冬こそ、南福島・いわきへ(1)

最上階からの眺め。正面に見える断崖は、南台武家屋敷がある高台 福島県南東部に位置し、東に太平洋の大海原を望むいわき市は、その沖合で寒流と暖流が交わるため、夏と冬の寒暖差が少なく、1年を通じて穏やかな気候に恵まれている。また、12月〜3月ごろにかけて、あんこうが旬を迎え、あんこう鍋やあん肝などを堪能できる。大気が乾燥して晴れの日が多いこの季節は広々とした太平洋や海岸線の好展望も期待でき、まさに冬のドライブにうってつけのエリアなのだ。
首都圏から常磐自動車道を走り、北茨城ICで高速を下りてからは国道6号線を北上。最初に立ち寄った五浦海岸では、「五浦岬公園」「茨城大学五浦美術文化研究所(六角堂、天心邸など)」「茨城県天心記念五浦美術館」を訪ねた。いわき市に入り、古くから和歌などに詠まれてきた「勿来関跡」を探訪した後、一路小名浜へ。福島県内最大の港である小名浜港周辺では、環境水族館「アクアマリンふくしま」や観光物産センター「いわき・ら・ら・ミュウ」、いわきマリンタワーがそびえる「三崎公園」などを車で巡った。

ドライブルート

北茨城IC−(国道6号線など)−五浦海岸−(県道354号線、国道6号線など)−勿来−(国道6号線など)−小名浜−(国道6号線など)−いわき湯本温泉−内郷白水町−いわき湯本IC‐(磐越自動車道)−小野IC−(国道349号線、県道36号線など)−あぶくま洞

全行程 約125km、今回 約40km

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五浦岬公園

五浦岬公園の入口

五浦岬公園の入口

いわき市に入る前に立ち寄ってみたい場所があり、常磐自動車道をひとつ手前の北茨城ICで下りて、国道6号線を北へ。茨城県の北端、太平洋に突き出した五浦(いづら)海岸を目指して車を走らせた。
5つの大きな入り江(浦)が開けていることから「五浦」と呼ばれるようになったこの地は、入り組んだ断崖の海岸線と海上に突き出した無数の岩々、そしてそれらに打ち寄せる波しぶきによって、訪れる人に雄大な景色を見せてくれる。近代日本美術の発展に多大な功績を遺した岡倉天心も五浦の自然を愛し、明治39年(1906)には自らが創設した日本美術院の本拠をここに移し、愛弟子の横山大観、下村観山らとともに創作活動に精進した。

  • 園内の展望慰霊塔。東日本大震災の犠牲者の冥福と震災の津波被害を後世に伝えるために建立された

    園内の展望慰霊塔。
    東日本大震災の犠牲者の冥福と震災の津波被害を
    後世に伝えるために建立された

  • 展望慰霊塔の高さは約16m。最上部から太平洋を眺める

    展望慰霊塔の高さは約16m。最上部から太平洋を眺める

「五浦岬公園」は、五浦海岸の南の大津岬の突端にあり、園内の北側からは眼下に朱色の六角堂と海岸に打ち寄せる波しぶき、緑の松林が織りなす絵画のような絶景を望むことができる。名勝・五浦海岸のベストビュースポットと言っても過言ではないだろう。また、映画『天心』の撮影時に使用された日本美術院のロケセットが残されており、風光明媚なこの地で創作活動に邁進した画家たちを偲ぶこともできる。

  • 園内の北側からは、六角堂と海岸線の景色を眼下に見下ろすことができる

    園内の北側からは六角堂と海岸線の景色を
    眼下に見下ろすことができる

  • 映画『天心』で使用された日本美術院のロケセット。月・金・土・日曜は、中に入って見学もできる

    映画『天心』で使用された日本美術院のロケセット。
    月・金・土・日曜は、中に入って見学もできる

茨城大学五浦美術文化研究所(六角堂、天心邸など)

明治36年(1903)、はじめて五浦を訪れた岡倉天心はこの地の風光に一目惚れして居住の地と定め、明治38年(1905)には住まいを新築し、太平洋に臨む岸壁の上に自らの理想を体現する六角堂を建設した。以後、大正2年(1913)に50歳で亡くなるまで、アメリカ・ボストン美術館での仕事から日本に帰国すると、ここ五浦海岸で釣りと読書三昧の静穏な日々を送っていたといわれている。天心の住居跡や六角堂は、現在「茨城大学五浦美術文化研究所」が管理し、建物の周辺を見学することもできる。

