※ 以下の話は、取材時の情報・会話内容を元にはしておりますが、「フィクション」です。あらかじめご了承ください。

第一話 「盛岡到着」

〜ふたり、盛岡駅前の営業所に予定よりも早く集合。〜

やっしゃん(や):あ、おはよう。

きー坊(き):おはようございます。

や:えらい早いね。俺東京から「はやて1号」に飛び乗ってきたんだけどなあ。時間ぎりぎりだったから、朝っぱらからよう走ったよ。で、それより早いって、ひょっとして前泊?

き:うん、まあね。宿題にしてた賢治の文庫本が全然読めなかったから、早く出てこもることにしたんだ。

や:お、えらいね。というかストイックだねえ。

き:そんなことないよ。結局盛岡に着いたのは夜で、居酒屋で読んでただけだよ。

や:そんな騒がしいところでよく本が読めるねえ。その集中力、ある意味すごいよ。で、うまいもん食ったの?

き:それがさあ、集中力なくても十分に読めるくらい、お客さんの少ない店でさあ…

や:それはご愁傷様。集合まで少し時間があるから、ちょっと盛岡見物しようか。

き:いいね。盛岡には何度か来ているんだけど、あんまり街を見る機会がなかったから。

や:おし、じゃあどこに行こうか。

き:でもそう言われてみると、実はあまり行きたいとこないんだよねえ。

や:おまえ、その発言は岩手県民を敵に回しているぞ。

き:うそうそ。とりあえずお城に行こう!

第二話 「わんこそば」

〜ふたり、花巻にてわんこそば初体験。店を出たあと…〜

きー坊(き):いやあ、よかったよかった。長年の夢だったわんこそばを生まれて初めて食ったよ。

やっしゃん(や):だってきー坊、お前このことばっか考えていたじゃん。わんこそば食べたい食べたいって。

き:別にいいじゃない。このくらいの楽しみがあったって。

や:で、率直な感想はどうだったのよ。

き:ビミョー。なんかイメージと違ったんだよねえ。

や:どういうこと?

き:熱くて食べにくいんだよ。箸が止まっちゃうんだもん。僕冷たいものだと思ってたよ。一杯の量も多くてさあ、なんか達成感がないんだよねえ。しかも途中で何度か店の人が中座するし…

や:まあね。何杯いったんだっけ。

き:34。しかも食べ終わったお椀を持ってっちゃうからさあ、34が確かな数字かどうかも自信がない。

や:セルフカウントのマッチは萎えるよな。

き:これじゃあ、友達に話してもバカにされそうでやなんだよなあ。きっとこの思いわかってくれないよ。

や:50は超えないとねえ。

き:でもさあ、やっしゃんのほうが僕より多く食べると思ってたんだけど。意外だったよ。

や:………

き:なんかあったの?

や:実は俺、朝カツ丼食って、新幹線の中でもおにぎり食べちゃった。

き:それで31杯も食ったの!

第三話 「土産物色中」

〜ふたり、「注文の多い料理店」にてお土産を捜している。〜

きー坊(き):え、もうお土産ですか。やっしゃんの頭の中、食い物と土産のことしかないんでしょ。

やっしゃん(や):おまえ、自分で何も準備しなかったくせによくそんなこと言えるもんだね。あしたはこういうとこには寄らないんだよ。だから今のうちに買っておくの。いろいろと仕事の引継ぎをお願いした人もいるんだし。

き:そういうことか。りょーかいです。それじゃあ僕もお土産買っちゃおうっと。あの娘には何持って帰ろうっかな。

や:どっちの頭の中が遊びなんだよ。まあ、こういう時レンタカーだと助かるね。荷物積んで置けるし。

〜ふたり、しばし商品をあれこれ物色。〜

き:これかわいい。

や:ふーん。

き:あ、これもかわいい。

や:そお?

き:あー、これもかわいい。

や:ってさあ、かわいいかわいいって何だよお前。女子高生じゃないんだから。

き:だってかわいいんだもん。

や:ちっともかわいくないよ。

き:えー、それってかわいくない。

や:ふざけんなよ。そんな使い方されたら、広辞苑の編集者が困るだろうが。「かわいい」にいくつの説明つけたらいいんだよ。

き:あ、その考えかわいいね。

や:(このまま置いて帰ろう……)

〜やっしゃん、無言でその場を立ち去る〜

第四話 「君は何鉄?」

〜ふたり、昔の鉄道の足跡を捜しながら。〜

きー坊(き):結局さあ、あの鉄橋跡はどっちなんだろうね。

やっしゃん(や):旧花巻軽便鉄道だっけ。まあどっちでもいいじゃん。もう走っていないんだし。

き:連れないこと言うねえ。こういうのが取材でしょうが。

や:といって、単にきー坊が鉄道マニアなだけなんだろ。

き:そういうことじゃないよ。そもそも鉄道マニアって言い方やめてよ。結構社内に多いんだからね。敵に回すことになるよ。

や:あ、そうなんだ。で、きー坊は「ナニ鉄」なの?

