美作三湯で温泉三昧(2)“のれんの町”勝山と湯原温泉

シンメトリーな外観が美しい、旧遷喬尋常小学校の校舎 奥津温泉で一泊した翌朝は、往路で通った大釣トンネル(奥津バイパス)ではなく、新緑眩しい吉井川沿いの旧道を走り、「奥津渓」の渓谷美を堪能しながら南下。国道179号線から県道56号線に入り、真庭市方面を目指した。
旧出雲街道である国道181号線と合流したあとは、進路を西へ。久世では、明治40年(1907)建築で、平成2年(1990)まで現役の校舎として使われていた「旧遷喬尋常小学校」を見学。勝山では、かつて出雲街道の宿場町として栄えた「勝山町並み保存地区」を巡った。
勝山からは、瀬戸内海と日本海を結ぶ国道313号線(通称「ロマンチック街道」)を北へとひた走り、美作三湯の残る一湯「湯原温泉」や、西日本を代表する高原リゾート「蒜山高原」へと向かった。

ドライブルート

岡山市中心部−(県道27号線、国道484・374号線など)−美咲町吉ヶ原−(国道374号線)−湯郷温泉−(国道179・53号線)−津山−(国道179号線)−奥津温泉−(国道179号線、県道56・327・82号線、国道181号線)−久世−(国道181号線)−勝山−(国道313号線)−湯原温泉−(国道313号線、県道422号線)−蒜山高原−蒜山IC−(米子自動車道、中国自動車道)−新見IC−(国道180号線、県道33・85号線)−吹屋−(県道85号線、国道180号線)−高梁市中心部−(国道180号線など)−岡山市中心部

全行程 約385km、今回 約85km

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奥津渓

奥津温泉から吉井川沿いの旧道(奥津バイパス開通以前の国道179号線)を南へと走ると、すぐに新緑に覆われた山あいの道となり、国の名勝「奥津渓」へと入っていく。
奥津渓は、奥津温泉の下流3kmの渓谷一帯のことで、吉井川の急流によって刻まれた深い谷には轟々たる瀑布や水をたたえる淵などが次々に現れる。春にはコブシ、シャクナゲ、ツツジが咲き乱れ、夏は新緑にかじかの鳴き声。秋には錦を織りなす紅葉、冬には樹氷による雪景色など、四季折々の景観を堪能できるのも魅力だ。
途中の大釣温泉から奥津渓八景のひとつ「臼渕の甌穴群」までの約800mの区間には、川沿いを歩くことができる遊歩道が整備されている。「臼渕の甌穴群」のそばには車を停めるスペースがあるので、車を降りて渓谷沿いを散策してみるのもいいだろう。

  • 新緑に覆われた山あいを轟々と流れる吉井川

    新緑に覆われた山あいを轟々と流れる吉井川

  • 淵では静かに水をたたえ、水面は鏡のよう。遊歩道を歩いていると、渓谷のさまざまな表情を見られる

    淵では静かに水をたたえ、水面は鏡のよう。
    遊歩道を歩いていると、渓谷のさまざまな
    表情を見られる

  • 甌穴。河底の石塊が水流によって数千万年にわたって回転した結果、花崗岩の河床にできた穴。高い岩盤上のものは古代の河床跡

    甌穴。河底の石塊が水流によって数千万年に
    わたって回転した結果、花崗岩の河床に
    できた穴。高い岩盤上のものは古代の河床跡

  • 旧道沿いには、般若寺温泉と大釣温泉がある

    旧道沿いには、般若寺温泉と大釣温泉がある

旧遷喬尋常小学校

国道181号線の真庭市久世庁舎前交差点を過ぎると、右手に広い校庭とシンメトリーな外観が美しい古い木造校舎が見えてくる。そこが「旧遷喬尋常小学校」だ。校舎裏手にある駐車場に車を停めて、早速校内へと入っていく。