  • 入口の長屋門。100年余り前の五浦の面影を今に伝える

    入口の長屋門。100年余り前の五浦の面影を今に伝える

  • 簡素だが、瀟洒な佇まいの天心邸

    簡素だが、瀟洒な佇まいの天心邸

風情ある佇まいの長屋門をくぐり、苔むした小路を進んでいくと、広々とした前庭をもつ「天心邸」が現れる。五浦に移り住んだ天心は、当初、観浦楼という古い料亭の建物を住まいとしていたが、のちにその料亭の古材を用いて新たな邸宅を建設。それがこの天心邸である。
前庭から海に向かって延びる細い道を進むと、太平洋に突き出した岸壁の突端に「六角堂」が建つ。六角堂には「杜甫(中国・唐の時代の詩人)の草堂である六角亭子の構造」「仏堂の装いとしての朱塗りの外壁と屋根上の如意宝珠」「内部の床の間と炉を備えた茶室としての役割」という3つの意図が込められており、中国・インド・日本というアジアの伝統思想がひとつの建物として表現されている。天心はここで波を眺めながら瞑想にふけったり、海に釣り糸を垂らしていたといわれている。当時の建物は残念ながら東日本大震災の津波によって流失してしまったが、平成24年(2012)に創建時の姿で再建され、今に至っている。
/入場料 300円

  • 天心がインドで執筆した『東洋の理想』の冒頭の一文「ASIA is one(亜細亜は一なり)」を刻んだ石碑

    天心がインドで執筆した『東洋の理想』の冒頭の一文
    「ASIA is one(亜細亜は一なり)」を刻んだ石碑

  • 六角堂。「観瀾亭」という名もあり、その意味は「波を見るためのあずまや」

    六角堂。
    「観瀾亭」という名もあり、その意味は「波を見るためのあずまや」

  • 天心記念館の内部

    天心記念館の内部

  • 長屋門の道路をはさんだ斜向かいには、天心の遺骨が分骨、埋葬された墓があった

    長屋門の道路をはさんだ斜向かいには、
    天心の遺骨が分骨、埋葬された墓があった

茨城県天心記念五浦美術館

美術館の外観

美術館の外観

「茨城県天心記念五浦美術館」は、五浦海岸の北方、太平洋に面した高台に建つ。館内には、年間を通じてさまざまな企画展を開催する3つの展示室のほか、「岡倉天心記念室」を常設。同記念室では、書簡や遺品などを通じて岡倉天心の業績を時系列でわかりやすく紹介しているので、六角堂などを訪れる前にまずはここで天心の生涯について理解を深めておくのもいいだろう。また、横山大観、下村観山、菱田春草、木村武山ら天心の指導を受けた五浦ゆかりの画家たちの作品を展示。作品は約2ヶ月に1回、入れ替えを行っている。
/入館料 岡倉天心記念館のみ190円 企画展は企画ごとに設定

  • 岡倉天心記念室の入口。天心のレリーフが飾られている

    岡倉天心記念室の入口。天心のレリーフが飾られている

  • 美術館裏手の広場からは太平洋を一望に見渡せる

    美術館裏手の広場からは太平洋を一望に見渡せる

勿来関跡

勿来関跡へは、国道6号線の勿来の関跡三差路交差点を左折する

勿来関跡へは、国道6号線の勿来の関跡三差路交差点を左折する

勿来関(なこそのせき)とは古来、常陸国と陸奥国との国境にあった関所のことで、羽前の念珠関、陸奥の白河関とともに奥羽三関のひとつとされている。平安時代末期、陸奥守・鎮守府将軍であった源義家が詠んだ「吹風をなこその関とおもえども……」という和歌をはじめ、紀貫之、小野小町、和泉式部、西行法師など著名な歌人たちの和歌にも歌枕として登場している。
その正確な所在地はわかっていないが、茨城県と福島県の県境、国道6号線から5分ほど山あいに入ったところに「勿来関跡」の碑が遺り、周辺は現在「勿来の関公園」として整備されている。
園内の見どころのひとつは、勿来関を詠った歌人・文人たちの歌碑が石畳の小路の両側に立ち並ぶ「詩歌の古道」。その入口には、源義家の堂々たる銅像も立っていた。歌人・文人たちの作品や肖像について詳しく知りたければ、「いわき市勿来関文学歴史館」へ。館内にはほかに、旅風俗や関所、宿場にかんする資料も展示している。平安時代の代表的建築様式である寝殿造りを再現した「吹風殿」は、野点や歌会、伝統芸能の発表などに利用できる体験学習施設で、敷地内の見学もできる。建物や庭園内を歩けば、平安の風雅な雰囲気を追体験できるのではないだろうか。

