船とレンタカーで行くノルウェー・フィヨルドの旅(1)

ベルゲン港の世界遺産の木造建築 南北に約3,000kmにも及ぶノルウェーの西海岸は、フィヨルド(※)と呼ばれる大小さまざまな無数の入り江と島々からなる。フィヨルドは長いもので200km、水深・両岸の断崖が1,000mを超えるものもある。なかでも有名なソグネ・フィヨルドは最大の観光地ともいわれ、首都オスロ(Oslo)から比較的近く、アクセスもよい。
今回は北極圏の北の外れの町まで船を利用、その帰路に「海のアルプス」と呼ばれ、世界でも最も美しいところのひとつといわれるロフォーテン(Lofoten)諸島をレンタカーで巡った。
フィヨルドで陸路を分断された長い海岸線では物資の輸送が困難なため、古くから人々は輸送手段を海に求めてきた。現代では空路も発達しているが、住人の少ない入り江や島々では飛行場も小さく少ないので、フライト便も限られている。
また数は少ないが、空港や港にはレンタカーもあり、フィヨルドや島巡りも可能だ。

今回の行程は、ノルウェーの第二の都市ベルゲン(Bergen)から、北極点まで約400km地点のロシアとの国境の町キルケネス(Kirkenes)まで船で行った。帰路、北緯69度近くの北極圏の町ハシュタ(Harstad)で下船し、レンタカーに乗り換えた。ハシュタから南に約350km、橋とトンネルでつながるロフォーテン諸島の先端まで足を延ばした。
全行程約3週間、うち北極圏での8日間、見事なオーロラが大空を乱舞。青い海、フィヨルドの深い入り江と複雑な岩山や断崖など大自然の美しさに感動し続けた。また長い歴史とともに、太陽の昇らない冬の厳しい日々の中で、いまも続く人々の生活がここにあった。

(※)フィヨルドとは氷河による浸食作用によって形成された複雑な地形の湾や入り江で、湾の入り口から奥まで幅があまり変わらず、非常に細長い形状の湾のことをいう。

ドライブルート

オスロ(Oslo)−〔空路〕ベルゲン(Bergen)−〔船〕キルケネス(Kirkenes)−ハシュタ(Harstad)−スヴァルバ(Svolvær)−レイネ(Reine)−ソルヴァゲン(Sør-vågen)

全行程 船…約3,000km、レンタカー…約700km

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オスロ(Oslo)

オスロの路面電車

オスロの路面電車

ノルウェー王国の首都。1048年、ヴァイキング王ハーラル3世により三方を山に囲まれたフィヨルドの奥深くに築かれた。現在は人口約60万人、世界一物価の高い都市ともいわれている。
王宮や美術館などの見所もあり、とくにオスロ出身の『叫び』で有名な「エドヴァルド・ムンク」の美術館をはじめ、国立美術館やヴァイキング船博物館、民俗博物館などは必見。その他、ノーベル平和賞などの授賞式が行われるオスロ市庁舎など、見ごたえのある建造物もある。
港に面したレストラン街では、大きめのムール貝やコクのあるホタテ貝、甘エビや手長エビ、鮭、鱈などノルウェー産の新鮮な魚介類を味わうことができる。ただし、福祉の充実を誇る国のひとつ、多額の税金が課せられた料金は高い。

  • オスロの売り、ムンクは観光バスにも

    オスロの売り、ムンクは観光バスにも

  • ムンクの展示されている美術館

    ムンクの展示されている美術館

  • 王宮

    王宮

  • 港の魚屋。小舟でやってくる

    港の魚屋。小舟でやってくる

  • 王宮の衛兵

    王宮の衛兵

  • 港の時計塔と高速船

    港の時計塔と高速船

  • 港のカフェ、レストラン街

    港のカフェ、レストラン街

  • レストランの魚介類

    レストランの魚介類

  • オスロ市庁舎

    オスロ市庁舎

ベルゲン(Bergen)

首都オスロ(Oslo)から北へ飛行機で約50分、人口約27万人のノルウェーの第二の都市。1070年にヴァイキングにより築かれ、中世には貿易の根拠地として、ハンザ同盟の商人たちによって栄えた。木造の密集した家並みは幾度となく大火に見舞われながらも、現在もハンザ商人の勃興を今に伝える。
かつての三角屋根のカラフルな町並みを残すブリッゲン地区はノルウェー建築の代表として、1979年にユネスコの世界遺産に登録されている。また近年では映画「アナと雪の女王」のモデルとなったことでも注目されている。そしてここはノルウェーの生んだ作曲家エドヴァルド・グリーグの生まれ住んだところでもある。
7つの山に囲まれているといわれるノルウェー最大の港湾都市では、博物館や魚市場などとともに、ケーブルカーで上るフロイエン山からの眺めは見逃せない。またフィヨルド観光の玄関口として知られる港には、観光船はもちろんのこと、さまざまな船が出入りしている。これから乗船する、限りなく北極点に近いキルケネスへの観光船も、この港から出港する。

