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ANA機内誌『翼の王国』2007年1月号掲載誌より抜粋

[愛媛県大三島]

あけましておめでとうございます。
さて年もあらたまり、新年の第一号。というきっかけもあり、広告をちょっとマイナーチェンジした。ひとつは見ての通り、文字をスミ色にして、これまでよりもコピーを読みやすくしてみた。もうひとつは、これは広告そのものの直接的な変化ではないが、私以外のスタッフが単独で取材活動をディレクションした。ベースの企画は私で組み立てたが、そこから先は、ほぼすべて彼が独力で遂行した。まあ、「良くやった!」と言ってやりたいところではあるが、「俺は俺の目を信じる」と言ってひとの話を聞かないこと聞かないこと…。取材計画は直前までできないわ、事前に言っておいたのに「ANA@desk」を使わずに事後精算するわ、取材してきた内容を一切報告しないわ、挙句の果てには…。
 ms氏、このコンテンツの写真、どうやって用意したのか。この場で白状して懺悔するように! ともあれ、体調の悪い中、お疲れさんでした。(tk)

「しまなみ海道」は、これまでとは一風変わっている。元々道があったわけでなく、あるのは海と島だけ。もちろん船の往来は太古より盛んで、その意味では穏やかな瀬戸内海すべてが「道」だったのかもしれない。そして現在、この地域には7つの橋が架かり、本州と四国をひとつに繋ぐ道となっている。まさにこの「道々の拾い物」に取り上げるに相応しい道だ。tk氏がこの「しまなみ海道」を企画段階から訪れたい道として挙げていたのもうなずける。(ごめんなさい、きっと自分が提案した「しまなみ海道」に行けなくて拗ねているんですね? 確かに素晴らしいところでしたよ。)
唯一残念だったのは、ETCカードを用意できなかったこと。各島を有料道路で繋ぐしまなみ海道には必需品となる。取材を終える頃には財布が小銭だらけになっていた。レンタカーにはETCが付いていただけに悔やまれた。(ms)

[ライターの旅のあとくち]

取材2日目のランチは、大島の道の駅「よしうみいきいき館」で名物の七輪焼きを味わいました。生簀の中から好みの魚介類を自分で選べるのですが、不慣れな私たちは「おまかせセット」に。大アサリ・タコ足・サザエ・瀬戸貝・はまぐり・緋扇貝(ヒオウギガイ)・海老に鯛めしが付いたセットです。隣合わせた地元の人が、「これを絞ってかけると、おいしいよ」とスダチを分けてくださったので、おいしさ倍増。来島海峡大橋を間近に仰ぎ見て、頬に潮風を感じながら食べる海の幸は、最高の贅沢でした。

今回の宿は、廃校になった小学校を民宿にした大三島「ふるさと憩いの家」。映画『船を降りたら彼女の島』のロケ地兼宿泊所となったところです。目の前にはプライベートビーチと呼びたい白砂の浜辺が広がり、廊下には海から上がってきたカニがヨコ歩きしていました。私たちが泊まった部屋は「保健室」で、食堂は「給食室」。テーブルを埋め尽くした海の幸で、取材の疲れは吹っ飛びました。(mt)

[イラストのはなし]

今回訪れた中で一番の存在感を見せていたのは「大山祇神社」である。日本総鎮守と呼ばれ、時の権力者たちも大勢参拝したことは、境内の脇にある宝物館に納められている武具の持ち主を見れば簡単に想像でき、そのそうそうたるメンバーに驚かされる。そして、源氏と平家が仲良くケースに並んであるのにも驚いた。

その中にひときわ気になる鎧を見つけた。ウエストがくびれた女性用の鎧である。他に比べひと回り小さいそれは、同じ素材を使っているのだろうが、なぜか柔らかく、優しく感じた。私たちはこの鎧の持ち主「鶴姫」に興味を持ち、彼女を調べるべく一度参拝した神社に戻り、社務所にあったマンガを読んだ。彼女の伝説は、コピーのとおりである。

このとき、直感的に思った。必ず鈴があるはずだと。私たちは新たな取材対象の発見に浮かれながら若い巫女さんに尋ねたが、「ここにはない」としか聞けない。その後数人に調査した結果、近くの道の駅に置いてあることが判明した。これだけの伝説を持ちながら、控えめな鈴。私たちはますます興味を持ち、道の駅に直行した。柑橘類など、地域の特産物が並ぶ店内をくまなく探したが、どこにも見当たらない。半ばあきらめながらレジの人に訪ねると「きっと、ありますよ」とのこと。店員も一緒になって伝説の鈴を探す。「ここにあるじゃない」。加勢にきた別の店員が鈴を取り出したのはレジの裏からだった。

箱から取り出した鈴は砥部(トベ)焼でできていた。ようやく出会えた鈴、伝説の鈴。なんとなく海へ投げるのはもったいない出来である。手にとると白くて優しい。鳴らすと深く切ない。それは彼女の鎧から受けた印象と似ていた。ぜひこの鈴とともに、穏やかな瀬戸内海に眠る悲劇に思いを馳せてほしい。(ms)

[しまなみ海道](前篇)

