WRC後半戦に入る
ラリージャパン(9月30日〜10月2日)はもうすぐ

ドライブライン

スバル・インプレッサのペター・ソルベルグ(ノルウェー)がラリージャパンに向けて、昨年の勢いを取り戻すか―。2005年世界ラリー選手権(WRC)は、アルゼンチン・ラリーから後半戦に入った。セバスチャン・ローブ(フランス、シトロエン・クサラ)が乗りに乗り、前半を首位で折り返し、勢いに乗ってアルゼンチンも制した。
WRC史上初の6連勝、シーズン7勝の大記録を樹立している。スバル陣営は「ペターを優勝させるために…」と不屈の闘志で後半を戦う。


WRC新記録 6連勝、シーズン7勝のローブ
WRC新記録 6連勝、シーズン7勝のローブ
真冬のアルゼンチン。マイナス4度の中の観客
真冬のアルゼンチン。マイナス4度の中の観客

ドライブライン

高い気温と速度の上がらない山岳地帯の悪路―。地中海沿岸でのラフロード4連戦を終わって、WRCは南半球のアルゼンチン、さらに北のフィンランドと、めまぐるしく開催地を移動する。
年間6戦。ドライバーもチームも休む間がない。それはまた、ちょっとリズムを崩すと、立ち直る間もなく次の戦いに突入するということになる。

真冬のモンテカルロで始まった今シーズンは、緒戦でソルベルグとグロンホルムがクラッシュ。ローブが勝つ幕開けだった。しかし、雪と氷のスウェーデンで優勝したソルベルグは、続くメキシコのダートも制し2連勝。勢いに乗った。
「今シーズンもソルベルグとローブの戦い」とラリーを追っている人たちは思った。めきめきと力をつけてきているローブの突進を、ソルベルグは2戦にわたってストップし、昨年ローブに奪われたチャンピオンの座を奪い返す意気込みだった。

ソルベルグのスバル
ソルベルグのスバル
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グロンホルムは勢いを増してきた
グロンホルムは勢いを増してきた
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様子が変わったのはニュージーランド(第4戦)からだった。ソルベルグは“速いダートのトップ引き”という不利なスターと順位となった。ポイントリーダーとして避けられない規則だ。トップ走行は最初に走って、路面の砂利や砂を掃き飛ばすことから道路掃除人と言われる。ソルベルグはここで3位だった。この時点では「こういうこともある」で余裕もあった。勝ったローブも2勝としたが、ポイント争いではソルベルグ・16点、ローブ・15点。ともにリタイヤ1度で激しい戦いとなっていた。 ラリーは地中海シリーズに入った。悪名高い高温と悪路のグラベル4連戦だ。最初のサルディニアは、ローブに続き2位でその差は1点。逆転されたとは言っても、状況はほとんど変わらなかった。それが一転したのはキプロスだった。ソルベルグのスバルにまさかのトラブル発生。初日のSS6でエンジンストップ。電気系統の問題だった。このゼロ点は大きかった。

ガルデマイスターはフォード・フォーカスで頑張る
ガルデマイスターはフォード・フォーカスで頑張る
スバルの新人、アトキンソンも次第にWRCに慣れてきた
スバルの新人、アトキンソンも
次第にWRCに慣れてきた


トルコは2位で追走は続いたが、折り返し点となるアクロポリス(ギリシャ)でのポイントゼロが痛い。ソルベルグとスバルにとっては悪夢のような出来事だった。アテネのオリンピックスタジアムでのスーパースペシャルを終わって車両重量を計測した。
「最低重量を下回る」の計量結果。事前の車検では問題なかった。それでは、とラミアのサービスパークへスバルの3台、三菱の1台をFIAが“封印”する形で運び、3度目の計量。驚いたことに、3度計って3度とも重量が違った。
FIAとラリースチュワード(競技責任者)は何度も計測したが、結論はスバル3台、三菱1台に罰金を科すことに決定した。「計るたびに重量が異なる。同じ秤、同じ車で5キロも7キロも違うんです。裁定が出たのは午前3時過ぎ。出走するには罰金を承諾するしかなかった」とスバルのマニュファクチャラーズを代表する東念也さんは苦り切った表情だった。

寝られない夜を過ごしたソルベルグが、本格的なSS最初のSS2をスタートして約3キロで、溝に落ちトランクリッドやスポイラーを飛ばしてしまうダメージを受けたのは、気の毒という他はない。「今度は勝つ」という事前の自信は、出走できるかどうか、不眠と不安で明かした一夜で消し飛んでしまった。
ローブはシーズン5連勝、6度目のWRC記録タイ(1992年ディディエ・オリオール=フランス)。優位に立って前半を終わった。そしてアルゼンチンも制し、6連勝、シーズン7勝の新記録を樹立している。
ローブを追うのはソルベルグとマーカス・グロンホルム(フィンランド、プジョー307)。フォード・フォーカスのガルデマイスター(フィンランド)がそれに続く。
三菱はハリ・ロバンペラ(フィンランド)が手堅く入賞を繰り返し「確実にデータを収集し、2006年シーズンで表彰台を狙う」というMMSCの鳥井勲代表の狙い通りの状況だ。ジジ・ガリ(イタリア)もムラはあるが、次第に速さを実証できるようになった。

