ラリージャパンがやってくる!

ギリシャの山岳地帯を走るスバル
ギリシャの山岳地帯を走るスバル

ドライブライン

◇ラリー

 1ヵ所に集まる−、そんな語源を持つモータースポーツで、一般公道を使って競技が行われる。その代表的なものが世界ラリー選手権(WRC)で、今年は年間16戦が予定され、ラリージャパンも新たに加わっている。1972年まではシリーズ化されていなかった。当時もっとも有名だったのはモンテカルロ、サファリ、英国で“3大ラリー”とも呼ばれていた。当時のモンテカルロは欧州の9都市からそれぞれスタート。モンテカルロに集まり、本格的な競技が始まった。ラリーはスタートからゴールまで1週間もかかった。
 F1やインディ、ル・マンなどサーキットレースとラリーの大きな違いは、一般公道を使うこと。一般公道を走れる保安基準に適合していることなど。陸上競技に例えると、競技場で行われる100メートル、200メートルなどの競技に対し、ラリーは公道を走るマラソンに、状況は少し似ている。

アクロポリスのプジョー307
アクロポリスのプジョー307
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マルティンの乗るフォード・フォーカス
マルティンの乗るフォード・フォーカス

◇競技の状態

 現代のラリーは1ヵ所、または2ヵ所に基地(サービスパーク)を置き、そこを起点に閉鎖された公道や林道の競技区間(スペシャルステージ=SS)へと移動し、タイムを競う。SSの合計タイムで順位が決まる。サービスパークからの移動路(リエゾン)も決められていて、間違った道を走行するとペナルティーが科せられる。もちろん移動中に事故やトラブルに見舞われると、ペナルティ、時には失格になる。リエゾン区間も競技に含まれていて、ここでは一般路走行の交通規則に則り、正確に走ることが要求される。
 競技は基本的に金、土、日曜の3日間だが、木曜の夜にセレモニアルスタートや、特設会場でスーパースペシャル・ステージ(SSS)が行われることもある。SSSは立体交差の設けられたダートトラックを2台が併走。タイムを競う。林道まで出かけられない人や、ドライバーの妙技をつぶさに見るには格好のステージとなっている。

アクロポリスを制したスバルのソルベルグ
アクロポリスを制したスバルのソルベルグ
 SSは3日間を通じて18ヵ所から24ヵ所ほどで、この区間のタイムが合計され勝敗が決まる。しかし、移動区間も時間制限などがあり、細かい決まりがある。総走行距離は1200〜1500キロ。国際自動車連盟(FIA)のランキング上位者が最初のグループで、2分間隔でスタート。その後は1分間隔になる。レースのように同時スタートではない。競技はレグ1(1日目)、レグ2、レグ3と呼ばれ、SSSが木曜の夜に開始されても、金曜のレグ1に記録は組み込まれる。

◇WRC(世界ラリー選手権)

 F1のグランプリ・シリーズと同じで、シーズンを通じてドライバー、マニュファクチャラーズのタイトルを競う。今シーズンは1月のモンテカルロ・ラリーに始まり、世界16カ国を転戦する。ラリージャパンは今シーズンの第11戦に当たる(日程は別掲)。
 今年、WRCに参戦しているメーカーはスバル、三菱、シトロエン、プジョー、フォードで、各チーム2台の“ワークスカー”を走らせる。上位8位まで順に10、8、6、5、4、3、2、1の得点が与えられる。得点合計のもっとも多いドライバー、チームが年間タイトルを獲得する。昨年はスバルのペター・ソルベルグ(ノルウェー)がトップ。現在チャンピオンだ。

猛然と走るソルベルグのスバル
猛然と走るソルベルグのスバル
アクロポリスを疾走するソルベルグ
アクロポリスを疾走するソルベルグ
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◇ラリージャパンの出走車

 ラリージャパンはWRCとともにアジア・パシフィック・ラリー選手権(APRC)も同時開催となる。APRCはアジア・オセアニア地域のラリー選手権で、ラリー車の規定ではより市販車に近い、グループN(市販車クラス)で競われる。APRCは2日間のラリーだが、日本では3日間の走行も可能。APRCの参戦車はレグ1でリタイヤしても、車が修復できれば、レグ2、レグ3を走れる。
プジョーのエース、マーカス・グロンホルム
プジョーのエース、
マーカス・グロンホルム