本州と四国を結ぶ3つのルートのうち、唯一の「徒歩や自転車でも渡れる」道。この夢の道、明治の頃から構想は既に存在していた。戦後、宇野−高松を結ぶ国鉄連絡線の海難事故により、具体的な話が動き出す。最初の頃は5つのルート案が存在していたが、最終的には現在の3つのルートに絞り込まれた。ちなみに、今でも「和歌山〜淡路島」「愛媛県佐多岬〜大分県佐賀関」間の架橋を望む声が、地元を中心に存在している。
国鉄連絡線の代替となる「児島・坂出ルート(瀬戸中央自動車道)」が最初に開通する。1988年、青函トンネルの開通と誕生年が同じであり、本土4島が鉄道で結ばれた。
その10年後の1998年に、「神戸・鳴門ルート(神戸淡路鳴門自動車道)が開通する。実はこのルート(正確には“橋”)も、その気になれば列車を走らせることができる。とにかく「明石海峡大橋」「大鳴門橋」の2つの吊橋、実に壮大で美しい。
その翌年の1999年に、最後の「尾道・今治ルート(西瀬戸自動車道、通称“しまなみ海道”)」が開通する。 …次号に続く

[大山祇神社ほか]

大山祇(オオヤマヅミ)神社は、大三島(オオミシマ)にある。しまなみ海道を「大三島IC」で降り、環状線の県道51号を少し北上する。その先で県道21号を左に入ってまっすぐ進むと、道の駅「しまなみの駅御島」に続いて、大山祇神社に着く。ただし、せっかくなら環状線沿いに車を走らせ、瀬戸の海や島、そして橋の景色を味わいながら、島をぐるっと回ったほうが楽しい。
大島にある「亀老山(キロウサン)の展望台」、行き方はちょっと注意が必要。しまなみ海道、一応2006年4月に“全通”したが、インターチェンジにはクセがある。本州方面から行く場合、「大島北IC」で降りなければならない。そして、そのまま四国方面に進む場合は、「大島南IC」からでないと戻れない。(生口島で立ち寄るときも同様)

「大山祇神社」

日本民族の総氏神として日本総鎮守と呼ばれる、伊予の国(現在の愛媛県)一ノ宮の神社。全国に1万社以上ある「三島神社」の総本社である。天照大神の兄神に当たる大山積大神が御祭神。元々は「おおいなる、やまにすむ神」という意味の山の神であるが、その立地条件から古来より戦いの神・海上の守護神としてあがめられ、現在でも瀬戸内海の海上交通を見守る神社として崇敬されている。
境内のいたることろに生い茂っている楠は、日本最古の原始林社叢(シャソウ)の楠群として、昭和26年に国の天然記念物に指定(対象樹は38本)されている。なかでも境内の中央に鎮座している大楠は、樹齢2,600年以上とも言われており、創祀の頃より大山祇神社の長い歴史を見守っている。
ちなみにこの神社では毎年6月頃に行なわれる「御田植祭」という行事のなかで、「ひとり相撲」が奉納される。これは稲の精霊と力士とが相撲を行ない、精霊が勝つとその年は豊作となるというもの。はた目には今流行(?)の「エア相撲」でしかないのだが…島国での豊作を願い、みな真剣そのものなのだ。




「大山祇神社宝物館/海事博物館」

イラスト説明の際にも述べたが、大山祇神社は各時代の権力者が多く参拝し、多くの武具が奉納されたことでも有名である。境内の隣にある宝物館には奉納された武具が収納・展示されているが、これは全国の国宝・重要文化財の指定を受けた武具のおよそ8割にあたるといわれ、それぞれに一見の価値がある。

海事博物館は、昭和天皇が海洋生物の研究のために使用されていた御採取船葉山丸を記念して建造されたもので、葉山丸をはじめ瀬戸内海を中心とした動植物の標本や、全国の鉱山から奉納された代表的な鉱石が、水軍関係、海事関係資料と共に展示されている。

ちなみに標本のなかに火星人がいて、私とライターは本気で逃げ出したが、恐る恐るもう一度確認すると、それはエイだった。


「大三島ふるさと憩の家」

今回の宿泊先。海辺の廃校を利用した宿泊施設で映画の舞台になったことはライターのご案内どおり。目の前には白浜と瀬戸内海が広がり、夕飯は海の幸が盛りだくさん。お値段も手ごろで家族にも学生などにもお勧めの宿といえるだろう。

夜中に目が覚めて海辺に出ると、穏やかな黒い海の上に明かりをつけた船が浮かんでいたり、四国側の海岸線がほのかにひかり、それがゆらゆらしていたりしているのを眺めて時を過ごした。夜の学校というと、ちょっと怖い感じがするが、穏やかな瀬戸内を感じたひと時であった。


「道の駅・よしうみいきいき館」

大島にある道の駅。目の前には「来島 (クルシマ)海峡大橋」が大島から四国へ向かって延びていくのが見える。また連絡船の港も隣接しており、私たちがお昼を食べている間も、船の往来があった。私たちの食事の内容はライターのコメントどおりだが、その他に「うに丼」や瀬戸内の海鮮を集めた「いきいき丼」が人気。土日には名物「じゃこ天」の実演販売も行なっている。

