ハプスブルグ家の遺産とアルプスの自然(4)スロヴェニア編

ブレッド城からの展望スロヴェニアの魅力は自然であり、変化に富んだ地形と美しさだ。アルプスを挟みスイス・オーストリアの反対側で、その山塊の風景はアルプスに劣らず、さらに未開発な部分を多く残す自然の姿に心が和むところでもある。
これより辿るコースは、スロヴェニアの西、イタリアとの国境に近いルートから代表的な観光地シュコツィヤン(Škocjanske)鍾乳洞や、ポストイナ(Postojna)鍾乳洞、首都リュブリャーナ(Ljubljana)を経由して絵のように美しいというブレッド湖(Blejsko-jezero)をはじめ、この国の自然を堪能しながらドライブは続く。

コース

コバリド(Kobariška)−ノヴァ・ゴリツァ(NovaGorica)−シュコツィヤン(Škocjanske)−ポストイナ(Postojna)−(高速道路A4)−リュブリャーナ(Ljubljana)−(高速道路A2)−ブレッド(Bled)−ボーヒン(Bohinjsko)−ブレッド

行程 約360km

赤いドライブルート付近のマーカーをクリックするとその項目にジャンプします

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ノヴァ・ゴリツァ(NovaGorica)

ノヴァ・ゴリツァ駅と広場

ノヴァ・ゴリツァ駅と広場

コバリドからイタリアとの国境線に沿うように続くソチャ川(Soĉa)に沿って、穏やかな丘陵地帯に町や村が点在するのどかな風景の中を走ること約40km。やがて川幅も広くなるころ、国境の町のノヴァ・ゴリツァに着く。
ここは第二次世界大戦後の1947年にパリ講和条約が結ばれ、東西冷戦とともに、町は2つに分断された。町の中央を走る鉄道で、その西がイタリア領のゴリツァ、東がユーゴスラヴィア領のノヴァ・ゴリツァとなった。生活圏が分断された町は、ドイツのベルリンの壁同様、国境線が引かれ、人々の往来はできなくなった。
その後のソ連崩壊から徐々に西側との人と物流も増したが、この壁がとり払われたのは、スロヴェニアの独立(1991)を経て、EUに加盟(2004)した後の、2007年のことである。2つの町が自由に往来できるようになったのは、まだつい最近のことなのだ。

  • ノヴァ・ゴリツァ駅のホーム

    ノヴァ・ゴリツァ駅のホーム

  • 広場の中央にかつての国境線のプレート

    広場の中央に
    かつての国境線のプレート

鉄道駅構内には、鉄のカーテン時代から現在までの歴史を展示する小さな博物館があり、広場前には分断当時の壁の跡や、それらを撤廃した記念碑などを残している。
このあたりは、すでにローマ時代からの軍陣跡などがあり、現在のオーストリアやドイツに向かって北上する道も多くあったところ。古代から要衝の町でもあったこの町にも多くの歴史がある。

ゴリツィア城からスロヴェニア側市街

ゴリツィア城からスロヴェニア側市街

とくにフランス王国に君臨したブルボン朝最後の国王、シャルル10世などの墓があるコスタニエヴィツァ(Kostanjeviški)修道院や16世紀初頭ヴァネツィァによって建てられたゴリツィア城がある。
またノヴァ・ゴリツァの丘の上には、16世紀の建造物で、典型的なルネサンス様式のほぼ正方形の邸宅で四隅に円形の塔が建つクロムベルグ(Kromberk)城もある。

  • ゴリツィア城の門

    ゴリツィア城の門

  • 城外にある博物館

    城外にある博物館

ポストイナ洞窟出入り口

ポストイナ洞窟出入り口

スロヴェニアの洞窟と鍾乳洞

国内には約1,200もの鍾乳洞や洞窟があり、その内、観光用に整備されているのは23ヶ所だ。
中でもユネスコの世界自然遺産に登録されたシュコツィヤン(Škocjanske)の石灰石洞窟とヨーロッパ最大の鍾乳洞があるポストイナ(Postojna)は、ぜひ訪れたいところである。

  • 一巡りするとケーブルカーで谷の上へ

    一巡りするとケーブルカーで谷の上へ

    ユネスコの世界自然遺産の標示

    ユネスコの世界自然遺産の標示

  • 洞窟を上から覗く

    洞窟を上から覗く

シュコツィヤン洞窟群(Škocjanskejame)

スロヴェニア南部、ノヴァ・ゴリツァから田舎道を辿りながら約35km。イタリアのトリエステ(Trieste)へと続く高速道路の分岐点近くに位置する。洞窟内には「沈黙の洞窟」、「ドリーネ」と呼ばれる地底湖などがある。深さ約200m、長さ約6kmの地下川洞窟、滝などもある。

