最北端ノールカップとオーロラとの出遭い(1)

  • 夜空を乱舞するオーロラ

一生に一度は出遭いたい天空を舞う光のショー、オーロラを期待してフィンランド(Finland)へと向かった。ムーミン童話や、サンタクロースの発祥地としても知られているが“森と湖の国”として観光客に親しまれている。
日本からフィンランドまでの飛行時間は約10時間。首都ヘルシンキ(Helsinki)の空港は濃緑の森と無数の湖の中にある滑走路へと着陸する。ここから乗り継ぎ約1時間半、北緯66度の北極圏に位置する町ロヴァニエミ(Rovaniemi)へ。空港でレンタカーに乗り換えた。ヘルシンキから約850km北のこの町は、サンタクロースが住むといわれ、世界中の子供たちの憧れの地でもある。
ロヴァニエミよりさらに北約800km、ノルウェー(Norway)領にあるヨーロッパ最北端ノールカップ(Nordkapp)まで、往復約2,000km、2週間のドライブだ。人のほとんど住まない森林地帯を抜けステップ地帯に入り、さらに岩と苔状の植物しか育たない長い海岸線を走った。何もないように見えるこの大地に、人の営みとその人々の歴史がある。疎林地帯に戻ると小動物が道路を横切り、小鳥やリスが宿の窓辺に訪れる。大平原ではトナカイの群れに出会った。さらに満天の星空に乱舞するオーロラの大きな光にも遭遇、神秘な世界に感動した。

ドライブルート

ロヴァニエミ(Rovaniemi)−イヴァロ(Ivalo)−イナリ(Inari)−ノルウェイ・カラショーク(Karasjok)−ラクセルブ(Lakselv)−ホニングスヴォーグ(Honningsvag)−スカルスヴァーグ(Skarsvåg)−ノールカップ(Nordkapp)−アルタ(Alta)−フィンランド・エノンテキオ(Enontekiö)−ペッロ(Pello)−ロヴァニエミ

全行程 約2,100km、今回行程 約900km

<赤いドライブルート付近のマーカーをクリックするとその項目にジャンプします>

  • サムネイル1
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ロヴァニエミ(Rovaniemi)

フィンランドは英語名であり、自国民は湖や池を意味する民族の言葉であるスオミ(Suomi)と呼ぶ。その名の通り国土の8割が森林と18万もの湖沼などからなる。
ロヴァニエミは、首都ヘルシンキから約800km北、ほぼ北極圏線(北緯66度33分)上にあり、人口約6万人のラップランドの州都である。1944年ナチス・ドイツ軍により徹底的に破壊された歴史を持つ。現在は周囲を白樺の林に囲まれた近代的な町で、冬には氷点下40度にもなる極寒の町でもある。ウインタースポーツの施設も多く、約8km北にはサンタクロースが住むというレジャー施設の村がある。

  • ロヴァニエミ空港前にトナカイの飾り

    ロヴァニエミ空港前に
    トナカイの飾り

  • ニックネームはサンタクロース空港

    ニックネームは
    サンタクロース空港

  • ロヴァニエミの町並み

    ロヴァニエミの町並み

博物館・アルクティクム

博物館・アルクティクム

ロヴァニエミはオウナス川、ケミ川などの大河の合流地で、それらの川の流域に広がる町は3本の大きな橋で結ばれている。なかでも町の中心部とスポーツ施設や高級ホテルが建つオウナスヴァーラ(Ounasvaara)の丘を結ぶ、たいまつをイメージしたというローソク橋は、この町のシンボルだ。橋を渡った丘の上のホテルは、夏ならば“沈まない太陽”、冬は“オーロラ”の見物に適したところと、観光客に人気がある。
その他、市内の見所は、北極圏に関する博物館・アルクティクム(Arktikum)がある。川に面して建つガラス張りの建物で、ラップランドの自然、歴史、生活史などを知ることができる。

  • たいまつをイメージしたという橋

    たいまつをイメージしたという橋

  • 郊外は湖と川

    郊外は湖と川

サンタクロース村

毎年クリスマスが近づくと、テレビなどでトナカイに乗った白い髭に赤い服、プレゼントをたくさん持ったサンタクロースのニュースが流れる。世界に向けて出発していく姿が映し出され、その映像を観た子供達はこのサンタクロースを心待ちにしているだろう。