ミッコ・ヒルボネン
ミッコ・ヒルボネン

 WRCの車は“ワールド・ラリーカー(WRカー)”と呼ばれ、FIAの規則に沿って作られた特別な車だ。排気量は2リットル。ターボチャージャーを装着している。300馬力に制限されているが、トルクを配分などで反応を鋭くしている。4輪駆動でドライバーの操作で前後の駆動力配分もある程度変えられるが、平均的には後・7、前3位で時には8対2などのケースもある。しかし、一般公道を走行するため、一般の車以上に保安基準には厳しい。アクロポリス・ラリーでは泥よけのフラップが脱落していたことで、ソルベルグは30秒のペナルティーが科せられた。
フォードのエース、マルコ・マルティン
フォードのエース、
マルコ・マルティン

カルロス・サインツ。シトロエンのベテラン
カルロス・サインツ。
シトロエンのベテラン


 車体にはロールバーが組み込まれ、高速でのクラッシュや転倒からドライバを守っている。ロールケージ(カゴ)とも呼ばれ、時速200キロほどで数回転したり、大きくはねて転がっても、ドライバー、コ・ドライバー(ナビゲーター)にけがはほとんど無い。
 タイヤはスバルがピレリ、ほかの4チームはミシュランを使用している。

シトロエンを率いるセバスチャン・ローブ
シトロエンを率いる
セバスチャン・ローブ

ハリ・ロバンペラ(プジョ ー307)
ハリ・ロバンペラ
(プジョ ー307)

フォード期待のデュバル
フォード期待のデュバル

◇日本車とラリー

 現在はスバル、三菱が参戦しているが、かつては日産、トヨタ、マツダも国際ラリーを走っていた。ことに日本車はサファリ・ラリーで多くのファンを持った。かつて大ヒットした「栄光への5000キロ」(石原裕次郎主演)は、サファリ・ラリーで日本車の活躍ぶりをテーマにしたものだった。サファリでは日産、三菱、トヨタが大活躍。日本車の堅牢さを世界に示した。
シトロエン・クサラ(アクロポリスで)
シトロエン・クサラ(アクロポリスで)

 パリ〜ダカールラリーは砂漠や荒れ地、時には道の無いところも走るクロスカントリーだが、WRCは道があるのが基本。舗装、雪、氷のミックス(モンテカルロ)。雪と氷(スウェーディシ)。ダート(日本、ギリシャなど)、舗装路(ドイツ、コルシカなど)で、それぞれ変化や特徴を持っている。

◇ラリーの歴史

 ラリーとレースのはじまりは同じ。1894年にパリ〜ルーアン間の競争が行われたが、これは公道レースでもあり、ラリーともいえる。1903年にはフランス・グランプリがル・マンで開催されている。これは公道を使ってはいるが、同じ場所を周回するのでル・マン24時間レースの原型。ラリーとは異なっている。
 モンテカルロ・ラリーは1911年に始まったもっとも古い、本格的なラリーといえる。その後、各地でラリーが開催されるようになったが、1週間、10日と走るものもあり、現在のWRCよりも耐久性を競う性格が強い。

◇ラリー車の乗員

 ラリー車にはドライバーとコ・ドライバー(ナビゲーター)の二人が乗り込む。この二人は決められた日時に事前にコースを下見(レッキ)し、ペースノートと呼ばれるメモを作成する。ドライバーが走りながら、コーナーや路面の状態を判断。ギアシフトの位置やアクセル開度、ライン取りなどをコ・ドライバーに伝え、ノートに書き取らせる。
 実戦では猛烈な速度で走りながら、コ・ドライバーはノートを読み上げ、インターコムでドライバーに伝える。次のコーナーをどう抜けるか、その先に何があるか。ドライバーは事前にそれを知り、ドライブすることになる。データが間違っていると、最悪の場合、コースを飛び出すなど、ミスにつながる。