  • シュコツィアン洞窟のチケット売り場

    シュコツィアン洞窟のチケット売り場

  • 窟へはかなり離れたゲートから谷へと下る

    窟へはかなり離れたゲートから谷へと下る

見学はツアーのみでいくつかのコースがあって、長いツアーは所要時間1時間30分、約3kmの行程とか。ビジターセンターで、Aコースのツアーを頼むと、まだシーズン前で観光客も少なかったからか「各自で行くように」と言われ、洞窟入り口への道を教えてくれた。

  • 谷底の岩壁に橋が架かり洞窟へと向かう

    谷底の岩壁に橋が架かり洞窟へと向かう

  • 歩道は巨大な洞窟の中。闇の底は地底湖だった

    歩道は巨大な洞窟の中。闇の底は地底湖だった

地底湖が出現。歩道が淡い光で照らされる

地底湖が出現。歩道が淡い光で照らされる

洞窟入り口まで徒歩で約10分、さらに5分下った渓谷の中に巨大な岩が口を開け、洞窟へと誘う。
入ると、突然巨大な岩穴とその地底には満々と水をたたえた大渓谷が広がる。その渓谷には吊り橋があり、神秘な地底湖をみながら渡る橋はスリル満点だ。

  • 地底湖と鍾乳石の洞窟

    地底湖と鍾乳石の洞窟

  • 巨大洞窟を流れる川は、時に滝となる

    巨大洞窟を流れる川は、時に滝となる

古代人が儀式を行ったという梯形の岩と壁画

古代人が儀式を行ったという梯形の岩と壁画

大洞窟の外は深い渓谷沿いに細い道のアップダウンを繰り返しながら、何段にも流れ落ちる滝や小さな洞窟を巡る。この洞窟群一帯は、1万年以上前から人が住んでいたことを物語る考古学的出土品が多い。所要時間は約1時間だった。

ポストイナ(Postojna)鍾乳洞

長さ約27kmというヨーロッパ最大の鍾乳洞は、シュコツィヤン洞窟群より東に約30kmのところにある。スロヴェニア有数の観光地で、世界各地から年間50万人もの観光客が訪れるという。
鍾乳洞見学はガイド付きツアーで約1時間15分。洞内約2kmをトロッコで行く。手足や頭がぶつかりそうな狭い坑道を、小さな黄色いトロッコ一回でツアー客約30人を運ぶ。それがかなりのスピードで走るということが、一つの目玉で観光客を喜ばす。大柄な人にはかなり危険のようにも思えるが、一言の注意もないから驚く。

  • トロッコはスリリングだ

    トロッコはスリリングだ

  • 様々な鍾乳石が続く

    様々な鍾乳石が続く

鍾乳洞内部

鍾乳洞内部

トロッコの終点から約2km続く鍾乳洞をガイドの解説を聞きながら歩く。
鍾乳石にはその形や微妙に異なる色などからラクダ、カメ、オウムなどと名称をつけるところなどはどこの鍾乳洞も同じだが、真っ白で細く繊細な氷柱のような形状の鍾乳石を「スパゲティ」と呼ぶところは、やはりイタリアに近いお国柄だ。ツアーの最後は様々な形をした鍾乳石のオブジェと巨大な洞窟に、自然の美と驚異を満喫しながら終わる。

白く目もない洞窟魚(洞内のビデオから)

白く目もない洞窟魚(洞内のビデオから)

出口近くには、洞窟内に生息する生物を展示した博物館もある。

洞窟城

洞窟城

プレドヤムスキ城(Predjamskigrad)

ポストイナ鍾乳洞から北西へ約10km離れたところ、田園風景が広がるその先に高さ123mの断崖絶壁にへばりつくように建つ洞窟城がある。
城が造られたのは12世紀ころのこと。現在の建物は16世紀のものだという。絶壁の岩の一部を繰り抜いて造られた城の奥は洞窟で、夏期には洞窟探検のツアーも行われている。全長13kmもあるが、見学ができるのは600mの区間だけ。ほぼ自然のままの狭い道、洞窟内に約5,000匹いるともいわれるコウモリにも出合うことがあるという。

  • 洞窟城の入り口

    洞窟城の入り口

  • 内部は橋でつながったりしている

    内部は橋でつながったりしている

  • 城内から見る村

    城内から見る村

  • 城の内部

    城の内部

建物の裏側は洞窟が続く

建物の裏側は洞窟が続く

城主は盗賊騎士として知られたエラムズ・プレドヤムスキで、隊商や金持ちから奪った金品を、この無敵の洞窟城に蓄え、貧しい人々に分け与えたという伝説がある。内部には16〜19世紀の家具や絵画の他、当時の生活を再現した人形などが展示されている。

ブレッドの街

ブレッドの街

ブレッド(Bled)