  • サンタクロース村。事務所、サンタの部屋、土産物など盛りだくさん

    サンタクロース村。事務所、サンタの部屋、土産物など盛りだくさん

  • クリスマス着の郵便箱。日本の国旗もある

    クリスマス着の郵便箱。
    日本の国旗もある

  • この色のポストは当日の日付で発送される

    この色のポストは当日の
    日付で発送される

  • サンタさんは午前、午後とも約3時間ほど接客

    サンタさんは午前、午後とも約3時間ほど接客

  • 郵便局内は手紙の到着日なども教えてくれる

    郵便局内は手紙の到着日なども教えてくれる

約80年前、北極のトナカイの餌不足を理由にロシアとの国境に近いラップランドのコルヴァントゥントゥリというところにサンタクロースが引っ越してきたという。そこは山の中のため、ラップランドの州都であるロヴァニエミに世界中の子供達からサンタ宛ての手紙が届くようになった。
そのため1985年に8km北、北極圏の入り口にサンタクロース村を作ったという。現在サンタクロースは毎日コルヴァントゥントゥリからこの村へ通い、訪れる人々や手紙に託したみんなの願いを叶えてくれているとか。村内には郵便局があり、ハガキにはサンタクロース村のスタンプが押される。今はクリスマスに届くメールサービスもあり、すぐ届くものとクリスマスシーズンに届くという2つのポストがある。
館内には、クリスマスグッズやトナカイの皮、その製品などフィンランドならではの土産物屋、レストランも併設されている。さらに広い敷地内にはサウナ付きのコテージがある。

  • コテージは清潔で気持ちが良い

    コテージは清潔で気持ちが良い

  • シャンデリアはトナカイの角で作られている

    シャンデリアはトナカイの角で作られている

  • サンタ村中心の建物入り口

    サンタ村中心の建物入り口

  • ムーミンの皿も…

    ムーミンの皿も…

  • 店先にはトナカイがお出迎え

    店先にはトナカイが
    お出迎え

  • サンタクロースの家の窓

    サンタクロースの家の窓

イヴァロ・サーリセルカ(Ivalo・Saariselkä)

ロヴァニエミから北へ約300km、国内2番目の広さを持つウルホ・ケッコネン国立公園のそばにある小さな町。近くには公園の自然を満喫するための施設も揃っている。夏には沈まない太陽がいつまでも輝く中、ハイキングやトレッキングを楽しむコースもたくさんある。冬には犬ぞりやクロスカントリースキーが楽しめる。また、大空を光が乱舞する、オーロラに出遭う場所でもある。
とくにオーロラを見るために設計されたという宿泊施設「グラスイーグル」(ガラス張りのテント)がある。暖かい室内で寝ころびながらオーロラ観賞ができるというが、オーロラは自然現象、いつ出現するかわかないオーロラに期待して、1泊約500ユーロ(約7万円)は高いか、安いかは人それぞれの価値観だ。
営業は11月〜4月。取材日(9月下旬)は施設のほとんどが営業していなかった。

イナリ(Inari)

イヴァロより約40km北に位置するラップランド最大の湖(長さ約80km、幅約40kmのイナリ湖(Inarijarvi)。そのほとりに位置する人口600人余りの小さな村。サーメ(ラップランドに住む先住民族)の人々を紹介する複合施設があり、シャーマンの太鼓など彼らの精神文化を伝える博物館やオーロラのビデオが上映されるシアターもある。しかし、こうした施設のオープン期間は6月から9月中旬までのため、すでに閉鎖されていた。
夏のシーズンには湖をめぐる遊覧船があり、サーメの先祖が祀られた島々などを巡るツアーもあるが、9月末の湖は湖畔にはシーズンを終えた遊覧船と水上飛行機が停泊しているだけで静まり返っていた。
北緯60〜70度の間がもっとも良く見られるというオーロラ、まさに北緯69度に位置するイナリは「頭の真上に光りの帯が広がるの、それは幻想的でロマンチックよ」と湖畔に面したレストランで聞いたウェイトレスの言葉。「幸運を祈る」ともいったが、残念ながらこの夜もオーロラは現れなかった。

  • 湖畔のレストラン

    湖畔のレストラン

  • 横断は気をつけて

    横断は気をつけて

  • つぶらな瞳のトナカイの子

    つぶらな瞳のトナカイの子

  • 湖畔を歩くトナカイの親子

    湖畔を歩くトナカイの親子

  • 夕暮れのイナリ湖

    夕暮れのイナリ湖

  • イナリ湖畔のレストラン。鮭、ますの料理がおいしい

    イナリ湖畔のレストラン。鮭、ますの料理がおいしい

ノルウェー(Norway)