  • 詩歌の古道の入口。門の右手には、源義家の銅像が建つ

    詩歌の古道の入口。門の右手には、源義家の銅像が建つ

  • 源義家の和歌「吹風を なこその関と おもへども 道もせにちる 山桜かな」の歌碑

    源義家の和歌
    「吹風を なこその関と おもへども 道もせにちる 山桜かな」
    の歌碑

  • 風情ある詩歌の古道。右の歌碑は、和泉式部の和歌。「なこそとは 誰かは云ひし いはねとも 心にすうる 関とこそみれ」

    風情ある詩歌の古道。右の歌碑は、和泉式部の和歌。
    「なこそとは 誰かは云ひし いはねとも 心にすうる 関とこそみれ」

  • 勿来関文学歴史館

    勿来関文学歴史館

  • 文学歴史館前のガラス壁には小野小町の歌が。「見るめかる あまのゆきゝの 湊ぢに なこその関も わがすゑなくに」

    文学歴史館前のガラス壁には小野小町の歌が。
    「見るめかる あまのゆきゝの 湊ぢに なこその関も わがすゑなくに」

  • 平安時代の寝殿造りを再現した体験学習施設「吹風殿」

    平安時代の寝殿造りを再現した体験学習施設「吹風殿」

アクアマリンふくしま

国道6号線に戻ってからは、一路小名浜へ。小名浜港に着いてまず向かったのは、太平洋に面した2号ふ頭に建つ水族館「アクアマリンふくしま」だ。
同館のテーマは福島県沖合に現れる潮目≠ナあり、大水槽「潮目の海」では日本の南と北からそれぞれ流れてくる黒潮(暖流)と親潮(寒流)に生息する魚たち――黒潮はカツオ、キハダ、マイワシなど。親潮はクロソイ、エゾメバル、オオカミウオなど――を観察できる。また、黒潮の源流域である熱帯アジアや、親潮の源流オホーツク海の自然を再現し、そこに生きる生き物や植物も展示していた。

  • アクアマリンふくしまの外観。ガラスを多用したユニークなフォルム

    アクアマリンふくしまの外観。ガラスを多用したユニークなフォルム

  • 海中における生命の進化を紹介する展示室。さまざまな化石が展示されていた

    海中における生命の進化を紹介する展示室。
    さまざまな化石が展示されていた

  • カラフルなサンゴ礁の海を再現。真ん中のエビは、スザクサラサエビ

    カラフルなサンゴ礁の海を再現。真ん中のエビは、スザクサラサエビ

  • こちらはサンゴ礁の海の魚たち。メガネモチノウオ、ニセフウライチョウチョウウオ、ソウシハギなど

    こちらはサンゴ礁の海の魚たち。
    メガネモチノウオ、ニセフウライチョウチョウウオ、ソウシハギなど

  • 潮目の大水槽の親潮側

    潮目の大水槽の親潮側

  • 潮目をあらわす三角形のトンネル。向かって右が黒潮水槽で、左が親潮水槽

    潮目をあらわす三角形のトンネル。
    向かって右が黒潮水槽で、左が親潮水槽

  • 潮目の大水槽の前には、なんと寿司屋が。訪れたときは、残念ながら営業時間外だった

    潮目の大水槽の前には、なんと寿司屋が。
    訪れたときは、残念ながら営業時間外だった

  • 親潮アイスボックスで飼育されていた、ケムシカジカ。食べると美味しいらしい

    親潮アイスボックスで飼育されていた、ケムシカジカ。
    食べると美味しいらしい

体験学習も重視しており、屋外には磯・干潟・砂浜という海辺の自然を再現した「蛇の目ビーチ」が整備され、砂浜や水の中で生き物と触れ合いながら遊ぶことができる。隣接する「BIOBIO(ビオビオ)かっぱの里」は昔懐かしい里地の水辺環境を再現した淡水ビオトープで、小川に入ったりしながら、メダカやタナゴ、カエルなど水辺の生き物を間近に観察することができる。
/入館料 1,800円

