クロアチアの旅(5)

海から見るロヴィニクロアチアの国土は、首都ザグレブを中心とする肥沃な農地が広がる中央部、アドリア海沿岸に古い町並みが点在するダルマチア地方、北西部のイストラ半島など、それぞれ異なる魅力を持つ。前回までは、主に美しいアドリア海と中世の町並みや人気のリゾート地を紹介したが、今回は北にスロヴェニアとイタリアとの国境を持つ半島、イストラ地方を巡る。
半島の先端にはローマ時代の円形劇場やアウグストゥス神殿などがあり、その少し北には今もヴェネチアへの航路を持つ世界遺産の町ロヴィニがある。森林の多い半島の中心部は、世界三大珍味といわれるトリュフ(黒)の産地であった。

コース

ザグレブ(Zagreb)−オートルートA1−ザダール(Zadar)−ニン(Nin)往復−シベニク(Šibenik)−N106号線−パグ島(Pag)−ザダール−E65号線−トロギール(Trogir)−スプリット(Split)−マカルスカ(Makarska)−ストン(Ston)−ドブロヴニク(Dubrovnik)−モンテネグロ・コトル(Montenegro-Kotor)−E65号線−ボスニア・ヘルツェゴビナ(Bosnia-Herzegovina)モスタル(Mostar)−オートルートA1−ザダール−E65号線−ラブ(Rab)島−リエカ(Rijeka)−イストラ(Istra)半島・プーラ(Pula)−E751号線−ロヴィニ(Rovini)−ポレチュ(Poreč)−パズィン(Pazin)−モトヴン(Motovun)−オートルートA7−A1−ザグレブ

行程 約1,500km

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ラブ(Rab)

ザダールより東に約30km、細長いカナール(Kanal)湾の東岸を北へと走る。この道はリエカへ続く約150km、アドリア海の島々を望みながら走るすばらしいドライブウェイだ。
ただし海岸線にそって続く道はカーブが多く、人の住む町や村までの距離も長い。ときには人家さえ見当たらない長い道のりでもある。ましてやカフェやレストランもほとんどないので、飲み水や食料の用意も必要だ。また、ガソリンスタンドも少ないので、見かけたら満タンに給油をお勧めする。
そんな長い道のりのほぼ中間地点に、紀元前15世紀にはすでに人々の集落があったというラブ島へのフェリー乗り場がある。そこはヤブラナツ(Jablanac)という。乗用車が20台ほど積める小型フェリーで、夏期は2隻でピストン運行している。ラブ島へは片道15分の距離だ。

  • ラブ島へのフェリー乗り場へ

    ラブ島へのフェリー乗り場へ

  • 前後同じ形。旋回の手間がない

    前後同じ形。旋回の手間がない

  • 旧市街の背後には城

    旧市街の背後には城

  • 旧市街は頑丈な壁に囲まれている

    旧市街は頑丈な壁に囲まれている

船着き場から旧市街までは車で約10分。ローマ時代には、初代ローマ皇帝アウグストゥスにより自治が認められ、交易による繁栄を謳歌したという。

最も高い鐘楼から3つの鐘楼を望む

最も高い鐘楼から3つの鐘楼を望む

城壁に囲まれた旧市街に残る建造物の多くは中世のもので、4つの鐘楼のなかで最大のものは、12世紀ローマ教皇アレクサンデル3世が建てた大聖堂に聳える。現在も町のシンボルでもある。高さ25mもあり、鐘楼の内部は狭い階段で上ることができる。塔の上からは旧市街の全容が眺められるばかりか、コバルトブルーの海原と透明度の高い澄んだ水に、小舟が行き交うのどかな風景を観ることができる。

イタリアの内陸にある国、サンマリノ共和国の建国者である聖マリヌスは、このラブ島の出身者で、旧市街にある公園に銅像が建てられている。現在ラブ島とサンマリノは姉妹都市となっている。

  • サンマリノを建国した聖マリヌス像

    サンマリノを建国した聖マリヌス像

  • ラブ島・大聖堂の鐘楼

    ラブ島・大聖堂の鐘楼

  • 聖マリア大聖堂

    聖マリア大聖堂

  • 鐘楼から

    鐘楼から
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再び国道E65号線に戻るとリエカ方面へと向かう。途中セニ(Seni)という小さな町にある、ローマ時代の遺跡に立ち寄りながらのドライブを続けた。

  • 鐘楼直下の海

    鐘楼直下の海

  • セニはローマの石像、壺など沢山発掘される

    セニはローマの石像、壺など沢山発掘される

リエカ(Rijeka)

アドリア海の北部、イストラ半島の付け根に位置するクロアチア第3の都市。15世紀にハプスブルク帝国の貿易港として発展、現在もクロアチア最大の貿易港で大型フェリーはここを拠点に運行されている。町は海岸沿岸部とは異なり、オーストリアやハンガリーの影響を受けた建物が多く残っている。
これよりプーラ(Pula)へは、市内を迂回する新しい高速道路もできているが、昔の市街地を抜ける道を選び、車窓から見えるリエカの町を見物しながらイストラ半島へ。

