世界ラリー選手権(WRC)第11戦
ラリー・ジャパン

ドライブライン

北海道・帯広市を中心に陸別、足寄、新得など十勝一帯で開催された2006年世界ラリー選手権(WRC)第11戦のラリー・ジャパン(1日〜3日=ニッポンレンタカーなど後援)は、好天に恵まれ世界トップ・ラリーストの見応えのあるバトルが展開された。
セバスチャン・ローブ(フランス、シトロエン・クサラ)が今期7勝、通算27勝目を挙げ、WRC新記録を達成。グロンホルムとの“死闘”はWRC史上でも屈指のものとなった。スバル・インプレッサのエース、ペター・ソルベルグ(ノルウェー)は、初日のトラブルで脱落。一昨年の優勝、昨年最後までトップを走りながら石を巻き込んでのリタイヤなどのような強さは見られなかった。しかし、クリス・アトキンソン(オーストラリア)が4位、スポットでWRカーに乗った新井敏弘が6位入賞して面目を保った。

併催のプロダクションカー世界ラリー選手権(PCWRC)では、初日からトップに立ち、大きくリードをしていたヤリマティ・ラトバラ(フィンランド、スバル・インプレッサ)が、最終日SS25にてまさかの転倒。日本の奴田原文雄(三菱ランサー)がモンテカルロに次いで2度目の優勝。三菱はトップ3を独占した。


闘魂と書いた鉢巻き。ローブは日の丸に新記録の27を書き込んで頑張った
闘魂と書いた鉢巻き。ローブは日の丸に新記録の27を書き込んで頑張った

ドライブライン

◇第1レグ グロンホルム好調。ソルベルグ後退。

帯広市などで第1レグを行い、フォード・フォーカスのマーカス・グロンホルム(フィンランド)がトップに立っている。2位にはシトロエン・クサラのセバスチャン・ローブ(フランス)、3位にミッコ・ヒルボネン(フィンランド、フォード・フォーカス)がつけている。
スバル・インプレッサのWRカーで出走した日本の新井敏弘は7位、クリス・アトキンソン(オーストラリア)は6位、スバルのエース、ペター・ソルベルグ(ノルウェー)は8位に低迷している。
グロンホルム激走
グロンホルム激走

2年前の夢・再現を願うスバル陣営の期待は序盤、ソルベルグがトップ3を走行したことで高まった。今シーズン勝ちのないソルベルグは、スバルのホーム・ラリーにかけていたが、期待が膨らんだのはSS3までだった。最長の競争区間、SS4でブレーキトラブル。絶望的な2分遅れで早々と優勝戦線から脱落してしまった。
アトキンソンも頑張ったが小さなトラブルが発生し、修復に手間取りサービスを出るのが遅れて50秒のペナルティを受けたのが響いて6位止まり。期待の新井はSS8からクラッチ・トラブルに悩まされ、7位に踏ん張るのが一杯のところだった。
スバル勢不振の中で、ラリーは今シーズンの“定番”となっているグロンホルムとローブのトップ争い。それにヒルボネンが絡む展開で初日を終えた。

第1レグ成績
1. GRONHOLM-RAUTIA
Ford Focus
1h11'01"900
2. LOEB-ELENA
Citroen Xsa
00'10"50
3. HIRVONEN-LEHTIN
Ford Focus
01'02"10
4. STOHL-MINOR
Peugeot 307
02'20"70
5. 2SORDO-MARTI
Citroen Xsa
02'54"50
6. ATKINSON-MACNEA
Subaru Impr
02'56"10
7. ARAI-SIRCOMBE
Subaru Impr
03'20"50
8. SOLBERG-MILLS
Subaru Impr
03'35"00
グロンホルムの平均速度は104.6キロ。


第2レグ ローブ首位に立つ

チャンピオンのセバスチャン・ローブ(フランス、シトロエン・クサラ)が首位に立った。初日トップのマーカス・グロンホルム(フィンランド、フォード・フォーカス)は25秒6遅れの2位、同じフォードのミッコ・ヒルボネン(フィンランド)は3位。
スバル・インプレッサ勢ではクリス・アトキンソン(オーストラリア)が4位に浮上したが、エース、ペター・ソルベルグ(ノルウェー)は初日のトラブルで勢いを失い7位、新井敏弘は8位。

アトキンソンは頑張って4位
アトキンソンは頑張って4位

晴れ上がった十勝平野もスバル勢にとっては、暗雲と変わりなかった。アトキンソンが頑張ったにしても、トップに4分24秒遅れ。このタイム差はもうWRCのワークスの戦いにはほど遠い。ソルベルグも新井も、シトロエン、フォードに“おいで、おいで”と手招きされても、タイム差を縮め、追いつくには相手にトラブルがない限り、不可能に近い状態だ。
ローブはSS13で6秒差まで詰め寄り、グロンホルムがスピンしたSS14で逆転トップに立った。2人のマッチレースはレグ2のSS14で決着が付いた。その後はタイム差を少しずつ開き、レグ2を終わって25秒6に差。普通に走ればこの2人に最終日の逆転はない。
「どこでも100%で走った。限界の走行だ。マーカスも同じだろう。彼がどこでミスをしたかは意識しなかった。ミスであれ、メカニカルトラブルであれ、我々には関係なく、全力で走った結果だ」とローブはいった。
ラリーは終わってみなければ分からない、のは事実だが、ここまで差が広がると、スバルは勝負の外。残念ながら今年のスバルは勝てないままに終わることになりそうだ。トラブルが多すぎる。問題が起こって焦り、クラッシュや、さらなるトラブルを招く繰り返し。
「いい方向に進化している。まだやるべきことがある」と言うソルベルグの談話も、今や空しい。
スバルにとって悲惨なラリー・ジャパンはもう1日続く。トップ3の誰かがトラブルか、大きなミスをしない限り、表彰台は絶望的。ブルーのフラッグを振るスバル応援団も、ローブ、グロンホルムのマッチレースを見つめるしかない状況だ。