  • シンメトリーな外観が美しい、旧遷喬尋常小学校の校舎

    シンメトリーな外観が美しい、旧遷喬尋常小学校の校舎

真っすぐに延びる廊下。右手に教室が並ぶ

真っすぐに延びる廊下。右手に教室が並ぶ

明治7年(1874)、遷喬小学校は、津山藩の御蔵(年貢米倉庫)を校舎として開校。その校名は、中国の古典「詩経」の一節「出自幽谷、遷于喬木」に由来する。ちなみに、この一節は「ウグイスが深山の暗い谷間から飛び立ち、高い木に移る」という内容で、「学問に励んで立身出世する」という意味だそう。その後、増加する生徒数に対応するため、新校舎の建設に着工し、明治40年(1907)に完成。これが今に残る小学校の建物である。
外観は左右対称の均整がとれた美しさで、思わず見とれてしまうほど。正面中央の入口から校舎内へと入っていくと、左右に廊下が延びて、教室が並んでいる。教室内には机が整然と並べられ、今もこの校舎で子供たちが学んでいるかのような錯覚を覚える。2階の中央部は講堂となっており、折り上げの格天井(ごうてんじょう。木を組んで格子形に仕上げた天井)によって風格ある空間となっている。
現役の小学校校舎として平成2年(1990)まで使用されたのち、平成11年(1999)に国の重要文化財に指定。映画やテレビドラマのロケ地としてもよく使われ、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』やNHK連続テレビ小説もこの校舎で撮影を行ったそうだ。
/入館無料

  • 机が整然と並んだ教室内

    机が整然と並んだ教室内

  • 講堂。天井は折り上げの格天井

    講堂。天井は折り上げの格天井

  • 尋常小学校時代に使われていた教科書

    尋常小学校時代に使われていた教科書

勝山町並み保存地区

勝山の町並み。連子格子の古い建物が数多く残る

勝山の町並み。連子格子の古い建物が数多く残る

勝山は、かつて美作勝山藩2万3000石の城下町であり、出雲街道の宿場町として栄えた土地。室町時代末期に開かれたという旭川の水運では、高瀬舟の最北の発着点であり、年貢米や林産物の集積地として大いに賑わった。そんな往時の面影を今に伝えてくれるのが、「勝山町並み保存地区」である。
保存地区内にある駐車場に車を停めて、通りを散策すると、まず目につくのが軒を連ねる商店や民家の玄関にかけられた、さまざまなデザインののれん。この地区が“のれんの町”と呼ばれる所以だが、町の人に話を聞くと、元々のれんをかけるようになったのは観光や地域おこし目的ではなかったそう。発端は20年ほど前、地区内の草木染織工房の作家さんが自分の店のためにと作ったもので、その後町内の人たちから「素敵だから、うちにも作ってほしい」と依頼されて徐々に広まっていき、勝山を象徴する風景が作られていったのだとか。白壁の土蔵や、連子格子の商家や民家など、古い建物が数多く残る風情ある町並みには、たしかに彩り豊かな草木染ののれんがよく似合っていた。

  • 町を彩るのれん。色とりどり、デザインもさまざま

  • 町を彩るのれん。色とりどり、デザインもさまざま

    町を彩るのれん。色とりどり、デザインもさまざま

通りの両側には、古い建物をリノベーションした飲食店やカフェ、工房、ギャラリーなどが並んでいた。「勝山郷土資料館」(入館200円)の前には、「文豪 谷崎潤一郎 疎開の地」の碑が。昭和20年(1945)の終戦間際、谷崎は戦火を逃れて、家族とともに勝山に疎開してきたそうだ。

  • クリーニング店をリノベーションしたカフェ。古い町並みだけでなく、こうした個性的な店も勝山の魅力

    クリーニング店をリノベーションしたカフェ。
    古い町並みだけでなく、こうした個性的な店も勝山の魅力

  • こちらの店は、大正時代中期の洋館風の建物を再利用

    こちらの店は、大正時代中期の洋館風の建物を再利用

  • この地域の歴史を知りたければ「勝山郷土資料館」へ

    この地域の歴史を知りたければ「勝山郷土資料館」へ

  • 太平洋戦争末期、作家の谷崎潤一郎は勝山へ疎開。『細雪』の一部をこの地で執筆した

    太平洋戦争末期、作家の谷崎潤一郎は勝山へ疎開。
    『細雪』の一部をこの地で執筆した

  • 文化元年(1804)創業、「御前酒蔵元 辻本店」。通りをはさんだ向かい側には、直営の売店やレストランもある

    文化元年(1804)創業、「御前酒蔵元 辻本店」。
    通りをはさんだ向かい側には、直営の売店やレストランもある

  • 映画『男はつらいよ』の最終作の撮影も行われた

    映画『男はつらいよ』の最終作の撮影も行われた

町並み保存地区から少し東に入ったところには、勝山に唯一残されている江戸時代の武家屋敷「武家屋敷館(渡辺邸)」(入館200円)がある。塀で区画された敷地内には、長屋門、母屋、土蔵、井戸などがあり、土蔵内に展示された道具類とともに当時の武士の暮らしを偲ぶことができる貴重な建物だ。