  • ベルゲン港の世界遺産の木造建築

    ベルゲン港の世界遺産の木造建築

  • 建物内部

    建物内部

  • 裏から見る世界遺産の建物群

    裏から見る世界遺産の建物群

  • 山上から見るベルゲン

    山上から見るベルゲン

  • 距離表示 東京は8,500kmを超す

    距離表示 東京は8,500kmを超す

  • 魚介類は豊富

    魚介類は豊富

  • フィヨルドの村

    フィヨルドの村

オーレスンの港

オーレスンの港

船・フッティルーテン(Hurtigruten)航路

沿岸急行船といわれノルウェー西岸の長い海岸線を往来する定期船で、フィヨルドの奥や小さい入り江などに点在する大小34もの港に寄港する。創業は1893年、以来100年以上の間、陸上の物資の運搬が困難なフィヨルドで、地元の人々に郵便物をはじめさまざまな生活用品を届けてきた。いまもその役割は変わらないが、大型化された船は観光客をも迎え、現在は1万〜1万6,000トン級の船が12隻、片道7日間、最大で往復12日間の旅を提供している。

  • ウルケ沖に停泊する今回乗船のフィンマルテン号

    ウルケ沖に停泊する今回乗船のフィンマルテン号

  • オーレスンの運河

    オーレスンの運河

夜8時にベルゲンを出向した船は、最も有名なソグネ・フィヨルド(Sognefjorden)をはじめ、大小無数のフィヨルドへの出入り口と3つの寄港地を夜中に通過。朝はじめて目にした町はオーレスン(Ålesund)だった。
大西洋に面する港町で、世界でも有数の鱈の漁獲量で知られている。1904年の大火災で800軒もの家屋が失われたが、その復興の際に、当時流行っていたアールヌーヴォー様式の建物が建てられた。現在も港周辺に建つ建物群は往時を偲ばせる優美な町並みとして知られている。
フッティルーテンはオーレスンからシーズンにより異なるフィヨルドを観光航行する。聳え立つ岩山、紅葉に染まる山肌を縫って行く船の先には、まるで磨かれた鏡のような水面が続く。2時間の航行の末、着いたところは人口40人という村ウルケ(Urke)だった。希望者は小舟に乗り換えて上陸し、V字谷に点在する村を訪ねた。船のエンジン音が止まると静寂さと、波紋ひとつない湖面、見上げる山々に北国の白っぽい太陽が眩しかった。

  • ヨーンフィヨルド・ウルケの村

    ヨーンフィヨルド・ウルケの村

  • 出航翌日には氷河の山々が

    出航翌日には氷河の山々が

  • フィヨルドの朝

    フィヨルドの朝

トロンハイム(Trondheim)

ノルウェー第三の都市で中世には首都として栄えた歴史を持つ古都。12世紀には政治、宗教、文化の面でも重要な町であった。主な見所はバロック様式のニーダロス(Nidaros)大聖堂だ。奥行き101m、幅50m、高さ30mというノルウェー最大の大聖堂の正面には、キリストと生母マリアの像を中心に54の聖者彫刻が並ぶ。1070年の建造以来、なんども破壊と修復を繰り返してきたが、ステンドグラスや彫刻などの内装はノルウェーの多くの芸術家が貢献してきた。内部は撮影禁止。

  • ニーダロス大聖堂

    ニーダロス大聖堂

北極圏へ入って初めて出会ったオーロラ

北極圏へ入って初めて出会ったオーロラ

海を緑に染めて天空を舞った

海を緑に染めて天空を舞った

ボードー(Bodø)

北緯66度33分、北極圏を越えた位置にあり、夏はオスロから真夜中の太陽が、また冬はオーロラに出会うという、オスロから一番近い大きな町として知られる。今では人口約5万人の都市も第二次世界大戦ではドイツ軍による被害を受けた町のひとつでもある。
この夜、オーロラ・ベルトに入ってはじめてのオーロラに出会った。 オーロラは、太陽の黒点運動により発生する微粒子(太陽風)が、地球の大気中の原子や分子に衝突して放電、発光したものという。難しい理論はともかく、天空100kmから500kmに出現するとか。オーロラの色は、衝突した大気中の原子や分子の種類により異なり、またカーテンのようにはためいて見えるのは、地球の磁場に引きつけられ、カーテンのひだは地磁気極に向かって動いているのだと聞く。
この日以来、北極圏を航行中やドライブ中に5日間、ときには1晩3回もオーロラが出現、天空を乱舞する光の饗宴に魅せられ続けた。
とくに昨年から今年にかけ、太陽の動きが活発であること、また好天にも恵まれたことが幸いした。