◇スバル、ラリージャパンに燃える。

 スバルは日本始めて開催される世界ラリー選手権(WRC)、ラリージャパン2004(9月3日〜5日・帯広市など)の出場体制を発表した。WRCを戦っているワークスの“SUBARUワールドラリーチーム”は、ペター・ソルベルグ(ノルウェー)、ミッコ・ヒルボネン(フィンランド)の2台体制で臨む。
 グループNのFIAプロダクションカー世界選手権(PCWRC)に出場している新井敏弘(スバル・インプレッサWRX STi)をエントリーするほか、東京SUBARUラリーチームから鎌田卓麻、ディーン・へリッジ(オーストラリア)をグループN仕様のインプレッサWRX STiで出走させる。
 ラリージャパンは2年前から始まった「ラリー北海道」が発展したもの。一昨年、昨年はアジア・パシフィック・ラリー選手権(APRC)として開催され、一昨年は3年に事故死したニュージーランドのポッサム・ボーン、昨年は日本の新井敏弘(ともにスバル・インプレッサ)が総合優勝している。
 ラリージャパンへ出場する新井は、今年グループN(市販車)で世界1を競うPCWRCでタイトルを目指しているが、ラリージャパンもグループN車両で戦う。
 発表は7月、東京・お台場で行われ、世界チャンピオン、ペター・ソルベルグ、ミッコ・ヒルボネン、日本の新井敏弘らが姿を見せた。ソルベルグは集まった報道陣や関係者の前で、車から身を乗り出し、タイヤスモークを上げて走る妙技=写真=を披露。「ラリージャパンではいい走りをお見せしたい」と話していた。

運転席のドアを開け、得意の妙技を見せるソルベルグ
運転席のドアを開け、得意の妙技を
見せるソルベルグ

スバル陣営。新井(左から3人目)、ソルベルグ、ヒルボネン、右端は桂田STi社長
スバル陣営。新井(左から3人目)、ソルベルグ、
ヒルボネン、右端は桂田STi社長


 ○…新井敏弘はPCWRCスウェーデン、ニュージーランドを終えて2位。トップに1点差のがんばりだ。アルゼンチンの高速ダートで逆転を狙う。
 全7戦のうち6戦がポイント対象で、新井は第6戦のツール・ド・コルス(フランス・コルシカ島)をのぞく6戦に出走する。昨年は半分の3勝を挙げながら惜しくもタイトル獲得を逃した。今シーズンの成績はスウェーデン・6位、メキシコ・2位、ニュージーランド・5位。


ドライブライン

 2004年世界ラリー選手権(WRC)第11戦のラリージャパンが間近になった。すでにエントリーも締め切られ、ワークス・エントリーは合計8台。スバル、シトロエン、プジョー、フォードの4チーム各2台ずつだ。三菱は「ラリー車両開発に専念する」との理由で、ラリージャパンの一つ前、ラリー・ドイッチェランドで今シーズンの参戦を打ち切った。
 しかし、今シーズンのトップを競っているのはラリージャパンに参戦する4チームの間であり、三菱の欠場はドライバー、マニュファクチャラーズ両選手権の行方には関係しない。
 WRC参加チーム、ドライバーは以下の通り。チーム名、車名はエントリーによる。

 ◇スバル・ワールドラリーチーム=スバル・インプレッサWRC2004=
 ▽ペター・ソルベルグ(ノルウェー)
 ▽ミッコ・ヒルボネン(フィンランド)

 ◇シトロエン・スポーツ=シトロエン・クサラ=
 ▽セバスチャン・ローブ(フランス)
 ▽カルロス・サインツ(スペイン)

 ◇マールボロ・プジョー・トタル=プジョー307WRC=
 ▽マーカス・グロンホルム(フィンランド)
 ▽ハリ・ロバンペラ(フィンランド)

 ◇フォード・モーター=フォード・フォーカスRS WRC04
 ▽マルコ・マルティン(エストニア)
 ▽フランソワ・デュバル(ベルギー)

 ◇WRカーに乗るマニュファクチャラーズ得点対象外のドライバー
 ▽アントニ・ワルンボルト(ドイツ=フォード・フォーカスRS WRC02)

 以上はWRCのクラスで、ドライバーズ選手権、マニュファクチャラーズ選手権を競っているドライバーと車だ。WRC専用に作られたWRカーは、形こそ親しみやすい市販車とほぼ同じだが、性能は飛び抜けていて、猛然と走る姿は、見る人を痺れさせる凄さと、躍動する魅力がある。

舗装路とはいえ、コーナーはグラベル?ローブの走り
舗装路とはいえ、コーナーはグラベル?ローブの走り
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フィンランドを走るソルベルグのスバル
フィンランドを走るソルベルグのスバル