  • 武家屋敷館の入口

    武家屋敷館の入口

  • 客間

    客間

神庭の滝

園内には、大阪大学によって餌付けされた野生の猿が数多く生息し、運がよければその姿を見ることができる

園内には、大阪大学によって餌付けされた野生の猿が数多く生息し、
運がよければその姿を見ることができる

勝山町並み保存地区から湯原温泉を目指して国道313号線を北上していく途中、ぜひ立ち寄りたいスポットがあった。中国地方随一のスケールを誇る名瀑「神庭の滝」だ。
国道313号線から県道201号線に入り、山あいの道を2.5kmほど走ると、飲食店やみやげもの屋のある一画に出る。そこに車を停めて、さらに谷沿いの道を15分ほど歩いていくと、山を覆う樹々の向こう、断崖絶壁を流れ落ちる巨大な滝が見えてくる。
神庭の滝は、標高1,030mの星山から流れる神庭川にかかる滝で、その規模は高さ約110m、幅約20mにもなり、「日本の滝百選」にも選ばれている。さらに一帯のエリアは、国の名勝や県立自然公園にも指定され、渓谷にはさまざまな樹木が生い茂り、四季を通じて滝と樹々が織りなす美しい景観を楽しめる。特に、カエデやカラマツが紅葉する秋の景色がすばらしいそうだ。
滝見橋からさらに奥へと進み、滝のすぐそばまで近づけば、轟々たる響きはさらに迫力を増し、そのスケールの大きさをより実感できる。まるで白布をまとったかのようにも見える水しぶきは、神秘的であり、神々しささえ感じられた。
/入園料 300円

  • 断崖絶壁を轟々と流れ落ちる神庭の滝

    断崖絶壁を轟々と流れ落ちる神庭の滝

湯原温泉

旭川に沿って延びる国道313号線を北へと走っていると、真賀温泉、足(たる)温泉、郷緑温泉、下湯原温泉などの案内看板が目に入ってくる。それらは湯原温泉郷を構成する温泉地で、そのもっとも北に位置するのが、今回の美作三湯巡りの最後の一湯「湯原温泉」だ。
湯原温泉は古くから湯量豊富な良質な温泉地と知られており、その起源は平安時代に河原から湧き出る湯で傷を癒していた大蛇を発見したことだと伝えられている。文献に登場するのは安土桃山時代で、豊臣秀吉に仕える五大老の一人・宇喜多秀家が母「おふくの方」の湯治場をこの地に開設したという記述が残っている。現在は旭川沿いの一帯に15軒ほどの温泉旅館やホテルのほか、飲食店やみやげもの屋が立ち並んでいる。

  • 国道313号線を離れ、湯原温泉の温泉街へと入っていく

    国道313号線を離れ、湯原温泉の温泉街へと入っていく

  • 温泉街の町並み。左の建物は、湯原温泉の元湯で、市営の公衆浴場。この建物の地下から源泉が湧いている

    温泉街の町並み。左の建物は、湯原温泉の元湯で、
    市営の公衆浴場。この建物の地下から源泉が湧いている

  • 足だけではなく、手も温めることができる「手湯足湯」

    足だけではなく、手も温めることができる「手湯足湯」

  • 田羽根川が旭川に流れ込むところに架かる「鼓橋」。夜、この橋の上流部でホタルを見ることができた

    田羽根川が旭川に流れ込むところに架かる「鼓橋」。
    夜、この橋の上流部でホタルを見ることができた

  • 温泉薬師堂。「健康かえる」「銭かえる」など失ったものが返ってくるご利益があるとされる

    温泉薬師堂。「健康かえる」「銭かえる」など
    失ったものが返ってくるご利益があるとされる

  • 鼓橋のたもとに立つ、与謝野鉄幹・晶子夫婦の歌碑

    鼓橋のたもとに立つ、与謝野鉄幹・晶子夫婦の歌碑

露天風呂番付で、西の横綱に位置付けられた

露天風呂番付で、西の横綱に位置付けられた

湯原温泉を代表するスポットといえば、温泉街の最奥部、湯原ダムのたもとにある混浴露天風呂「砂湯」だ。かつては「砂噴き湯」と呼ばれ、風呂の底から砂を噴き上げながら湯が湧いていたことがその名の由来とか。現在では砂が噴き上がることはないが、湯船につかっていると、時折底から気泡が浮かんできて、今もこんこんと湯が湧き出ていることがわかる。その豊かなお湯と、周囲の野趣あふれる景観ゆえだろう、昭和56年(1981)に温泉評論家・野口冬人氏がまとめた「露天風呂番付」では西の横綱に位置付けられている。24時間入浴可能で、しかも無料のため、滞在中にいつでも気軽に入ることができるのも魅力で、朝に夕に川のせせらぎを聴きながらのんびり湯に浸かれば、心身ともに寛げる。
また、湯原温泉のある一帯は国の特別天然記念物であるオオサンショウウオ(地元では「はんざき」と呼ぶ)の生息地として知られ、近隣には「はんざきセンター」や「はんざき大明神」などもある。