  • リエカは海岸沿いを走った

    リエカは海岸沿いを走った

  • リエカはオーストリアやハンガリー風の建造物が多い

    リエカはオーストリアやハンガリー風の
    建造物が多い

プーラ(Pula)

イストラ半島の最南端に位置するプーラはギリシャ神話、イアソンとメディアが奪った黄金の羊毛を取り返しにきたコルキスの民が築いたという伝説の残る町だ。その後ローマ時代には交易の中継地として栄えた。三千年の歴史を持つアドリア海東岸最古の町で、古代から行政の中心地であった。

双子門

双子門

紀元1世紀に建造されたという円形劇場やアウグストゥス神殿の他、セルギ門、ヘラクレス門、双子門、城壁など古代ローマの遺跡が今も市内に残されている。その保存状態もよく、現在のローマに残るコロッセオ同様に往時の繁栄が偲ばれる立派なものだ。
12世紀に入ってヴェネチア共和国の支配下となり、旧市街全体は、ローマ時代の雰囲気もさることながら教会や要塞など中世の面影が色濃く残されている。

円形劇場(Amfiteatar)

一般には円形劇場と呼ばれているが、ローマ時代には剣闘士たちの戦いの場であり見世物の場であったところ。長径130m、短径100mの楕円形で、客席は2万5,000人収容できたという。ちなみに同時代に建設されたローマのコロッセオの2分の1である。
いまこの円形劇場は舞台や客席が修復され、夏にはオペラやコンサート、映画の上演などが行われている。

  • プーラの競技場跡

    プーラの競技場跡
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  • 夏の夜、音楽会なども開かれる

    夏の夜、音楽会なども開かれる

セルギ門

セルギ門

セルギ門(Slavoluk-Sergijevaca)

紀元前27年に建てられた凱旋門。ローマ帝国に仕え功績を積んだセルギウス家のために建造されたという。
旧市街への入り口に建つ門の上部には、勝利の女神ヴィクトリアのレリーフや門全体に施された繊細な彫刻がある。これらを観ようと多くの観光客が立ち止まり、門の周辺に並ぶカフェや土産物屋には人が溢れていた。

  • 地中海料理?白身の魚フライ

    地中海料理?白身の魚フライ

  • 料理はイタリア風だ

    料理はイタリア風だ

アウグストゥス神殿

アウグストゥス神殿

アウグストゥス神殿(Augustov-Hram)

旧市街のフォーラム広場に建つ神殿で、紀元1世紀、初代ローマ皇帝アウグストゥスの治世を称えるために建てられた。
正面に4本、側面に2本のコリント式の列柱がある神殿は、後にローマ帝国キリスト教の影響を受け衰退、その後は食料貯蔵庫などさまざまな用途を経て、現在は考古学博物館の別館としてローマ時代の彫刻などが展示されている。

ロヴィニ(Rovinj)

プーラより約40km北、アドリア海に面したイストラ半島随一の景観を誇る港町といわれている。13世紀から18世紀にかけて500年もの間ヴェネチア共和国に併合されており、また近年1900年代の一時期にイタリアの支配下でもあった。現在も町の1割がイタリア系住民であり、公用語もイタリア・クロアチアの二カ国語表記だ。

  • 海から見るロヴィニ

    海から見るロヴィニ
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  • 旧市街前の広場。埋め立てられたところ

    旧市街前の広場。埋め立てられたところ

  • 家は海ギリギリに建つ

    家は海ギリギリに建つ

  • ロヴィニ旧市街への門

    ロヴィニ旧市街への門

ベネチアの紋章

ベネチアの紋章

旧市街はかつての島の岬部分につくられた城塞都市だったが、18世紀に海峡が埋め立てられ本土とつながった。
この旧市街の入り口のバルビ(Bolbijev)門にはヴェネチアのシンボルである「サン・マルコのライオン」のレリーフが刻まれている。かつてヴェネチア共和国の一部であったことを示している。

  • 旧市街に住む人々の生活風景

    旧市街に住む人々の生活風景

  • 教会への坂は土産物屋の列

    教会への坂は土産物屋の列

旧市街のある半島は、小高い丘状の地形で、その頂に建つ聖エウフェミヤ教会へは細く入り組んだ石段の道を上る。狭い路地や石段の両脇には石造りの民家がびっしりと建ち並び、中世そのままのような世界に、いまも人々の生活があった。

丘の上に建つ聖エウフェミヤ教会

丘の上に建つ聖エウフェミヤ教会

密集した住宅街から抜けだすと、明るく広々とした教会の庭に出た。イストラ半島で最も高い60mの高さを誇る鐘楼を持つ聖エウフェミヤ教会はローマ帝国時代に迫害を受け、闘技場でライオンにかみ殺され殉死したエウフェミヤの棺が納められている。
内部にはエウフェミヤがライオンに襲われる場面を描いた絵が飾られている。