◇WRC第10戦までの戦い

 ラリー・ドイッチェランドを終わって、ドライバーズ選手権は、ローブがモンテカルロ、スウェーデン、キプロス、トルコ、ドイツと5勝を挙げるなどの活躍で、合計得点76点としてトップに立っている。2位にはマルティンで47点、以下サインツ・46点、ソルベルグ・44点、グロンホルム・42点、デュバル・39点と2位争いは熾烈。
 トルコまで首位のローブを追いかけていたソルベルグにとって厳しかったのは、アルゼンチンの川渡りで、水圧のため吸気系統が壊れたのに始まる3連続リタイヤ。フィンランドでは石をヒットして脱落。ドイツでは縁石となっている巨大なコンクリートブロックにぶつかり、横転・クラッシュした。
 三菱が成績不振から「車両開発に専念するため、ジャパン・ラリー以降の今シーズンは参戦を休止する」と発表。日本車でのWRC出走はスバルだけになってしまった。チャンピオン・ソルベルグはこう語っている。
 「このところ悪いことが続いているが、車の仕上がりは満足すべき状態だ。ドイツのコンディションはあまりにも過酷だった。僅かにコースを外したら、大きなコンクリートがあり、避けようもなかった。しかし、シーズンはまだ長い。ラリージャパンでは勝ちに行く。車はそれだけの仕上がりをしているし、チームも燃えている」
 ソルベルグ、ローブ、マルティン、グロンホルムの“トップ狙いの4人”に、安定したサインツ、ドイツで2位入賞するなど急成長しているデュバルも、日本のファンを魅了するアグレッシブなドライビングを見せることだろう。
 なお、ドライバーの戦いのほかにマニュファクチャラーズ(メーカー)選手権もかかっていて、登録した2台がポイント対象となる。こちらもローブ、サインツと安定した2人を抱えるシトロエンが、大きくリードしている。

ドイツ3連勝へ燃えるローブ
ドイツ3連勝へ燃えるローブ
サインツ
サインツ
ソルベルグ(右)とヒルボネン
ソルベルグ(右)とヒルボネン

◇ドライバー世界選手権得点(1位・10点、2位・8点、3位・6点、以下8位まで5、4、3、2、1点)
(1)ローブ76
(2)マルティン47
(3)サインツ46
(4)ソルベルグ44
(5)グロンホルム42
(6)デュバル39

◇マニュファクチャラーズ得点
(1)シトロエン125
(2)フォード96
(3)スバル67
(4)プジョー65


◇アジア・パシフィック・ラリー選手権(APRC)

 ラリージャパンではWRCと併催でAPRCが行われる。こちらは9台がエントリーしている。日本人ドライバーは田口勝彦(三菱ランサー・エボ8)1人。三菱5台、スバル1台、プロトン1台は4輪駆動。スーパー1600のスズキ・イグニス2台はFF。
 APRCは全6戦でオーストラリア、ニューカレドニア、ニュージーランドの3戦を終わって、ドライバーはアーミン・クレマー(ドイツ、三菱ランサー・エボ8)が33点でトップ。2位はカラムジット・シン(マレーシア、プロトン・パート)で32点。日本の田口は20点で3位にいる。スズキ・イグニスのクリス・アトキンソン(オーストラリア)は2輪駆動ながら頑張って5番手につけている。

田口勝彦
田口勝彦
新井敏広
新井敏広
奴阿原文雄
奴阿原文雄
柳沢宏至
柳沢宏至

◇グループN

 選手権はかかっていないが、日本の有力ドライバーがこのクラスで走る。第1人者の新井敏広(スバル・インプレッサWRX STI)はWRCで2度、4位入賞の実績を持つ実力派。プロダクションカー世界選手権(PCWRC)に出場して活躍中だ。車は異なるが、WRCのドライバーに負けない走りのできる日本人ドライバーのトップ。奴阿原文雄(三菱ランサー。エボ7)もPCWRCを走り、新井に迫る実力を持つ。日本人ドライバーではこのほか、鎌田卓麻(スバル・インプレッサWRX STI)、柳沢宏至(同)、勝田範彦(同)らに期待が集まる。
 ジュニア世界ラリー選手権(JWRC)のラリー・フィンランドで優勝したP-G・アンダーソン(フィンランド、スズキ・イグニス)は、アトキンソンと同じFFスーパー1600だ。どんな走りをするか興味深い。

フィンランドを走るアンダーソンのスズキ・イグニス
フィンランドを走るアンダーソンのスズキ・イグニス
フィンランドを走る新井のスバル(PCWRC)
フィンランドを走る新井のスバル(PCWRC)


中島祥和
取材:2004年6月〜8月


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