き:ナニテツ?

や:え、知らないの。「乗り鉄」とか「撮り鉄」とか、鉄道ファンにもいろいろあるんだよ。

き:あ、そうなんだ。ていうか、何気にやっしゃんも詳しいんじゃない?

や:うるさい。そこは突っ込まなくてよろしい。で、君は何なの?

き:そうだなあ、しいて言えば「えき鉄」かなあ。

や:なんだよそれ。

き:そんなに列車には乗ってないけど、やたらと駅には行ったことがある。実は空港も良く知っている。
(※筆者注:こちらの写真は山形県にある、知る人ぞ知る奥羽本線の「峠駅」。)

や:ふーん、要するに“列車や飛行機に乗るお金がない”んだね。

き:ずいぶん嫌味な突っ込みだね。たしかに否めないところもあるけど、車旅が好きなんだよ。でもさ、たまの列車旅もすごく盛り上がるよね。今度やろうよ。

や:いやだよ。

き:そうやって速攻で断るのやめてよね。それなりに傷つくんだから。なんでそんなにやなの。

や:もうJR全線全列車乗っちゃったから。

き:つわもの…

第五話 「暗闇の記念撮影」

〜ふたり、夜にライトアップされた大壁画に驚愕する。〜

きー坊(き):うおおお、これはすごいね。

やっしゃん(や):昼間にここを見ていたから、なおさら感動するね。


き:へー、これって紫外線ライトでライトアップされているんだ。

や:ふーん、そうなんだ。


き:きれいだねえ。

や:あ、お前汚ねえ!

き:何だよ、いきなり失礼だね。僕だって怒るときは怒るよ。

や:お前自分の服見てみろよ。

き:あああああ。

や:埃と塵とノミとダニだらけじゃないか。

き:ちょっと待って。後半は君んちの話でしょ!このまえバルサン買ってたくせに。

や:うるさいっ。おまえ服洗ってないんだろう。

き:ちゃんと洗ってるって。やっしゃんだって一緒だよ。
(※筆者注:やっしゃんは白い服を着ているのでわからない)

や:それよりさあ、せっかくだから写真とってくれない?

き:いいよ。ちょっとカメラ貸して。

や:ありがとう。

き:はいチーズ。(パシャ)

や:バカ、フラッシュつけてどうすんだよ。意味ないじゃん。

き:君のカメラなんだからそんなの自分で設定してよね。それじゃあ、もう一回撮るよ。

や:あ!

〜ここで突然ライトアップが途絶えて真っ暗に…〜

き:やっしゃんごめん、ライトアップ10時までだった…

や:お前とはもう口利かない…

第六話 「宿にて・其の壱(しゃぶしゃぶは別腹)」

〜旅館をチェックアウトする前、ふたりラウンジにて。〜

きー坊(き):宿の料理、すごかったよね。

やっしゃん(や):うん、うまくてボリュームあった。朝食もクオリティ高かったね。

き:とくに夕食のしゃぶしゃぶは良かったね。

や:そんなこと言って、きー坊の最後の1枚は火が消えていたじゃないか。

き:意地悪なこと言うね。でもあれって、前沢牛なんでしょ。初めて食べた。

や:おいしかったね。

き:あれだけの食事がついて、あの風呂(→第七話へ)で、うちの会社の出張旅費規定内に収まるなんて、やっしゃんいい宿押えたよね。えらいよ。

や:何言ってんの?

き:へ?

や:前沢牛のしゃぶしゃぶは別料金だよ。早く金払え!

第七話 「宿にて・其の弐(名物風呂)」

きー坊(き):食事も良かったけど、それ以上に風呂がすごかったね。

やっしゃん(や):ね。期待以上だったね。

き:特にあそこのお風呂が良かったね。

や:立ち風呂?

き:そうそう。だって普通に立ったままで首まで浸かっちゃうんだもん。

や:きー坊さ、調子に乗って泳いだらめがね落とすしな。

き:それは自分のことでしょうが。

や:お前だって変な泳ぎ方してたじゃん。言葉で説明できないよ。

き:でもあのときのやっしゃん、間抜けだったなあ。

や:うるさい!