  • 海辺の自然を再現した、蛇の目ビーチ。はだしで砂浜や水の中で遊ぶことができる

    海辺の自然を再現した、蛇の目ビーチ。
    はだしで砂浜や水の中で遊ぶことができる

  • 全面ガラス張りの展望室。太平洋や小名浜港の展望がすばらしかった!

    全面ガラス張りの展望室。太平洋や小名浜港の展望がすばらしかった!

  • インドネシアシーラカンスの標本は期間限定展示

    インドネシアシーラカンスの標本は期間限定展示

  • こちらのアフリカシーラカンスは常設。2種のシーラカンス標本を同時に見られるのは貴重なことらしい

    こちらのアフリカシーラカンスは常設。
    2種のシーラカンス標本を同時に見られるのは貴重なことらしい

いわき・ら・ら・ミュウ

いわき・ら・ら・ミュウの入口

いわき・ら・ら・ミュウの入口

1号ふ頭にある観光物産センター「いわき・ら・ら・ミュウ」は、小名浜港エリアで買い物や食事をするのに便利なスポット。
1階正面には新鮮な魚介類を販売する店舗がずらりと並び、店員との会話を楽しみながら競り市気分で買い物ができる。冬が旬のあんこう鍋セットとあん肝も売っていたので、自宅へのおみやげ用に購入した。レストランゾーンでは、寿司、どんぶり、煮込みなど、海の幸を使った料理を提供するお店が軒を連ね、特に2階フロアの店舗では太平洋の絶景を眺めながら食事を楽しむことができる。

  • 魚市場のような雰囲気のおさかなゾーン

    魚市場のような雰囲気のおさかなゾーン

  • どんぶり、刺身、煮込みなど魚料理を提供するレストランが軒を連ねる

    どんぶり、刺身、煮込みなど魚料理を提供する
    レストランが軒を連ねる

小名浜港周辺には海鮮料理やあんこう鍋を提供する店が点在しており、事前に調べておいて、ここぞという店で食事をするのもいいだろう。

  • 味噌仕立てのあんこう鍋。骨以外は捨てるところがないといわれ、皮やえら、ひれ、卵巣(ぬの)なども一緒に煮込んで食べるす

    味噌仕立てのあんこう鍋。骨以外は捨てるところがないといわれ、
    皮やえら、ひれ、卵巣(ぬの)なども一緒に煮込んで食べる

三崎公園

「三崎公園」は、小名浜港の東端、太平洋に突き出た岬の海抜46mの台地に広がる広大な公園。総面積70万uの敷地内には、緑の芝生を敷きつめた芝生広場、さまざまな遊具があるわんぱく広場、バーベキューができるピクニックガーデン、野外音楽堂、緑樹で造った巨大な迷路広場などがあり、思い思いの楽しみ方で過ごすことができる。
この公園のシンボルともいえるのが、高さ59.99mの「いわきマリンタワー」。屋上のスカイデッキからは360度の大パノラマが広がり、太平洋や小名浜港をぐるりと一望にすることができる。もうひとつの見どころは、園内の南の端にある「潮見台」。海に突き出した展望台で、海を泳ぐ魚たちを上からのぞき見ることもできる。
/いわきマリンタワー入場料 320円

  • 広々とした三崎公園の敷地。正面にいわきマリンタワーが見える

    広々とした三崎公園の敷地。正面にいわきマリンタワーが見える

  • 近くで見ると、とにかく大きい。高さは59.99m

    近くで見ると、とにかく大きい。高さは59.99m

  • マリンタワーの屋上スカイデッキからの眺め

    マリンタワーの屋上スカイデッキからの眺め

  • 海に突き出した潮見台

    海に突き出した潮見台

ニッポンレンタカーの車種・料金

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福島県内のニッポンレンタカー営業所

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いわき市観光情報サイト
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記事・写真:谷山宏典 取材:2017年12月

  • ※ドライブコースの情報はそれぞれの記事の取材時点のものです。