。その上、郊外や観光地へはその本数も少なく、個人旅行者の多くは現地ツアーに参加するか、自らレンタカーのハンドルを握るしかない。ただし、街の観光スポットやショッピングエリアは中心部に集中しているので、街観光だけの人は1日あれば徒歩で回ることができる。

ゴールデンサークル(Golden Circle)

レイキャヴィークの東側に広がる地熱地帯。地熱発電所や間欠泉、滝、溶岩がそのままむき出された大地など、個性的な見所がある地域。観光スポットが集まり、首都から日帰りで行くことができるエリアだ。大きく分けて5つの見所がある。

ヘトリスヘイジ(Hellisheiði)地熱発電所

アイスランドは、北アメリカプレートとユーラシアプレートが東西に離れていく場所に位置する国。こうしたプレートの境界にあたるところは日本同様火山が多い。1973年の石油危機でアイスランドは地熱開発を本格化し、現在は電力の3割以上を地熱発電でまかない、残りの7割は水力発電という完全自然エネルギーによる電力供給を実現しており、こうして世界一コストが安く安定供給される電力を用いて、大量の電気を消費するアルミニウムの精錬産業などで外貨を得ている。
ヘトリスヘイジ地熱発電所は、首都レイキャヴィークからリングロードと呼ばれる国道1号線を約30km移動したところにあるアイスランド最大の地熱発電所だ。内部の模様を知ることができる展示物やガイドつきツアーも行われている。この発電所を動かしているタービンなどは日本製で、この国の地熱発電技術を支えている。またこの発電所でできた熱水を送るパイプは断熱性に優れ、約30km離れたレイキャヴィークまで送っても2℃しか下がらないという。

  • レイキャヴィーク郊外から30km先の地熱発電所の蒸気

    レイキャヴィーク郊外から30km先の地熱発電所の蒸気

  • 1号線近くにヘトリスヘイジ地熱発電所はある

    1号線近くにヘトリスヘイジ地熱発電所はある

  • 発電所入り口。無料で入れる

    発電所入り口。無料で入れる

  • 室内から発電施設も見える

    室内から発電施設も見える

  • ヘトリスヘイジ近くの台地で日没直後のオーロラ

    ヘトリスヘイジ近くの台地で日没直後のオーロラ

  • アイスランド・オーロラ

    アイスランド・オーロラ

グトルフォス(Gullfoss)

滝の間近に柵のない歩道が続く

滝の間近に柵のない歩道が続く

地熱発電所からさらに国道1号線を約40km、名もない分岐点でルート30号線を北へ約60km移動すると到着する。グトルフォスはアイスランド語で「黄金の滝」という意味。道路沿いからも眺められる滝は最大幅70m、落差30m、水量毎秒約140トン、春から夏は雪どけ水を集め毎秒2,000トンもの水が落ち続ける大瀑布だ。一体どこからこれだけの水量が湧き出るのか不思議に思ったが、ここは氷河の島でもあり、内陸部は標高こそ1,000m前後と高くはないが、万年雪を頂いた山岳地帯であることを思い出した。しぶきや雨でぬれた岩だらけの歩道には、柵もなく、自己責任の注意書きの小さな立て札が一つあるだけで、近くで眺める滝の迫力に足もすくむ。

  • 水量の多さに、スケールの大きさを感じる。

    水量の多さに、スケールの大きさを感じる。

  • 水源の元となる氷河をまとった山が見える。

    水源の元となる氷河をまとった山が見える。

ゲイシール(Geysir)

ストロックル間欠泉。吹き出した瞬間。人はすぐ側まで行ける

ストロックル間欠泉。吹き出した瞬間。人はすぐ側まで行ける

グトルフォスより6km東に位置する間欠泉。ゲイシールとはアイスランド語で「間欠泉」という意味で特定の間欠泉を示す名前ではなく、周辺には多数の間欠泉がある。グレートゲイシール(The Great Geysir)と呼ばれる最大の間欠泉は、1930年代に1度活動が収まっていたが、2000年の地震により再び活動を始め、その際は突然高さ122mまで噴出したという。現在でも不定期ではあるが熱水を吹き上げており、まさに自然の驚異である。
その隣にあるストロックル間欠泉(Strokkur)は現在も約10分ごとに20m〜40mの高さまで噴出している。噴出口が覗けるほど近くまで見物客が集まっているが、噴き出す湯は熱湯だ。進入禁止の柵もない。あくまでも自己責任ということなので注意したい。
青い大きなビー玉のように湯が盛り上がったかと思うと、轟音と共に天高く湯煙が舞い上がり、見守る人々は一斉にカメラのシャッターを押していた。

  • 高さは30〜40m。約10分間隔で噴出する

    高さは30〜40m。約10分間隔で噴出する

  • ゲイシール間欠泉の表示。時に100mを超す噴気が突如、噴出する

    ゲイシール間欠泉の表示。
    時に100mを超す噴気が突如、噴出する

ブルーラグーン(BlueLagoon)

溶岩台地にブルーラグーンの表示

溶岩台地にブルーラグーンの表示

世界最大の露天温泉で、首都レイキャヴィークの西南約40kmに位置する。アイスランドの玄関口のケプラヴィーク国際空港の近くにあり、空港からブルーラグーンへの往復バスも出ている。この広大な温泉湖は、この国最大の人気スポットともいわれている。しかし、天然に湧いたものではなく地下2,000mから汲み上げる地熱海水であり、(現在、日本の温泉も自然噴出は少なく掘削されている)地熱発電所からでた地下熱水が溜まったところを整備して温泉として一般公開したもの。いわば地熱発電の副産物だ。

ブルーラグーンの白い泥は、ミネラルを大量に含みアトピーや湿疹などの皮膚病に効く。また「シリカ(ケイ素水)」が含まれ美容効果もあるとか。顔などに塗るばかりか、全身泥浴を楽しむ人も多い。温泉サイドには飲み物などを売る店もあり、多くの人はビール片手に湯浴みを楽しんでいる。冬はオーロラを眺めながらの入浴も楽しめるそうだが、湯の温度が27〜38℃と低く、オーロラが出現する冬季は、熱い湯に馴染んだ日本人には寒すぎる。源泉は240℃もあるというのに、温度調節はしておらず、日本人感覚の温泉とは異なる。入浴の際は水着を着用する。
ここ2〜3年は急激な観光客の増加で予約が必要。とくに夏は予約もとれないほど混む場合もあるという。
泉質は硫酸塩。塩化物泉で湯は青白く濁っており、この乳白色のお湯が太陽光に当たることにより、美しいブルーに見えるようになる。

  • ビールを飲みながら遊ぶ。右は飲料売店

    ビールを飲みながら遊ぶ。右は飲料売店

  • 日本人には寒すぎるが、老若男女が楽しそうに入っていた

    日本人には寒すぎるが、老若男女が楽しそうに入っていた

  • 美容効果があると言う白い泥を塗る人たちも

    美容効果があると言う白い泥を塗る人たちも

  • 温水プールから流れ出た湯は青い湖になっていた

    温水プールから流れ出た湯は青い湖になっていた

アイスランド政府観光局
アイスランドの観光情報などが紹介されている。

取材:2017年11月

  • ※ドライブコースの情報はそれぞれの記事の取材時点のものです。