第2レグ終了
1. S. Loeb/D. Elena
(Citroen Xsara)
+ 2 h 27 min 45.7 s
2. M. Gronholm/T. Rautiainen
(Ford Focus)
+ 25.6 s
3. M. Hirvonen/J. Lehtinen
(Ford Focus)
+ 1 min 43.1 s
4. Ch. Atkinson/G. Macneall
(Subaru Impreza)
+ 4 min 24.1 s
5. M. Stohl/I. Minor
(Peugeot 307)
+ 4 min 40.4 s
6. D. Sordo/M. Marti
(Citroen Xsara)
+ 5 min 25.6 s
7. P. Solberg/Ph. Mills
(Subaru Impreza)
+ 5 min 31.7 s
8. T. Arai/T. Sircombe
(Subaru Impreza)
+ 6 min 39.7 s


◇第3レグ(最終日) ローブ新記録樹立で優勝

クロノス・シトロエン・クサラのセバスチャン・ローブ(フランス)が、WRC通算27勝の新記録を樹立した。今シーズン7度目の優勝で3年連続チャンピオンへ大きく歩を進めた。2位にはフォード・フォーカスのマーカス・グロンホルム(フィンランド)、3位もフォードのミッコ・ヒルボネン(フィンランド)だった。スバル・インプレッサのクリス・アトキンソン(オーストラリア)は粘って4位、新井敏弘は6位、ペター・ソルベルグ(ノルウェー)は8位だった。
併催のプロダクションカー世界ラリー選手権(PCWRC)では、日本の奴田原文雄(三菱ランサー)が緒戦のモンテカルロに続いて2勝目を挙げた。
新井はスポット参戦だが6位はお見事
新井はスポット参戦だが
6位はお見事


滑りやすく、狭いコースをグロンホルムは激走。フィニッシュした時点で差は5秒40にまで縮まっていたが、ローブの計算し尽くしたような確実な走りは乱れることがなかった。
「100%、時にはそれ以上で走った。マーカスの追い上げを振り切るにはそうしなければならなかった。区間タイムに気を遣うより、ただフラットアウトだった。出来るだけ鋭く、速く走った。勝利はその結果だ。最後までリスクを冒して走ったよ」とローブは言った。
グロンホルムにとっても、全力を振り絞り、悔いのない走りだった。
「フォーカスはよく走ってくれた。とても厳しいラリーで、特に移動区間が長いのは大変だった。タイヤもコンディションに良く合っていて全く問題なしだった。ラリー前に降った雨で、木の下や森の中はマッドがあって難しいラリーだったね。しかし、ベストのパフォーマンスが発揮できて満足している」
ローブ、グロンホルムの2人が1、2位を占める順位が今シーズンは突出。スバルの影は薄れている。
併催のPCWRCではSS24までJ・ラトバラが奴田原文雄(三菱ランサー)を1分8秒2リードしていたが、SS24でストップして脱落。奴田原が逆転優勝し、三菱はPCWRCでトップ3を独占した。

WRC成績
1. 1
LOEB-ELENA
Citroen Xsa
A8 3h22'20"400 102.5 km/h 1 1
2. 3
GRONHOLM-RAUTIA
Ford Focus
A8 3h22'26"000 + 00'05"60 2 2
3. 4
HIRVONEN-LEHTIN
Ford Focus
A8 3h25'06"900 + 02'46"50 3 3
4. 6
ATKINSON-MACNEA
Subaru Impr
A8 3h28'28"200 + 06'07"80 4 4
5. 7
STOHL-MINOR
Peugeot 307
A8 3h29'31"100 + 07'10"70 5 5
6. 14
ARAI-SIRCOMBE
Subaru Impr
A8 3h31'25"500 + 09'05"10 6 6
7. 2
SORDO-MARTI
Citroen Xsa
A8 3h31'26"700 + 09'06"30 7 7
8. 5
SOLBERG-MILLS
Subaru Impr
A8 3h34'04"100 + 11'43"70 8 8

Drivers Point
1. S Loeb
102 pts
2. M Gronholm
69
3. D Sordo
41
4. M Hirvonen
33
5. M Stohl
28
6. P Solberg
22

PCWRC成績
1. 33
NUTAHARA-BARRIT
Mitsubishi
N4 3h45'17"800 92.1 km/h 0 0
2. 35
POZZO-STILLO
Mitsubishi
N4 3h45'45"200 + 00'27"40 0 0
3. 34
BELTRAN-ROJAS
Mitsubishi
N4 5h30'03"200 + 1h44'45"


中島祥和
取材:2006年9月