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キプロスの旅(2)



1回目では古代遺跡の宝庫キプロスを紹介したが、今回はキプロスの現在と山岳地帯の自然、人々の暮らしや食べ物などに触れながらドライブの旅を続けようと思う。

地理的には中東に近く、地中海の東の端にあるキプロスは古くから中東、アフリカそれにヨーロッパへの拠点、または中継点として昔から重要な位置にあった。それだけにいろいろ多くの支配を受けてきた歴史がある。
近代では1960年の独立まではイギリスの支配を受け、今も国内に2ヶ所の大きな軍事基地がある。

キプロスにはもともとギリシャ系とトルコ系住民が共存していたが、独立後二つの民族間での紛争が絶え間なく続いた。1974年ギリシャ系軍人によるクーデターを機に、トルコが自国民保護という名目で北部に派兵。全土の4割を占領した。それ以来25年後の現在も分断状態が続いている。
国連はギリシャ系政府を正統な政権と認め、平和維持軍を派遣。分断されたラインは“グリーンライン”と呼ばれ、首都レフコシアはかつてのベルリンと同じく壁で分断されている。
古代ギリシャ前、ミケーネ時代から、また美の女神アフロディテの誕生の地であり、現在は北ヨーロッパの人々のポピュラーなリゾート地でもある楽園のような国は、なかなか難しい問題を抱えたところでもある。





ラルナカ(Larnaca)−レフコシア(Lefkosia)−レメソス(Lemesos)−トロードス(Troodos)−パフォス(Pafos)
約150km、日帰り




<ルート付近のリンクポイントの地名をクリックしてみてください>



●首都レフコシア(Lefkosia)

レフコシアのマーケット、共存の昔が偲ばれる ラルナカ(Larnaka)から北へ約40km。リゾート地レメソス(Lemesos)から約60km。いずれも高速道路で結ばれている。
新市街は近代的なビルが立ち並び、商店のショーウィンドウにはヨーロッパ各国のブランド品や最新ファッションの衣類などが目につく、どこにでもある町の風景だ。キプロスは人口約76万人程度(2000年推計)の国なので、首都といっても町の規模は小さい。

分断された都市。正面が道を閉ざす壁 高速道路の終わりはそのまま新市街を抜けて城壁へ。ヴェネチア時代の城壁に囲まれた町。ここからが旧市街だ。
城壁に沿うように走ると、まず最初に驚かされるのは、道路が突然途切れ銃弾の跡を生々しく残した廃墟と監視所に出くわしたこと。高い壁とはりめぐらされた鉄条網にかつてのベルリンの壁を思い出す。
しかし、緊張感はない。旅行者が監視所に近づいても4人いた監視員はおしゃべりに夢中。「写真を撮ってもいいか?」とカメラを向けたら[Yes」という。

境界の家の有刺鉄線が厳しい 旧市街の狭く曲がりくねった道(ほとんどが一方通行)へ入ると、またも分断の壁。
城壁で丸く囲まれた旧市街の半分が分断されているので、町の至るところで壁にぶつかる。
石造りの家の半分も分断され、トルコ住民側は廃墟、ギリシャ住民側は住居やレストランになりその名も“ベルリン”という茶屋まである。
観光客には壁の向こう側を見せるための物見台もある。こわごわ覗いたら、ただ廃墟があるだけだった。

○キプロス考古学博物館

レフコシアの博物館 旧市街の東、城壁に沿うように建つ博物館は建物は小ぶりだが、展示物は紀元前5800年ころの新石器時代からビサンチン前期まで、長い歴史を物語る貴重なものがいっぱい詰まっている。
実用や埋葬に使われた土器や素焼きの壺、人物や動物、青銅の車のついた台座などが無数にある。クリオン(レメソス近郊)の遺跡から出土したという紀元前11世紀の黄金の2羽の鷲など、当時の見事な彫金技術など多くの出土品が保存状態のよいことから、古代が身近なものとなって見る人をより感動させる。

もう一つ見逃せないのは「レダと白鳥」のモザイクだ。
ギリシャ神話とトロイア戦争の引き金となった美女の物語だ。
レダは白鳥に姿を変えたゼウスと恋をして二人の娘を生んだ。姉はミケーネの総大将アガメムノンの妃となったクリタイメストラ、妹はトロイアに略奪された絶世の美女ヘレネ(ヘレン)。このあたりは神話と歴史が渾然とした世界だ。(1876年にドイツの商人で考古学者でもあるシュリーマンによってミケーネとトロイアを発掘され、史実とされた)
モザイクが出土したところはキプロスの西パフォスで、制作されたのは3世紀。残念ながら館内は撮影禁止だった。