き:めがねが深さ1.2mの風呂底に落ちちゃって、目悪いから潜っても全然見えなくて泣きそうになっていたじゃん。

や:珍しく強気だな。お前。

き:たまにはね。でも感謝するんだよ。僕がいなかったらすごいことになっていたでしょ。

や:たしかに。ここで女性が入ってきたら、完全に変態だと思われただろうな。
(※筆者注:ここのお風呂は男女混浴制である)

き:でもいま思い出しても笑えるね。

や:いい加減にしろよ。お前だって素っ裸のまま風呂場を渡り歩いていたじゃないか。

き:まあいいじゃない。誰にも見られなかったし。

第八話 「宿にて・其の参(How do you sleep?)」

きー坊(き):やっしゃんのいびきがひどくて全然眠れなかったよ。おかげで今日の取材がしんどいよ。

やっしゃん(や):きー坊だって歯ぎしりすごかったぞ。

き:うそつかないでよ。熟睡してたくせに。

や:まあな。

き:だいたい、人がちょっと歯を磨いている間に速攻で寝ちゃうんだもん。思いやりがないよね。

や:何言ってんだよ。お前がくだらない話を夜遅くまでし続けるからじゃないか。俺は眠いのずっと我慢してたんだぜ。

き:いまさら「くだらない」とか言わないでよ。そういうの結構気にするんだから。

や:俺の興味無さげな反応で察知して欲しいもんだな。

き:やっしゃんって、そんな連れない奴だったっけ。前はもっと優しかったのになあ。僕の話にももっと付き合ってくれてたし。

や:女みたいなこと言ってんなよ。

き:君の見方が少し変わったよ。そもそもいびきかく奴が人より先に寝るなよ。蹴っとばしてやりたかったよ。

や:うるせえな。この程度のいびきぐらいでごちゃごちゃ言ってんじゃねえよ。だいたいな、お前はナーバスすぎるんだよ、すべてにおいてね。だからこの前の件にしたって女の子が逃げていくんだって。性格変えたほうがいいよ。

き:わかった、もういいよ。

〜ふたり、しばし無言の状態が続く。〜

第九話 「宿にて・其の四(仲直りは朝風呂で)」

〜前話からの続き〜

やっしゃん(や):ごめんごめん、言い過ぎた。

きー坊(き):

や:俺が悪かった。機嫌直してよ。

き:うん。

や:そうそう、朝風呂も良かったよね。

き:そりゃあんだけ気持ちよく寝て、早起きすればね。ようやく眠りにつけたと思ったら、ばたばた起き出すし。

や:話にとげがあるねえ。

き:だって一人で勝手に行っちゃうんだもん。

や:そのあとまた一緒に行っただろう。俺なりに気は使っているんだよ。

き:わかったよ。でも生まれて初めてだよ。30分で風呂場3軒はしごしたのは。

や:それはお前が指示したんだろうが。

き:売店のおばちゃんが「風呂毎に源泉が違う」って言うんだもん。

や:まあ、入ってみたくはなるわな。

き:でも結局あそこのお風呂が気持ちよかったね。

や:そうだね。あんな川を眺めながらの朝風呂は格別だったね。

き:でもね、川を眺めているときの君の姿ったら…

や:なんだよ。

き:ちょっと間抜けだったよ。

や:ひどいこと言うね。そんなことないだろ。

き:だってその出っ張ったお腹が…

第十話 「もうひとつの豪農」

〜ふたり、地域有数の曲り屋を見上げながら。〜

きー坊(き):おお、この曲り家はすごいね。

やっしゃん(や):うん、想像以上。見上げる感じのシチュエーションが素敵だね。

き:しかもさ、今も現役で人が住んでいるんだってね。

や:ほんとかなあ、周囲丸ごと中が見えてたじゃん。そんな中で暮らせるかよ。

き:でも洗濯物ぶら下がっていたよ。

や:なんかよくわからないなあ。

き:そういえばさ、同僚のトラさんも豪農の出自らしいよ。

や:え、そうなの。知らなかった。

き:だってこの前ね、「うち土地ばっか持っちゃってるからさ、遺産相続とか面倒なんだよね。」とか酒飲みながら豪語してたよ。

や:それはすごいな。おれこの歳まで“ばっか”という単語をそんな風に使ったことないよ。

き:あ、たしか彼の実家も東北だったよ。

や:てことはさ、奴の家もこんな感じなのかな。

き:きっとそうなんだろうね。今度こっそり行ってみよう。

や:どうする?村の人がすべて住所を知っていたら。

き:そもそもみんな同じ名字だったりしてね。

や:知らないでいた方がいいのかも。

き:うん、きっとこんなサラリーマン生活にうんざりしちゃうよ。

や:ところできー坊の実家は何なの?