三菱ランサーのロバンペラは確実な走り
三菱ランサーのロバンペラは確実な走り
デュバルのシトロエン・クサラ。久々の完走(アルゼンチン)
デュバルのシトロエン・クサラ。
久々の完走(アルゼンチン)


アルゼンチンではトラブルで大きく遅れ、入賞圏外に去ったが、その後SSで3位、4位のタイムを連発。トップクラスに並ぶ“速さ”を実証している。
しかし、首位争いはローブが抜け出て、ソルベルグ、グロンホルムが追う形。「今の走りができれば勝てると思う」とローブはフィンランドへ向けて自信を高めている。しかし、ソルベルグとスバルは、これからが勝負。残るは7戦。先は長い。昨年のソルベルグはドイツ・ラリーでスリップ。戦車止めのコンクリートブロックに激突する猛烈なクラッシュ。それでも続くジャパン・ラリーでは優勝している。
「精神力は凄いです。命に関わるようなクラッシュの後、見事に勝つ。敬服しました」とSTIの桂田勝社長は言ったものだ。“ネバー・ギブアップ”。いよいよ後半戦。ラリージャパンへ向け、ソルベルグの逆襲に期待したい。

[FIA世界ラリー選手権-ドライバーズ・ポイント]ベスト10

 ◇ラリー・アルゼンチン成績
1.LoebCitroen3h 55´36"4
2.GronholmPeugeota 27"9
3.SolbergSubarua 55"3
4.GardemeisterForda 2´38"0
5.RovanperaMitsubishia 2´43"6
6.MartinPeugeota 4´22"2
7.DuvalCitroena 5´29"1

   World Championship classifications :
Drivers
1.Loeb75pts
2.Solberg48pts
3.Gronholm45pts
4.Gardemeister44pts
5.Martin42pts
6.Rovanpera20pts
Manufacturers
1.Citroen96pts
2.Peugeot90pts
3.Ford62pts
4.Subaru54pts
5.Mitsubishi41pts
6.Skoda8pts

○…ラリージャパンではWRCとともにプロダクションカー世界選手権(PCWRC)も併催される。フィンランドでは開催されないが、英国、日本、オーストラリアと連続して戦う。
日本の新井敏弘(スバル・インプレッサ)はこれまでの4戦で優勝2回、2位・1回、7位・1回と出走した全戦でポイントを稼ぎ、選手権得点30点でチャンピオン・レースの首位に立っている。
2位にはナセル・アル−アティヤ(カタール、スバル・インプレッサ)=25点、3位にはクサビエール・ポンス(スペイン、三菱ランサー)、マルコス・リガト(サンマリノ、スバル・インプレッサ)=ともに20点で続いている。
奴田原文雄(三菱ランサー)は9ポイントで8番手。
PCWRCで首位に立つスバルの新井
PCWRCで首位に立つスバルの新井

○…WRCは休むことなく2週後にはフィンランドに開催地を移す。ここではジュニアWRCで活躍するスズキが、これまでのイグニス・スーパー1600に替わり、新型のスイフト・スーパー1600を送り込む。
スズキ・イグニスはルノー、シトロエン、フィアット、フォードなど欧州のラリーで鍛えられたスーパー1600に3年前からチャレンジ。P-G・アンダーソンがチャンピオンの座についている。
新型スイフトは昨シーズンの終わり頃から具体的な開発を進め、今年に入ってからはフランス、フィンランドなどでテストを繰り返している。ガイ・ウィルクスは乗った感想をこう話している。「リアサスペンションが素晴らしくなった。走行安定性は大きく増している。実戦が楽しみだ」
SWTの松本諒平社長、スズキ・スポーツの田嶋伸博社長ともに「確実に進化した車。楽しみにしてください」と自信を語っている。スイフトはラリージャパンにも出走の予定。
間もなくjデビュー。新型 スズキ・スイフト・スーパー1600
間もなくjデビュー。
新型 スズキ・スイフト・スーパー1600


○…セバスチャン・ローブはSS7で危うくリタイヤの憂き目に遭うところだった。道の真ん中に牛がいた。
「歩いていると最初は思ったが、次の瞬間、じっと立ち止まっていることが分かった」とローブ。左の溝にタイヤを落とし、どうにか激突は免れ大きなダメージは受けなかったのはさすが。
「何とか避けたが、牛には当たったよ。逃れた溝で左フロントタイヤがパンクし、右フロントは牛にぶつかって右のボンネット部分とウイングを傷めた。恐ろしかったね。ちょっとのツキはいつも大切だ。今日は本当にラッキーだった」とローブ。6連勝は向かって激走するローブに、第1レグで真っ向立ちふさがり、一瞬ピンチに追いやったのは、アルゼンチン名物の牛だった。


中島祥和
取材:2005年7月