首都リュブリャーナ(Ljubljana)から高速道路A2で北へ約30km、ブレッドへのICを出てから約6km、湖畔の町ブレッドへ着く。
ここには「おとぎ話の絵のように美しい」あるいは「アルプスの瞳」とも表現されるスロヴェニアの代表的な観光名所、ブレッド湖(Blejskojezero)がある。澄み切った湖面にはユリアンアルプスの最高峰、トリグラフ山(2,864m)が映し出される氷河湖だ。湖の中央の小島には、バロック様式の教会が建ち、湖畔にはブレッド城と教会の白い塔が建つ。

オーストリアとイタリアの国境も近く、17世紀からリゾート地として人気を集め、19世紀に鉄道が建設されると、近代リゾート地として発展、今ではたくさんのホテル、民宿、キャンプ場などの施設が整い、夏にはボート競技のレガッタ、冬にはスキーのクロスカントリーなどが盛んなところ。
周囲6kmの湖畔は、遊歩道も完備され、ホテルのカフェやベンチで休憩を取りながら、歩いて約3時間で一周することができるが、湖畔を巡る観光車両でも回ることができる。

  • ブレッド湖畔

    ブレッド湖畔

  • 湖を巡る観光車両

    湖を巡る観光車両

湖の孤島。聖母被昇天教会

湖の孤島。聖母被昇天教会

聖母被昇天教会(Marijnegavnebovzetja)

ブレッド湖に浮かぶ教会で、建立は8〜9世紀に遡るそうだが、現在の白い塔を持つバロック様式の教会は17世紀に建築されたもの。島には乗り合いボートで約15分。島には30分滞在する。
教会内には聖母マリア像とその両脇には11世紀のブレッドの領主ヘンリック2世と、その妻クニグンダの肖像が飾られている。1534年に造られたという鐘楼の鐘は、鳴らすと願いが叶うという。
伝説によると、ある婦人が小さな鐘を湖中に投げ、亡き夫の蘇生を願ったという。しかし願いは叶わず、尼となり修道院で一生を終えた。その話を聞いたローマ教皇は、人々の奇跡への願いを永遠に響かせるため、鐘を寄贈したという。ロマンチックな伝説は、湖の美しさを一層際立たせている。

ブレッド城からの展望

ブレッド城からの展望

ブレッド城(Blejskigrad)

湖畔より高さ約100mの断崖の上に建つ城。城への登り坂は急だが、その甲斐は十分にある。ブレッド湖とその周辺が一望できるからだ。
ロマネクス様式の壁とゴシック様式の棟の邸宅や礼拝堂が建つ城内は、今は青銅器時代からブレッドの歴史や中世、またナポレオン統治時代の刀剣、銃器、家具などが展示された博物館の他、一部はレストランとなっている。

  • 城内では地元著名人のトークショーをやっていた

    城内では地元著名人のトークショーをやっていた

  • ブレッド湖観光は人力のボート

    ブレッド湖観光は人力のボート

  • 湖岸から見上げるブレッド城

    湖岸から見上げるブレッド城

  • ブレッド湖はレガッタでも知られる

    ブレッド湖はレガッタでも知られる

ボーヒン湖(Bohinjskojezero)

ブレッドから南西に約30km、ユリアンアルプスの切り立った山々に囲まれた澄んだエメラルドグリーンの湖。ブレッド湖の約3倍の大きさがあり湖水には泳ぐ魚の群れや水鳥の姿も見られる。これよりユリアンアルプスへの登山やハイキングの拠点でもある。緑に覆われた夏の湖畔もよいが、樹木の色づく秋は格別とか。周囲は建築が制限されているため昔ながらの田舎風景で、樹木の中に遠慮がちに点在する小さなレストランやカフェもまた、湖畔散策の人々の魅力の場でもある。
ここからのトレッキングコースでもあるサヴィツア滝まで出かけてみた。
湖に注ぐ全長3.5kmのサヴィツア川が流れ、その源流のコマルチャ岸壁の中腹に流れ落ちる滝で、落差71mだという。滝壺へは2つの滝が合流するので、滝がUの字を描いているように見え圧巻である。

  • ボーヒン湖畔の教会

    ボーヒン湖畔の教会

  • サヴィツア滝

    サヴィツア滝

気軽な気持ちで出かけたが、急な山道を登ること45分。時間と体力に自信のない人は、無理をしないこと。また湖の約1,000m上の山にはスキー場があり、ロープウェイで結ばれている。なだらかな山頂からユリアンアルプスの山並みが一望できる。

  • ボーヒン湖からロープウェイで山上へ

    ボーヒン湖からロープウェイで山上へ

  • ボーヒン湖畔

    ボーヒン湖畔

スロヴェニア政府観光局
スロヴェニアに関する観光情報が提供されている。

取材:2014年6月

  • ※ドライブコースの情報はそれぞれの記事の取材時点のものです。