また生簀のなかには「もぶしのコロちゃん」という魚が頭をなでてもらうのを心待ちにしていた。間違っても「美味しそう」なんて言ってはいけない。彼はこの生簀のアイドルなのだ。




「亀老山(キロウサン)展望公園」

大島の南に位置する標高307.8mの展望台。四国と大島を結ぶ世界初三連吊橋「来島海峡大橋」と日本三大急潮のひとつ「来島海峡」の潮流、晴れた日には四国山脈の中に連なる西日本最高峰「石鎚山」を眺める事ができる。夕景が特に評判で、私たちが訪れたときも平日に関わらず数組の男女がその仲の良さを見せつけていた。

展望公園の手前の売店には、店主が自信たっぷりに売り物をアピールする。試食するとこれが本当に美味しい。お勧めは無花果(イチジク)のアイスクリーム。行きに景色を見ながら食べても良し、帰りにくたくたになった足を休めて食べるのも良し。ただし、行きに買って食べるなら、ゴミはゴミ箱へ…。




「亀老山展望公園・其の弐」

ここの魅力、「景観」だけではない。「施設そのもの」を味わって欲しい。
じつはここ、かつては「山のてっぺん」が削られてしまっていた。
それで造成した平地に「町の象徴となるオブジェ(=箱モノ)」をつくろうとしたのが事の発端だった。しかし、依頼を受けた建築家は「ちがう」と言った、「山を復活させるのが本来のあるべき姿ではないか」。
そうした“箱モノづくり”の限界を予見していた建築家の提案によって、このような「地域のコミュニティの場」として生まれ変わり、そして数年を掛けて“山頂の緑”を復活させたのである。
私も、去年ここに立ち寄っていた(写真はその時のもの)。当時はただ「変わった展望台だなあ」くらいにしか思ってなかった。それから1年経ち、ms氏が取材に赴き、そしてたまたま出席したシンポジウムに「その建築家」が登場し、この話を聞いた。はっとした。(tk)





「馬頭広重美術館」
   (栃木県那珂川町)

脱線もはなはだしく、きっとms氏がまた内心怒っているだろうと思うが、ついでにもうひとつ紹介しておきたいものがある。先述の建築家が手掛けた、別の建物である(この2つのヒントで建築家がわかる人は、相当の“通”ですね)。平成12年開館。

地元の素材を集めて建物をつくった。「木の屋根」というのは本来認められていない材料なのだが、難燃加工を施すことによって使用許可が下りたとのこと。 何か新しいことを手掛けるとき、そこにはいろいろな障害が出てきて、それを乗り越えられたときに、すばらしいものが出来上がる。自分自身の励みともなるような事例だったので、思わず車を走らせた。
ちなみに、この美術館をぶち抜く通路は、「静神社(武茂城趾)」の参道をイメージしているとのこと。そちらもしっかりと拝んでおいた。(tk)





最後に

私にとっても、この企画にとっても、初めてづくしとなった今回の取材。恐らくtk氏も不安だったのだろう。多くのメールが携帯へやってきて、あまりのメル友っぷりに私の受信ボックスが彼で埋め尽くされるのではと不安になった。
とはいえ、広告がしっかりと形となり、皆さんの前にお目みえできたのは彼をはじめとする社内のバックアップがあればこそであるし、心より感謝している。(まぁ、大勢の人が見るHP上で平気で後輩をなじる神経には閉口しますけどね。)
そして、誰よりもお礼を伝えたいのは、同行いただいたコピーライター、デザイン事務所マネージャーのお二人である。きっと私の心許ない案内でヤキモキしたことだろう。きっと私がtk氏より優れていたのは、カーナビ無しで知らない土地を正確に案内できたことぐらいだから。お二人のサポートのお陰で(コピーライターには画像まで提供いただきました)、ようやくここまでこぎつけられた。この場を借りて感謝の意を表したい。
ただ今回訪れた「しまなみ海道」で制作する広告は、薄々感づいている方もいるかもしれないが、実はこの『鶴姫伝説』だけでない。今回は愛媛編だったが、次回は広島編をお届けする。またもドタバタが予想されるので、お詫びの気持ちも感謝の気持ちも半分に留めておこう。それでは、次回もお楽しみに。(ms)



参考文献

  • 『週刊 日本の街道 No.88「石見銀山街道」』(講談社 2004年)

取材協力

  • 「大三島ふるさと憩の家」
    今治市大三島町宗方5208-1
    TEL:0897-83-1111
コピーライターのコメントや「その他の拾い物」でも取り上げさせてもらったが、取材のハードスケジュールのなかでホッとしたひと時を過ごせた。都会育ちの私にとっては木造の校舎が新鮮で、まっすぐ伸びた廊下は思いっきり雑巾がけをしたい気持ちにさせた。今度は取材ではなく、穏やかな海を眺めながら、のんびり過ごす時間を作りに行きたい。

企画・構成:ms・tk
文「そのほかの拾いもの」:ms(一部tk)
文「上記以外(イニシャル入り文は除く)」:ms