ノルウェー国境への道。起伏が多い

ノルウェー国境への道。起伏が多い

イナリからナショナルロードE75を離れ、田舎道95号線を約70km、国境を越えノルウェーへと入る。国境のゲートはない。ノルウェーは1944年の国民投票でEU(欧州連合)加盟を否決、そのため通貨はユーロではなくノルウェークローネのまま。だが国境のゲートもなく建物は税関の小屋が一つ。そこも無人だった。もちろん銀行もない森の中で越境だ。
最初に着いた町はカラショーク(Karasjok)でスカンジナビア半島北部ラップランド地方に生活するサーメの首都と呼ばれているところ。人口約2,500人の町だが、銀行も見つからない。立ち寄ったガスステーションは、コンビニの役目も果たすところで若者が集まる数少ない場所だ。飴やコーラ一つにもプリペイド、またはクレジットカード決済だった。
ここもまたサーメ文化に触れる施設があるところだったが、あいにく閉鎖中。

  • フィンランド、ノルウェー国境。左に税関の建物はあるが無人だった

    フィンランド、ノルウェー国境。
    左に税関の建物はあるが無人だった

  • 国境の川と橋

    国境の川と橋

  • 最初の町へは一車線の橋を信号に従い交互に渡る

    最初の町へは一車線の橋を信号に従い交互に渡る

  • カラショークのGS。コンビニも兼ねて、若者のたまり場でもある

    カラショークのGS。コンビニも兼ねて、
    若者のたまり場でもある

最北端の岬ノールカップ(Nordkapp)

イナリよりカラショークを経て、ヨーロッパ最北端ノールカップまで約450km。途中フィヨルドの深い湾の奧に位置するラクセルブ(Lakselv)に一泊、翌朝ノールカップを目指した。
木も途絶えたステップ地帯、ときに放牧されたトナカイの群れを見る以外、全く人影もない中、道だけは果てしなく続く。やがて出合った海は、深く入り込んだ湾の淵、その曲がりくねった海沿いの道を走ること約150km。ついに北緯71度10分21秒、ヨーロッパ大陸の北端に位置するマーゲロイ(Mageröya)島に辿り着く。マーゲロイ島まではフェリーを使っていたが、1999年に全長6,870mの海底トンネルが開通し、アクセスがとても便利になった。

  • フィヨルドに添って北上

    フィヨルドに添って北上

  • 北の果ては近い

    北の果ては近い

  • ノルウェーの観光案内兼コンビニはバイキングがお出迎え

    ノルウェーの観光案内兼コンビニはバイキングがお出迎え

  • 6,870mの海底トンネルが、島でもあるノールカップをダイレクトに繋ぐ

    6,870mの海底トンネルが、島でもある
    ノールカップをダイレクトに繋ぐ

  • ツンドラのトナカイ

    ツンドラのトナカイ

  • ノールカップへの道。崖の内側は緩やかな丘陵

    ノールカップへの道。崖の内側は緩やかな丘陵

岬は高さ307mもの急峻な崖の上。先端には地球をモチーフにしたモニュメントが建つ。崖の淵には柵が張り巡らされているが、下を覗けば絶壁が海から直立している様子に足がすくみそうになる。
夏の白夜には見渡す限りの水平線上を太陽が這うように進み、沈まない太陽を見続けることができる。また冬には太陽のない暗闇と雪と氷に覆われた世界となる。大自然が織りなす最果ての風景に誰しもがロマンを感じるだろう。

  • 最北端には地球儀をかたどったモニュメント

    最北端には地球儀をかたどったモニュメント

  • 北を示す矢印

    北を示す矢印

  • 北岬は切り立った断崖

    北岬は切り立った断崖

  • ノルウェー、スウェーデン連合王国のキング・オスカーUが1873年7月2日岬に立った記念碑

    ノルウェー、
    スウェーデン
    連合王国の
    キング・オスカーUが
    1873年7月2日
    岬に立った記念碑

  • ノールカップ付近は岩壁とフィヨルドの連続

    ノールカップ付近は岩壁とフィヨルドの連続

岬のモニュメントの手前には最果てのイメージとはかけ離れた大きな円形の建物がある。ノールカップホールだ。施設内は1階にカフェ、レストラン、みやげ物屋があり、地下には郵便局や島の自然を紹介するコーナーがある。その他、ノールカップ発見に関する資料やサーメの歴史が展示されている。さらに最北端で結婚式というわけか、チャペルまであるのには驚いた。

  • ノールカップ・ホールへの入り口

    ノールカップ・ホールへの入り口

  • ホールの地下では北緯71度10分21秒。欧州最北端の岩盤が覗ける

    ホールの地下では北緯71度10分21秒。欧州最北端の岩盤が覗ける

フィンランド政府観光局
「旅の目的地」では、ラップランド、湖水地方、沿岸地域と群島、ヘルシンキに分けて観光の魅力が紹介されている。

取材:2015年9月

  • ※ドライブコースの情報はそれぞれの記事の取材時点のものです。