  • 川のほとりの野趣溢れる露天風呂「砂湯」。背後にそびえるのは湯原ダム

    川のほとりの野趣溢れる露天風呂「砂湯」。背後にそびえるのは湯原ダム

蒜山ジャージーランド/蒜山ホースパーク

せっかく湯原まで来たのだからと、岡山県最北部、鳥取県との県境に位置する「蒜山(ひるぜん)高原」にも足を延ばしてみることにした。湯原温泉を出発し、車で走ることおよそ15分、広々とした田園風景が広がる高原エリアへと入っていく。
蒜山高原は、海抜500mの高さに位置する西日本を代表する高原リゾートエリアであり、乗馬やサイクリング、遊園地、キャンプ、バーベキューなどさまざまなアクティビティが楽しめるレジャースポットが点在している。また、具体的な目的地がなくとも、ゆるやかに起伏する、展望の開けた高原をドライブするだけでも爽快な気分を味わうことができる。

蒜山と言えばジャージー牛ということで、訪れたのは「蒜山ジャージーランド」。蒜山酪農農業組合が運営する施設で、雄大な蒜山三座のすそ野に広がる牧場でジャージー牛を放牧し、採れたての新鮮な生乳を使用した牛乳やヨーグルト、チーズなどを販売。併設のレストランでは、ステーキやハンバーグなどジャージー牛を使った肉料理が充実している。
隣には「蒜山ホースパーク」もあり、えさやり体験や引き馬体験のほか、木々の間の遊歩道を歩くちょっとした外乗体験もできる。

  • 敷地内には、ジャージー牛の牧場、レストランや売店などがある

    敷地内には、ジャージー牛の牧場、レストランや売店などがある

  • 高原に広がる牧場の周囲を散策することもできる

    高原に広がる牧場の周囲を散策することもできる

  • 放牧されたジャージー牛

    放牧されたジャージー牛

  • レストランや売店があるビジターセンター

    レストランや売店があるビジターセンター

  • 牛乳、ヨーグルト、チーズ、バター、プリンなどさまざまな乳製品を販売している

    牛乳、ヨーグルト、チーズ、バター、プリンなど
    さまざまな乳製品を販売している

  • 隣接する「蒜山ホースパーク」では、えさやり体験などができる

    隣接する「蒜山ホースパーク」では、えさやり体験などができる

  • 車窓からの風景。見渡すかぎりに高原が広がり、爽快なドライブを楽しめる

    車窓からの風景。見渡すかぎりに高原が広がり、
    爽快なドライブを楽しめる

道の駅「風の家」

大きな風車が目印

大きな風車が目印

高原野菜を買いたいならば、米子自動車道・蒜山ICの入口手前にある「道の駅 風の家」がおすすめ。大きな屋根の「とれたて野菜市」では、その名の通り、地元蒜山で収穫された野菜や花が所狭しと並べられている。春は山菜、夏は高原の冷涼な気候を生かして栽培されたトマトやキャベツなどの高原野菜、秋はきのこなど山の幸。初夏から初冬にかけては、蒜山の名物「蒜山大根」も数多く店頭に並ぶという。ちなみに、蒜山の特産品は「三白(さんぱく)」と言われており、ジャージー牛乳(とその加工品)、お米、そして大根のことを指すそうだ。

  • その日に収穫されたばかりの新鮮な野菜が並ぶ

    その日に収穫されたばかりの新鮮な野菜が並ぶ

ニッポンレンタカーの車種・料金

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岡山県内のニッポンレンタカー営業所

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晴れらんまん。おかやま旅ネット
岡山県観光連盟が運営。岡山の観光スポットや旬の情報、観光おすすめコースなどが用意されている。
美作国観光連盟
美作国のみどころやイベント、グルメ、温泉情報などのほか、方言講座や女子旅の案内もある。

記事・写真:谷山宏典 取材:2017年6月

  • ※ドライブコースの情報はそれぞれの記事の取材時点のものです。