  • 中世の見張り台も今はカフェに

    中世の見張り台も今はカフェに

  • 聖エウフェミヤ教会内部

    聖エウフェミヤ教会内部

ロヴィニの沖合には古い灯台島がある

ロヴィニの沖合には古い灯台島がある

教会の広場からは、碧く輝くアドリア海が一望できる。また旧市街の外には新しいリゾート地が広がり、近代的ホテルが建ち並び、海水浴客で賑わうビーチも見渡せる。

  • ロヴィニの海水浴場

    ロヴィニの海水浴場

  • 旧港は漁船で一杯

    旧港は漁船で一杯

ポレチュ(Poreč)

ロヴィニから直線で結べば約10km北だが、深い湾の入り江には橋がなく、いったん、E751号線へ出て再び海沿いへと走る。その距離約25km。
歴史は古く、紀元前2世紀ごろからこの小さな半島につくられた古代ローマ都市で、13世紀にはヴェネチア共和国に組み込まれたが、19世紀のハプスブルク帝国時代にはイストラ半島の地方行政を担っていたところ。

  • ポレチュ、エウフラシス聖堂の路地

    ポレチュ、エウフラシス聖堂の路地

  • ポレチュ旧市街のレストラン

    ポレチュ旧市街のレストラン

この貝(トンドレ)はとてもおいしかった

この貝(トンドレ)はとてもおいしかった

旧市街はローマ時代の土台にビサンチン帝国、ヴェネチア共和国、オーストリア、ハンガリーとさまざまな時代にわたる歴史的建造物が建つ。この町の最大の見どころは、1997年にユネスコの世界文化遺産に登録されたビサンツ帝国時代に建てられたエウフラシス聖堂だ。

エウフラシス聖堂(Eufrozijeva-Bazilika)

小さな半島の旧市街、町の区画は古代ローマの都市計画に基づいてつくられたそのままの構造だという。聖堂への入り口は細い路地の間にある。注意しないと通り過ぎてしまいそうだ。
ビサンチン様式で建てられた聖堂の内部は、精巧なモザイク画をはじめ、黄金に輝く荘厳な祭壇の後ろには聖マリア、教会を建てたエウフラシスなどの聖人のモザイク画が並ぶ。さらに、教会が建てられた以前のモザイク画の床が地下に保存されている。

  • エウフラシス聖堂内庭から鐘楼

    エウフラシス聖堂内庭から鐘楼

  • 聖堂内

    聖堂内

古いモザイク

古いモザイク

聖堂の隣には博物館があり、宗教絵画やモザイク画などが展示されている。また聖堂の回廊から望む教会の塔へは、急なはしご状の階段を上る。塔の上からは、海に突き出た旧市街全体と、アドリア海が一望できる。

プチューン神殿跡

プチューン神殿跡

ネプチューン神殿跡(Neptunov-Hram)

半島の先端、旧市街のはずれの丘の上に、海神ネプチューンを祀った神殿跡がある。
2世紀に建てられてものだが、いまは壁や柱の一部が残されているだけ。住宅に囲まれた一角、一見公園のようなところにわずかな遺構を残すのみだが、当時は海を一望した高台に建つ、アドリア海屈指の大きさを誇る大神殿であったという。

モトヴン(Motovun)

イストラ半島の内陸部、パズィン(Pazin)から北へ約20km、緩やかな山々の中を縫うように続く道、峠を越えカーブを曲がると突然、谷越しの山上に聖ステパン教会の鐘楼を囲むモトヴンの丘と村が現れた。急勾配の石畳の町モトヴン旧市街は「黒いダイヤ」といわれる高級食材トリュフの産地だ。山裾のブドウ畑と、その周辺には「トリュフの森」と呼ばれる森が広がるグルメには憧れの地だ。

  • 丘の上がモトヴンの村

    丘の上がモトヴンの村
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  • 丘の頂上、城からの展望

    丘の頂上、城からの展望
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教会に続く急勾配の狭い道沿いには、生の黒トリュフをはじめ、オリーブ油に漬けたトリュフやワインなどを売る店が並ぶ。トリュフ料理を食べたい人は隣町リヴァーデ(Livade)へ。ここにはクロアチアやイタリアでトリュフ販売専門の会社による高級レストランがあり、トリュフ尽くし料理が堪能できる。

  • 様々にアレンジしてトリュフが売られている

    様々にアレンジしてトリュフが売られている

  • 今は犬がトリュフを探す

    今は犬がトリュフを探す

クロアチア政府観光局
クロアチア観光のみどころや各地方の説明、アクティビティ、宿泊施設などの情報が見られる。

取材:2013年7月

  • ※ドライブコースの情報はそれぞれの記事の取材時点のものです。