き:

や:どうしたの?

き:実は母親の昔の実家もこんな感じ。

や:ええっ、じゃあ君んちもひょっとしてゴーノー?

き:いや、その家に仕えてた小作人…

や:今度とことん飲もうか。付き合うよ。

第十一話 「帰り道にて」

〜ふたり、取材を終え、遠野から盛岡まで移動中。〜

きー坊(き):やっしゃんの運転、ちょっと怖いよ。

やっしゃん(や):え、そお。そんなこと言われたの初めてだよ。

き:だってこの車のタイヤサイズ、知ってる?

や:175/70、14インチ。

き:よくわかってんじゃない。

や:でも俺の車よりよっぽど太いよ。

き:ああそうですか。って、どんな車に乗っているんですか。

や:内緒♥。

き:(キモっ…。)僕は別にいいですけど、コピーライターが同乗してたときもこんな感じだったじゃない。

や:君だって大して変わらなかったよ。

き:あれはちょっと急いでいたときでしょ。

や:それは今も同じ。君がすごいリクエストしているんじゃない。ここから盛岡まで100km近くあるのに、午後7時までに着けって。

き:だって時間がないんだもん。冷麺食って日本酒バーにも行きたいし。

や:わんこそばに前沢牛といい、君はほんと食べることしか考えてないね。

き:ちがうよ。いろいろと調べているうちに、こうしたものが見つかるだけだよ。ちゃんとやってる証拠です。

や:うまいこと言うね。

き:ほんとだって!

〜しばしドライブが続く〜

き:ところでさ、トイレ行きたいんだけど。

や:えー!さっき峠で済ませたばっかじゃん。

き:いやそうなんだけどさあ、シートベルトしていてこのスピード出されるとさあ。

や:だいたい昨日飲みすぎなんだよ。

き:すいません、反省してます。でもやっしゃんと同じ量飲んだんだけどなあ。

や:俺は全然問題ないよ。自己管理がなっとらん。

き:はいはい。だからトイレに寄って。

や:いやだ。そんなにちょくちょく止まりたくない。

き:なんでそう嫌がらせするかなあ。君のこのスピード、内部告発するぞ。

や:いいよ。そしたら俺はあの話を社内にぶちまけるからな。

き:それはやめてくれ。わかったよ。我慢します。

〜GS跡地のトイレがありそうなショップを通り過ぎる。〜

き:あっ、今あったのに。なんで停まってくれないかな。

や:誰も停まるなんて言ってないじゃん。

き:もう限界だよお。

や:その泣き顔いいね。なんだったら飛び降りればいいじゃん。

き:君ってそんな奴だったんだね。今頃気づいたよ。

や:そうだよ。知らなかったの。

き:もういい。君とはもうしゃべらない。

や:どうぞご自由に。絶対停まんないからね。もらせ。

き:ああもうっ。

や:よし、じゃあ「何でも俺の言うこと聞きます」っていうなら考えてやろうじゃないの。

き:やっしゃん、君はひょっとして…


最終話 「最終列車に飛び乗れ!」

〜ふたり、盛岡駅から離れた市街中心部にある日本酒バーにて。〜

きー坊(き):あれ、まだ注文するの。

やっしゃん(や):うん。純米吟醸「夢灯り」とさつま揚げ。

き:ええ!もう8時10分になるよ。もうそろそろここを出ないと。

や:新幹線の時間はいつなの?

き:8時40分。

や:余裕じゃん。25分で大丈夫だよ。

き:行きのタクシーの時間見てないからそういうこと言うんだよ。

や:見たって。君は心配性すぎるんだよ。あ、これうまいね。

き:早く食べてよ。間に合わなくて困るのはむしろ君じゃないの?

や:何とかなるって。俺そういう力持ってるから。うん、この酒と合うねえ。

き:そういう力って、最近そうでもないじゃない。

や:うるさい。君よりましだ。だいたいね、そういう切迫性高いのがよくないんだよ。そんなに急いで地酒を胃に入れ込んでどうすんのよ。もっと味わわないと。だからこの前だって…

き:また言う。わかったよ。君の言うとおりだから早く食べてよ。

や:わかってないじゃん。そんなんだから女に逃げられるんだって。反省しろよ。

き:もういい。僕先に出るからね。勝手にしなよ。

や:わかったわかった。俺ももう出ますよ。

〜時計は8時25分を回った。さてふたりは無事列車に間に合ったかどうか、店の人間は知る由もない。〜

 

※くどいようですが、登場人物・内容共に、あくまでフィクションです。

 

企画・構成:tk

作:tk&ms

Copyright:Nippon Rent-A-Car Service, Inc. 2006