  • 見上げるとマストの上にも。星が透けて見える

    見上げるとマストの上にも。星が透けて見える

  • 2度目 ボードー北沖のオーロラ。満月に花が咲いたよう

    2度目 ボードー北沖のオーロラ。満月に花が咲いたよう

  • 至極、珍しい満月とオーロラのコラボレート

    至極、珍しい満月とオーロラのコラボレート

ボードーではサルトスラウメン海峡(Saltstraumen)の渦潮見学に参加。
世界で最も危険な渦潮が、潮目の変わる6時間ごとに起こる。世界で最も潮の流れが速い場所。その流れの激しさはナイアガラの滝を超えるそうだが、エクスカーションで行われる渦潮見物だから、と気軽に参加。防寒衣から手袋、救命胴着まで装備を万端に整えてゴムボートに乗り込む。定員10名のゴムボートが巨大な渦潮の中に突っ込んで行く。気軽どころか、とんでもないスリル満点のツアーであった。

  • 渦潮。世界最大という

    渦潮。世界最大という

  • 客は完全装備。ボートは渦に突っ込む。迫力の繰り返し

    客は完全装備。ボートは渦に突っ込む。
    迫力の繰り返し

フィヨルドの漁船

フィヨルドの漁船

トロムソ(Tromsø)

北緯70度に位置し、大学やオーロラ研究所などがある北極圏最大の町だ。町の中心はトロムソ島にあり、本土とは長さ1,036mのトロムソ橋や、全長3,500mの海底トンネルで結ばれている。
トロムソには1968年に創立された大学があり、1万人もの学生が在籍。町は若者向けのショップやカフェもあり、最近ではオーロラ見物の拠点として人気がある。
もう一つ、この町を有名にしたのは19世紀半ば以降、盛んに行われた北極探検で、極地研究基地として重要な役割を担ってきたからだ。トロムソから出発して消息をたった探検家アムンセンの極地探検の業績は周知の通り。港に面した古い倉庫群の一角にある北極博物館にはアムンセン展示室もあり、当時の北極及び南極探検の様子を映した写真や道具などが展示されている。
その他、トロムソ大学の一部を利用した「トロムソ博物館」があり、地学、動物学から考古学、さらに北極圏に住むサーメの人々の生活様式などが展示解説されている。

  • フィンマルケン号の展望サロン

    フィンマルケン号の展望サロン

  • 港にあるアムンセン像

    港にあるアムンセン像

  • トロムソの極地博物館。アムンセンの遺品などがある

    トロムソの極地博物館。アムンセンの遺品などがある

  • アムンセンと極地を歩いた犬の剥製

    アムンセンと極地を歩いた犬の剥製

  • トロンハイムの古い橋と運河沿いの家

    トロンハイムの古い橋と運河沿いの家

  • 北極圏の港

    北極圏の港

  • 連夜のオーロラ。トロムソ沖

    連夜のオーロラ。トロムソ沖

  • 漁村を覆う

    漁村を覆う

ロシア国境の港キルケネス

ロシア国境の港キルケネス

キルケネス(Kirkenes)

ヨーロッパ最北端の岬ノールカップ(Nordkapp)への拠点であるホニングスヴォーグ(Honningsvåg)を経由する往路の終着港であり、ロシアとの国境でもある。約400km先は北極点という町キルケネスに到着。ここにも第二次世界大戦の傷跡が深く残る。

  • ホニングスヴォーグ全景

    ホニングスヴォーグ全景

  • 10月なのに、昼でも太陽は低く、夕方のようだった

    10月なのに、昼でも太陽は低く、夕方のようだった

  • 最果ての街の中心部

    最果ての街の中心部

  • 港には貨物船が一艘だけ係留されていた

    港には貨物船が一艘だけ係留されていた

  • 北極圏の夕暮れ

    北極圏の夕暮れ

次回は「世界で最も美しいところ」のひとつといわれ、海のアルプスとも称えられるノルウェー最大の景勝地(観光地)ロフォーテン諸島へ。北極圏に位置し、氷河の浸食により削られた島々は海から崖が屹立し独特の景観を見せる。島々は橋や海底トンネルなどで結ばれ、全長約350kmも続く。この風光明媚な島々を往復ドライブ。どこを誰が撮影しても「絵ハガキ」になるといわれるロフォーテンを紹介したい。

ノルウェー政府観光局
ノルウェーの観光情報を見られるほか、観光パンフレット(PDF)もダウンロードできる。

取材:2016年10月

  • ※ドライブコースの情報はそれぞれの記事の取材時点のものです。