●トロードス山中
四国より少し小さいくらいの面積のキプロスだが、ほぼ中央には最高峰オリンポス山(1,951m)をはじめ高い山の連なるロードス山群がある。
冬には降雪があり、シーズンは短いがスキーも楽しめる。地中海に雪が降るとは想像し難いが、オリンポス山周辺は夏の避暑地であり、冬はスキー場の設備を持ったリゾート地なのだ。

キプロスの山岳地帯 レメソスより北へ約40km。やまなみを縫って走るドライブウェイは全面舗装道路で快適だ。ときには勾配18%というとてつもない急な坂道もあるが、やがて乾燥した茶褐色の山に緑が増す。熱かった風もさわやかになり、車内の冷房を切って窓をいっぱいに開ける。
丸いオリンポス山頂には電波通信などのアンテナが立ち、周辺には分断された北部への監視塔や兵舎などがあるが、緊張感はない。近くにはスキー場がありリフトの鉄塔も見える。
ただ、国のどこからでも日帰りができるので、宿泊施設は少ない。

○人々の暮らし

教会を中心とした山村 トロードス山群の奥にも町や村があり、そこには人々ののどかな生活がある。
ギリシャ教会を中心とした集落は、主に果実、とくに古くから伝わるワインの葡萄、キプロスが原産地ともいわれているオレンジやプラム類を栽培している。

チェリー売りの親子 6月はサクランボの季節でもあった。種類はアメリカンチェリーのような赤黒く熟れたものと佐藤錦に似たものがある。沿道で農家のおばさんたちが売るサクランボはどちらも1kg、1キプロス・ポンド(約180円)。値切ればもっと安くなると聞いたが、値切るには気の毒なほど安い。もちろん甘くておいしい。

○ワイン

秋になると葡萄の収穫期、各地でワイン祭りが開催される。
キプロス島の葡萄栽培は古く、紀元前9世紀ごろのものといわれる。ガイドブックなどによると「キプロスはワインの発祥地」となっている。だがギリシャのアルゴス地方にも同じ言い伝えがあるので確かなことは不明だが、それほど古くからワインづくりが行われていたことだけは確かである。また、いまでもこの島には世界でも珍しい古代種の葡萄が生き残っているという。
太陽に恵まれた土地で育った甘い葡萄はキプロス最高のワインといわれる甘いデザート用のコマンダリアをはじめ、種類も多い。大小たくさんのワイン工場でつくられるものは、どれも甲乙つけがたく、レストランで薦められてもスーパーマーケットでも買っても外れはない。甘口と辛口のドライがあり、一般的にはどれもさっぱりとした味だ。

○料理

小型トラックで売りに来る魚屋さん 料理はキプロス独自のものというより、ギリシャとほぼ共通で、なすを挽肉で和え香辛料などを加えパン生地にはさんで焼いた“ムサカ”、中東のシシカバブーに似た豚、牛、羊の串焼きなどがポピュラーだ。
豊かな海の幸の料理は蒸す、焼く、揚げるといったシンプルなものが多く、いかやたこを好んで食べる。スーパーでは生魚はあまり見かけず、冷凍ものが多いが新鮮な魚は車で行商人が運んでくる。海に囲まれていながら、魚料理は他の物価に比べて割高だ。

○キプロス・ラリー

トロードス山群は深い山のようでも狭い島のこと、眺望のよいところからは遠くに海が望める。
山の中には縦横に道が走り、町や村を結ぶ一般道は舗装されているが、ダートも多い。こうしたダートの山道で、ラリーレースで有名なWRC世界ラリー選手権は、2年前よりキプロス・ラリーとして開催されている。
ガードレールもなく対向車とのすれ違いも大変な石だらけの道、一つ誤れば深い谷へ落ちるこのコースをラリードライバーが駆け抜ける。普段は静かなトロードス山群もこの日は地元をはじめヨーロッパ各地からファンの車が山道を埋めた。(今年は5月22〜25日開催)

●キュッコ修道院

キュッコ修道院 オリンポス山から西北へ約15km、急な山道を上り下りしたところで大きな修道院に出会った。
キュッコ修道院だ。イコンを参拝に訪れる人も多い。

ここからパフォスまで約60km、山を下る。
午後7時、まだ太陽のある夕方、パフォスの海岸沿いでは涼を求めお茶を楽しむ人々が繰り出すころ。レストランではテーブルの用意がはじまった。
これから夏にかけては午後8時すぎに、暑く長い一日の太陽が沈む。
キプロスはゆったりと時間の流れる国である。



CYPRUS
Cyprus Tourism Organizationによるサイト。キプロスへのアクセスや観光情報が英語で提供されている。

取材:2001年6月